このページでは、埼玉県で30年以上、不動産事件を扱ってきた法律事務所の弁護士が、不動産賃貸管理に従事している大家(オーナー)や管理会社に向けて、ビル管理で悩む、テナントとのありがちなトラブルへの対処について解説し、有益な情報を提供しております。

はじめに

このページでは、埼玉県で30年以上、不動産事件を扱ってきた法律事務所の弁護士が、不動産賃貸管理に従事している大家(オーナー)や管理会社に向けて、ビル管理で悩む、テナントとのありがちなトラブルへの対処について解説し、有益な情報を提供しております。

トラブルの中には、大きく分けて、二つの構図があります。

①テナントvsテナント

②大家さんvsテナント

トラブルにぶつかったとき、このような構図を理解しておかなければ、適切な対応ができません。そこで、今回は、このような分類に従って、よくあるトラブルごとに解説を進めたいと思います。

よくあるトラブル

①テナントvsテナント

騒音トラブル・悪臭トラブル

「隣の部屋からボリュームの高い音が聞こえてきて、うるさい!」
「上の階からバタバタと子どもの足音が聞こえて眠れない」
このようなトラブルは、居住用テナントからよく聞くクレームです。

「下の階の飲食店が匂いやゴミを適切に管理しておらず、悪臭がする」
「隣のテナント(スナック)がカラオケをやっていて迷惑である」
居住用テナント、商業用テナントのいずれからも聞くクレームです。

このようなトラブルがあることを訴えられた場合、オーナーとしては、テナント同士のトラブルであることを理解した上で、冷静に対処すべきです。何もしなければ、テナント離れを誘発することになるでしょう。

方法としては、まずは迷惑を訴えるテナントの話をよく聞き、クレームの本質を見抜きましょう。中には過剰、過敏なクレームもあり、そのようなクレームを鵜呑みにして他の入居者に警告等をすると、トラブルがエスカレートすることもあります。

次に、迷惑を解決するための方策を考えた上、訴えられているテナントに話をします。対話はあくまで協力をしてもらうということになりますが、相手次第では、複数回の相談、警告に至ることもあります。

迷惑が度を過ぎていると思われるケースや周辺の多くのテナントからもクレームが出ているケースでは、根気強く対応しなければなりません。極端な場合には、契約更新をしないことや契約を解約することも視野に入れる必要もあるでしょう。

ただし、契約書に「迷惑行為をしないこと」などと定めているからといって、契約の解除が簡単に認められるわけではありません。大家とテナントとの関係では、信頼関係を破壊されたといえる程度に重大な違反行為が認められなければ、安易に契約の解除を断行すべきではないと考えます。

駐車場トラブル

「駐車場内で交通事故が起きた」
「駐車中に隣の車からドアパンチを受けた」
駐車場付き物件のテナントから、このようなトラブル事例の報告を受けることがあります。

当事者同士の問題なので関係ないと言いたくなるところですが、あくまで大家さんの管理する物件内で起きた出来事です。可能性はとても低いですが、危険を放置したなどとして責任を問う人がいないとも限りません。

このような報告を受けた場合にも、まずは、警察に連絡するよう指示することが一つです。物損事故についても、警察が現場を調査し、必要であれば防犯カメラの映像なども確認した上で、事故を証明する機能があります。その上で、保険等を利用して修理をするか、当事者間で話し合いをするかなど、対処する必要があります。

オーナーとしては、安易に個人情報を伝えることはできませんが、合意のもとに情報提供することは可能ですし、弁護士会照会などの公的な照会に応じることも考えられます。

何よりオーナーとしては同様のトラブルが発生しないよう、注意喚起の看板を掲示する、トラブルの未然防止という意味でテナント同士の駐車場を離れた場所にする、防犯カメラを設置する、などの措置を講じた方がよいケースもあります。

②大家さんvsテナント

用法順守義務に関するトラブル

例えば、居住用テナントを貸しているのに、テナントがビジネスを行っているというケースがあります。

マッサージ等のサービス業、飲食などの飲食業、中にはデリバリーヘルスなどの待機場として利用されていることもあるようです。酷いケースでは、特殊詐欺グループに利用されていたということもあります。

このようなケースでは、テナントには用法順守義務違反が認められることがあります。つまり、「居住用」という用法を限定して貸し出しているのに、「事業用」という用法で利用されているため、用法順守義務に違反しているといえるのです。

とはいえ、違反の程度が問題になることもありますし、直ちに解除できるかどうか微妙なケースがあるのも事実です。とはいえ、これを放置すると危険です。ビルの質が下がり、入居者離れに繋がるおそれもあります。まずは、事実関係を客観的に把握するために調査をしたうえで、入居者と対話をしていくことが求められるでしょう。

いわゆる設備トラブル

少し古い物件になってくると、台風による雨漏り、酷いケースでは浸水のトラブルがあることもあります。近年は、ひょう害、ゲリラ豪雨、大型台風、竜巻、落雷など、想定していない事態が生じることもあるようです。

この場合の問題は、初動が重要です。
速やかに対処しなければ、責任の所在はどうあれ、入居者の被害が拡大してしまうという危険があります。
雨漏り等が発生してから、管理会社(BM部署(ビルディングマネジメント)がない場合、時間がかかってしまいます)と一から協議するというのでは、時間がかかりすぎてしまいます。

とはいえ、そのような稀に発生する事態に万全の体制を有するオーナーが少ないのも事実です。そこで、問われるのは管理会社の力量でしょう。BM部署のあるような管理会社を選択しておくことでリスクを減らすことに繋がります。

法的な賠償問題に発展した場合、法律の専門家に相談しながら進めていくべきです。費用はかかりますが、必要経費と割り切ってください。

民法改正について

令和2年4月1日から施行されました民法では、賃料減額の規定が新設されました。

新民法611条

1 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

この規定により、雨漏りなどにより、賃借物の一部が使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃料が当然に減額されるという法律効果が発生することになります。

そのため、賃料にも直接かかわる問題ですから、スピーディに対処する必要があることを頭に入れておいてください。

その他、契約終了時のトラブル

以上のほか、当然、契約を終了するときにトラブルが発生する可能性があります。この点は、ビル管理というハード面というより、法的なソフト面での話になります。紛争を防止するためには、契約時の説明、契約書の内容が特に重要となってきます。

よくあるのは、原状回復に関するトラブルです。原状回復の内容や範囲をきちんと契約に定めておく必要があります。いわゆるスケルトン戻しなのか、どの程度の状態に戻すのか。ビルの状態により様々ですが、この点を曖昧にせず、両者の理解が契約の際に齟齬のないようにきちんと明示しておくことがトラブルの予防策となります。

もう一つは、敷金や保証金の返還に関するトラブルです。敷金や保証金は、テナントが入居する際にオーナーに預けておく金員であり、損害賠償や賃料不払いなどの際に相殺されるため、担保としての性質があります。
敷金の返還義務は、物件の明渡後に発生しますが、その計算方法(原状回復、クリーニングなどのための費用償還)についてトラブルとなるケースがあります。この点についても、よく問題となるため、国土交通省がガイドラインを設けており、不動産業者にとってはよく知っていると思います。

原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf

やはり、契約時にきちんと説明をして理解を得ているかどうがか重要となることが分かります。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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