裁判所に破産手続の申立てをして破産手続開始決定が出されると、生活にどのような影響が出るのか心配になると思います。特に、裁判所からの免責許可決定後に、借金の返済を免れることができたものの、その後生活にどのような影響が出るのか、紹介します。

破産手続開始後

破産手続開始後、破産管財人が就かないケース(同時廃止)もありますが、説明の便宜上、裁判所によって破産管財人が選任されるケースを前提とします。

財産の処分

破産手続が開始されると、債務者(破産者)が保有していた財産が換価処分され、債権者への配当の原資とされます。

自由財産

破産手続が開始されても、必ずしも全財産を失うわけではありません。
99万円相当部分までは手元に残すことができるよう申し立てることができます。
この99万円という金額は、月額33万円の収入の3か月分程度を残せば生活できるだろうとの考えのもと設定された金額と考えられています。

不動産

住宅ローンが完済されていた場合には、破産管財人によって売却処分がなされるのが通常です。

他方住宅ローン残債が残っている場合は、通常ローン契約を締結した金融機関やその保証会社の抵当権が設定されていることが通常です。そのため、不動産は競売の手続による売却が試みられるます。
ただし、競売によるとその金額は一般市場で売却するよりも廉価になることもあります。そこで、破産管財人により任意売却されることもあります。

いずれにしても、不動産については処分されてしまうという前提でいることが必要です。
なお、賃貸物件に住んでいる場合、住居を追われるということには繋がりません。

賃貸物件の所有者は大家さんであり、債務者(破産者)の所有物ではないため、当然です。

また、関連して、住居の賃貸借契約が解除されてしまうと勘違いされる方がいらっしゃいます。
家賃をきちんと支払続けていれば、従前通り住み続けることができます。あくまで、保有財産を処分するに過ぎないわけですから、賃貸借契約には影響がありません(後述の信販系会社が関係する場合には注意が必要です)。

自動車

まず、割賦販売(自動車ローン)で購入している場合、通常金融機関等による所有権留保が付されているため、自動車は引き揚げられてしまいます。
これは破産手続開始によるものというよりも、もはやローンを支払えない(偏頗弁済という不公平な弁済をできない)ことにより、契約に基づいて担保権が実行されるものです。

他方、自動車ローンがない場合、基本的には破産管財人によって、自動車は換価処分の対象として売却されます。
もっとも、新車として登録されてから、普通自動車が6年程度、軽自動車が4年程度経過している場合で、評価額によっては、破産管財人は当該自動車を放棄し、そのまま債務者(破産者)は自動車を持ち続けることができる場合があります。

もっとも、車種によっては、査定を取れば大きな金額となる場合があり、耐用年数をそのまま無条件に当てにするわけにもいきません。

家族の財産

破産手続が開始されると、債務者の所有していた財産を換価処分して、債権者に対して債権額に応じて公平に分配されます。
この換価処分の対象となる財産は、あくまで債務者名義の財産のみです。
家族自身が所有している財産が処分されてしまうということはありません。

新得財産

破産手続開始決定後に取得した財産は新得財産として配当の原資とされません。
そのため、働いて得た給与等による預貯金が破産管財人によって持って行かれることにはなりません。

職業制限

破産手続中、一定の職業に就くことができません。
例えば、警備員や不動産会社における宅地建物取引士、保険外交員などが挙げられます。
これらの職業は、一般に他人の財産を取り扱うという職務の性質があり、破産者に職務を行わせるわけにはいかないのでしょう。
なお、免責許可が確定した後であれば、この職業制限はなくなります。

転居・海外旅行の制限

破産手続中は、裁判所の許可がなければ、転居・海外旅行に行くことはできません。

免責許可決定後

上述のとおり、免責許可が決定されて確定すれば、もはや職業制限や、転居海外旅行の制限は及ばなくなります。
また、免責許可により、それまで負っていた債務から解放されることになります。
もっとも、滞納税金や、不法行為により生じた損害賠償義務の一部については免責されることがないことに注意が必要です。

新たな借入やクレジットカードの作成の制限

信用情報に登録されるため、新たな借入を行ったり、クレジットカードを新たに作ったりすることは、審査が通らず困難になります。
もっともこれは、破産免責によって生じる影響ではなく、弁護士が介入して、破産等の手続に向けた準備をしたことによるものです。

不動産賃貸

新たに不動産の賃貸借契約を締結しようとする際、借りられないという事態が生じ得ます。
近年では、多くの賃貸物件で、家賃保証会社との契約が入居の条件となっています。
家賃保証会社が信販系会社であることも見受けられます。

そのため、債務者が自己破産の手続をすると信用情報に登録され、保証会社の審査に通らず、結果として借りられないということがあります。

ただし、このような事情も、破産免責によって生じる影響ではなく、弁護士が介入して、破産等の手続に向けた準備をしたことによるものです。

さいごに

本稿では、自己破産をした後の生活への影響を中心にご紹介してきました。
意外に生活への影響が少ないと思われたのではないでしょうか。
破産手続は、そもそも破産者の経済的な再出発を目指すための制度なのですから、あえて生活が立ちゆかなくなるようにすることはないのです。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 平栗 丈嗣
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