本稿では、借地関係を整理するための4つの方法(借地人が地主から底地を買い取る方法、地主が借地人から借地権を買い取る方法、地主と借地人が一緒に第三者に売却する方法、底地と借地権とを交換する方法)を、メリット・デメリットとともに紹介します。
借地関係を整理するための4つの方法
建物所有目的の土地賃貸借契約は原則として30年間以上の長期に渡る契約であり、その後も10年ないし20年(あるいはそれ以上の合意で定める期間)の更新があるなど、長い期間での存続が予定されています。
しかしながら、そのように長い期間継続するうちに、契約当初は想定もしていなかったような事情の変更により、あるいは長期間契約関係に縛られる煩わしさやトラブルから、「土地を返還して欲しい」、「いっそ底地を譲ってもらいたい」などと考えることも往々にしてあるでしょう。
そのような時に、借地関係を整理するための方法には、一般的に次のような方法があります。
①借地人が地主から底地を買い取る方法
②地主が借地人から借地権を買い取る方法
③地主と借地人が一緒に第三者に売却する方法
④底地と借地権とを交換する方法
以下、順に見ていきます。
①借地人が地主から底地を買い取る方法
最もポピュラーな方法として、借地人が地主から底地を買い取る方法があります。
地主側からは、「相続が発生し、多額の相続税を納めなければならなくなった。納税資金に充てるために、借地人に底地を買い取ってもらおう」というケースが多いようです。
借地人側からは、「地代の増額や更新料のことで色々言われるのであれば、煩わしいので、いっそのこと底地自体を譲ってもらおう」と考えるケースなどがあります。
この方法によるメリット
借地は、地主側からすると一度貸したら事実上返ってこない土地であるうえに、契約が継続する限り、借地人との間でいつトラブルが発生するか分からないリスクを抱えています。
底地を借地人に買い取ってもらえば、地主はまとまった現金が手に入るうえに、こうしたリスクを手放すことができます。
一方の借地人も、土地を完全に自分のものにできるのですから、以降は地代や更新料を支払わなくてよくなりますし、契約上の利用制限に縛られることなく、自由にその土地を利用・処分することができます。
この方法によるデメリット
借地人が地主から底地を買い取る方法による場合、何よりも難しいのは価格の調整です。
一般的に、地主が買い取りを希望する場合は低めに、借地人が買い取りを希望する場合は高めになる傾向にあると言われますが、実際問題として、(現金にしろ、融資を受けるにせよ)借地人にそれだけの金額が用意できる資力があるかにかかっています。
結局、買い取りを希望する側の事情の切迫度や借地人の経済状況など諸般の事情を勘案しながら、両者の間で落としどころとなる金額を探っていくことになるでしょう。
②地主が借地人から借地権を買い取る方法
①と同じくらいポピュラーな方法として、①とは反対に、地主が借地人から借地権を買い取る方法もあります。
「相続が発生したが、誰も借地上の建物に住む予定がないので、借地権を現金化して相続人間で分配したい」といったケースや、借地人が契約途中でどうしても転居しなければならなくなったというケースで、借地人側から申し出ることが多いようです。
この方法によるメリット
地主からすれば、一度貸したら事実上返ってこない土地であったはずの借地が返ってくることになりますし、その後は借地権の負担のない土地として、高値で売却することも可能になると言えます。
一方の借地人は、借地権を買い取ってもらうことで、まとまった現金収入を手にすることができます。
この方法によるデメリット
借地人が地主から底地を買い取る方法と同じく、この方法でも、借地権の価格の調整が最も難しいところです。
買い取りを切実に希望しているのが地主側なのか借地人側なのかによって、借地権の価格の高低も変わってくることは、底地買い取りの場合と同様です。
そのため、ここでも、買い取りを希望する側の事情の切迫度や地主の経済状況など諸般の事情を勘案しながら、両者の間で落としどころとなる金額を探っていくことになります。
③地主と借地人が一緒に第三者に売却する方法
3つ目の方法として、地主と借地人がお互いに協力して、底地と借地権とを第三者に売却する方法があります。
地主と借地人、それぞれの意向が合致した時に初めて可能となる方法です。
この方法によるメリット
地主と借地人が一緒に底地と借地権を第三者に売却する方法は、地主が底地のみを第三者に売却する場合や、借地人が借地権のみを第三者に売却する場合と比べて、各段に流通性が上がり、高値で売却することが可能です。
この「高値で売ることができる」点が、地主・借地人の双方にとって大きなメリットです。
底地のみを第三者に売却する場合や、借地権のみを第三者に売却する場合は、需要が少なく、専門の買い取り業者に比較的廉価で売るしかないケースもありますが、底地と借地権の両方を一緒に売却する場合は、売り先の選択肢も広がりますし、金額などの諸条件もぐっと良くなります。
この方法によるデメリット
この方法による場合は、当然ながら、地主・借地人の双方が、売却のタイミングや金額、売却に関する諸条件で合意できていなければなりません。
また、地主と借地人との間で、売却にかかる費用の分担や売却代金の分配について協議する必要もあります。
例えば、借地権割合6の土地(底地4:借地権6)を一緒に売却した場合に、売却代金の取り分も地主4:借地人6で合意できるとは限りません。
地主と借地人との力関係や、一緒に売却するに至った経緯、あるいは、「借地人が単独で借地権のみを売却した場合には、地主に10%程度の承諾料を払わなければならなかったのだから、その分を借地人の取り分から差し引くべきだ」といった理屈で、上記の割合が変動することもあるでしょう。
④底地と借地権とを交換する方法
最後は、底地と借地権とを交換する方法です。
借地人の持つ借地権と、地主の持つ底地の一部を交換したうえで、一つの土地の所有権を分割します。
最終的には、地主が所有する土地と借地人が所有する土地の2つが出来上がり、土地の貸し借りの関係は解消される、というわけです。
この方法の変形として、
■借地人が持っている借地権と、地主が持っている他の土地(底地以外の土地)とを等価交換する方法
■借地上に業者が新たにマンションなどを建てる場合に、地主と借地人がそれぞれ自分の権利の持分に応じて、完成したマンションのスペース(部屋数)をもらう方法
もあります。
この方法によるメリット
「交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること」や「交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること」などの所定の条件を満たした場合は、等価交換の特例により、地主・借地人ともに所得税(譲渡所得)が課税されません。
この方法によるデメリット
底地と借地権を交換する場合、ある程度の広さがある土地であること、交換・分割後の地形や道路付けなどに問題が生じないことが必要です。
分割の結果、片方の土地しか道路に出られなくなる、片方の土地は北向きでほとんど日が当たらなくなってしまう、といった問題が生じないようにしたいところです。
借地関係の整理に困った時は是非弁護士にご相談を
ここまで、借地関係を整理するための4つの方法を見てきましたが、結局、どの方法が一番優れているのでしょうか。
答えは、「ケースバイケース」です。
借地関係の整理には、地主・借地人双方の置かれたそれぞれの生活環境、経済状況などが複雑に絡み合ってくるからで、あるケースでうまくいった方法が他のケースでも有効であるとは限りません。
地主が借地人に底地を買ってもらいたいと思っても、借地人に経済的余裕が全くない場合には買い取りは不可能です。
逆に、借地人が地主に借地権を買い取ってもらいたいと希望しても、地主はこのまま定期的な地代収入があればよいと考えており、動かないかもしれません。
さらに、長期に渡る契約関係ゆえに、地主・借地人間に先代からの遺恨や感情の絡むトラブルが根を張っているケースもあります。
このようなケースでは、当事者間での話し合いはそもそも難しいかもしれません。
そこで、借地関係の整理に困った時は、是非、不動産に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
不動産に詳しい弁護士であれば、それまでの経験に基づき、事案にあった交渉の仕方や解決の方法をアドバイスできます。
当事者同士では感情的になってしまって話し合いにならないケースでも、法律の専門家が間に入ることによって、冷静な話し合いを促し、妥当な解決策を見いだせることと思います。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
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