マンション管理組合において、総会の開催や管理規約の制定、理事長の設置は法律上、任意とされています。しかし、実際には多くのマンションで通常総会や臨時総会を開き、理事会を設けていると思われます。今回は、総会や理事会が区分所有者にとってどのようなものなのかということや、具体的にそこでどのようなことを決められるのかについて解説していきます。

マンション総会ではどのようなことをするのか?理事会ではどのようなことをするのか?

マンション管理組合の総会とは何か

管理組合は、区分所有法の建物並びにその敷地及び附属施設の管理を目的とした団体です。特定の人が全てを任されているというわけではないため、区分所有者間の利害を調整し、団体としての意思決定をし、決定事項を執行するということが必要になってきます。

上記の管理組合の役目として、管理組合における最高意思決定機関となるのが区分所有者の集会、つまり「総会」です。総会はその重要性から、招集・開催・決議については様々な規制があります。実際には、管理会社のサポートにより、理事会や総会の運営もその段取りなどがある程度それぞれの開催日の前に組まれていることも多いでしょうが、最終的な意思決定や、それに基づく業務執行には総会や理事会が必要ということになります。

マンション総会の種類

総会には、総組合員(区分所有者)で組織する最高意思決定機関であり、通常総会と臨時総会の2種類があります。

通常総会

通常総会は、毎年1回新会計年度開始後2か月以内に招集しなければならないというのが法律上の規定です。
管理組合の理事長(管理組合法人の場合は、理事)は、総会において毎年1回組合の事務について報告する義務が法律上定められており、この報告は「総会」で行われなければならないとされています。

臨時総会

これに対して、通常総会以外に、必要に応じて適宜行う総会のことを臨時総会といいます。
一般的には、理事長が理事会の決議を経て招集するというケースが多いと思いますが、区分保有者も一定の要件を満たせば招集することができます。
たとえば、急遽管理組合全体として問題となる事案について訴訟提起をせねばならないなどの事情が生じ、通常総会を開催するのは当分先だというような場合は、この臨時総会を開き、訴訟提起のための承認決議や理事長を管理者として訴訟遂行を委任するなどの決議を得ることがあります。

マンション総会で行う決議事項と成立要件

総会の決議要件には普通決議と特別決議の2種類があり、対象となる決議事項はそれぞれ法律に定められています。

普通決議

区分所有法や管理規約に特別の定めがない事項については、区分所有者及び議決権の各過半数で決する、という「普通決議」がなされます。
なお、多くのマンション管理組合でも参考にされている「標準管理規約」では、「議決権総数の過半数を有する組合員」の出席する総会で、「出席組合員」の議決権の過半数で決する、としているため、実質的に少なくとも4分の1を超える賛成の議決権総数があれば、決議できるようになっています。
普通決議の例としては、サービス提供を受ける管理会社と管理委託契約を結ぶ場合の承認決議などがあるでしょう。

特別決議

これに対して、区分所有者全員の利害に関係するとか、特定の区分所有者の財産権に特別な影響を与えるなどの事項については、普通決議よりも決議要件を厳しくしており、これを「特別決議」と呼んでいます。

マンションの建替えや、団地内建物建替え承認・一括建替え等を除き、組合員(区分所有者)及び議決権の各4分の3の賛成を確保しなければなりません。ただし、後記特別事項の①については、「組合員の定数」部分に限り管理規約により過半数まで減ずることができます。
なお、ここでいう「組合員」の頭数ですが、数え方としては数人が1つの専有部分を共有する場合、その「共有者数人」を「一人」と計算し、逆に「一人」の区分所有者が「複数」の専有部分を所有していたとしても、「一人」と計算する、というのが裁判例です。

法律上、特別決議事項とされているのは以下のものです。
① 建物の共用部分の変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く。)
② 区分所有者の共有に属する敷地、附属施設の変更
③ 規約の設定、変更、廃止
④ 管理組合法人の設立、解散
⑤ 共同利益背反行為者に対する制裁措置等(区分所有法58条から60条)
⑥ 建物の価格の2分の1を超える滅失の場合の復旧
⑦ 建物の建替え
⑧ 団地内の建物に関する規約設定の特例等

理事会とは何か

理事会の役目

管理組合は、区分所有者全員で組織されたものですが、最高意思決定機関である「総会」は通常年に1回しか開催されず、そこでマンション管理に係る全ての事項を決めることは現実的ではありません。そこで、日常的な業務を行うために、総会の意思決定の下に「理事長・副理事長・理事・監事」といった役員を設け、総会で組合員から選任し、理事会を構成するということが多く見られます。

理事会の構成委員

一般的な役員の役割としては、以下のとおりです。
理事長は管理組合を代表し、管理規約・使用細則または総会もしくは理事会の決議により理事長の職務と定められた事項を遂行します。
副理事長は理事長を補佐し、理事長が事故によりその職務を行えないときにはその職務を代行します。
理事(ここでは理事長及び副理事長を除く者ら)は理事会に出席し、管理規約で定められた理事会の職務について検討したり決議に参加したりすることを中心に行いますが、別途管理規約で定めて会計担当や渉外担当といった特定の業務を行うこともあります。
監事は、管理組合の業務の執行や会計状況を監査し、その結果を総会で報告することをその職務とし、理事会に参加して意見を述べることができます。

理事会の決議事項

理事会での決議事項や行う業務は主に以下のとおりです。
① 収支決算案、事業報告案、収支予算案及び事業計画案の決議
② 規約の変更及び使用細則の制定または変更に関する案の決議
③ 長期修繕計画の作成および変更の決議
④ 専有部分の修繕に対する承認または不承認
⑤ その他総会提出議案の決議
⑥ 管理規約上に定める勧告または指示など
⑦ その他総会で定めた事項
以上のとおり、理事会は業務執行を担当する機関ではあるものの、総会で決議をする収支決算案などの管理組合の基本的な運営方針を検討し策定するという機関でもあるのです。

そのため、理事会を構成する理事ら、特に理事長の果たすべき責任は非常に大きいといえます。
特に、多くの管理規約では、管理費・修繕積立金(管理費等)を滞納している区分所有者に対する訴訟提起などについて、総会の普通決議事項から、理事会の決議事項としているものも多く、その場合は早急に未納管理費等の解消をするための手立てとして、理事会が速やかに手続をとるということも期待されるところです。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 相川 一ゑ
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