離婚後子どもと一緒に生活することを「子連れ離婚」と称しますが、子連れ離婚をする場合に、決めるべき事項は多々あります。
本ページは、「子連れ離婚をする場合に決めるべきことってなにがあるの?」、「子連れ離婚をする上で注意すべきことはなに?」などのお悩みを持たれている方向けに専門家が解説するページです。
離婚前にやるべきこと
以下では、離婚前にやるべきことを項目ごとにご説明いたします。
1 共有財産に関する資料を集める
離婚をする際に決めるべき事項の1つに、「財産分与」があります。
財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で協力して形成・維持した財産を夫婦の貢献度に応じて分与することを言います。
通常、夫婦の共同生活で形成した財産は、プラスもマイナスも含めて通算して、残りを分与(通常は半分)にする方法をとられます。
財産分与の対象になるのは、婚姻中に形成した財産(「共有財産」といいます。)であり、以下の財産が共有財産に当たります。
・預貯金
・不動産
・生命保険の解約返戻金
・車
・住宅ローンや教育ローンなど、夫婦が生活していくうえで負った負債
・退職金
など
他方で、以下の財産は分与の対象にはなりません(このような財産を「特有財産」と言います。)
・婚姻前に貯めていた現金
・婚姻前に購入した財産
・相続財産
・ギャンブル等、個人的な借り入れをした場合の負債
など
したがって、離婚をする前に、まずは共有財産に関する資料を集めることが大事です。
パートナーが財産を渡したくないとの理由で財産隠しをしてくる可能性もありますので、適正な財産分与を受けるためにも事前の備えをすることをオススメします。
2 慰謝料の額を検討する
パートナーに不貞・身体的暴力・精神的暴力などの離婚原因がある場合、受けた精神的苦痛に応じてパートナーに慰謝料請求をすることができます(このことを「離婚慰謝料」といいます)。
不貞発覚により離婚に至った場合
パートナーの不貞が原因で離婚に至った場合には、主に、以下のような要素を下に慰謝料の額が決定されます。
・婚姻期間(同居期間・別居期間)
・不貞期間と性行為の回数
・夫婦間の未成熟子の有無
・パートナーと不貞相手との間の子供の有無
等
パートナーの不貞行為によって離婚に至った場合の慰謝料の相場は100万~300万程度といわれておりますが、事案によって額が異なりますので一参考程度にお読みください。
DV(身体的暴力や精神的暴力)を受けたことにより離婚に至った場合
主に、以下の要素を下に慰謝料の額が決定されます。
・DVの態様
・被害の程度
・DVを受けた期間
慰謝料相場は50万~300万円程度と言われておりますが、事案によって額が異なりますので一参考程度にお読みください。
3 親権
離婚をした場合、法律上親権は両親の一方だけしか持つことができません(民法第819条第1項)。
したがって、パートナーが親権獲得を希望している場合には、どちらが親権をとるか話し合う必要があります。
裁判所が親権を判断する場合には、以下の要素が考慮されます。
【父母の事情】
・監護に対する意欲と能力
・健康状態
・精神的・経済的家庭環境(資産・収入・職業・住居・生活態度)
・居住・教育環境
・実家の資産
・家族・友人等の援助の可能性
・これまでの監護状況
【子供側の事情】
・年齢、性別
・兄弟姉妹関係
・心身の発育状況
・これまでの環境への適応状況
・環境の変化への適応性
・子ども自身の意向
・父母及び親族との結びつきの程度
4 養育費の額を計算
養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことを指します。
一般的には、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用を意味し、衣食住に必要な経費、教育費、医療費などを含みます。
離婚後に子どもの親権を持つ方が、他方に養育費を請求することができます。
養育費の金額は、実務上、両親の年収・子供の年齢や人数に応じて決まり、「改定標準算定方式(算定表)」(令和元年に司法研修所が公表)により決められることが多いです。
5 面会交流の方法を考える
子どもの成長のためには、別居する親とも交流すべきという考えから、一般的に、親権を負っていない者に、子どもとの面会交流が認められております。
面会交流に関するルールとしては、以下の事項が挙げられます。
・面会交流の頻度・時間(例:月1回、2時間)
・面会の場所
・宿泊の可否
・電話、手紙、LINEのやり取りの可否
・子どもの受け渡し場所とその方法
・緊急連絡方法
等
もっとも、面会交流については、子どもの利益を最優先に考慮しなければならないと定められているため(民法第766条1項)、以下のような場合には拒否することが可能です。
・パートナーが子どもに暴力を振るう
・パートナーが子どもに違法行為をさせる
・パートナーが子どもを連れ去る
など
6 離婚協議書及び公正証書を作成する
離婚協議書とは、夫婦間で離婚条件のすり合わせをした際に決めた内容を書面に記す「契約書」のことをいいます。
書面を作らずに口約束にとどめた場合、相手が守らない可能性がありますので書面を作成することをオススメします。
また、パートナーが決めた約束を守らない場合、強制執行などの手段を取れるように公正証書にしておくこと方法もあります(公証役場で作成可能)。
7 離婚届を作成・提出する
離婚協議書や公正証書が完成したら、離婚届を作成・提出しましょう。
ちなみに提出先は、「届出人の本籍地」又は「住民票の住所地」の役所になります。
必要事項の記載漏れがあると受理されませんので、提出前に記載漏れがないか確認しておくことをオススメします。
離婚後にやるべきこと
以下では、離婚後にやるべきことを項目ごとにご説明いたします。
1 住民票を移動させる
離婚後に別の住まいに移る場合には、住民票を移動させる必要があります。
同じ市区町村内で引っ越す場合には「転居届」を提出すれば足りますが、別の市区町村へ引っ越す場合には、元の住所では「転出届」を、引っ越し先では「転入届」を提出する必要があります。
2 年金分割の手続をする
年金分割とは、夫婦が離婚した場合に、2人の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金(共済年金を含む)を分割し、2人で分け合う制度のことをいいます。
最寄りの年金事務所に行き、情報通知書・標準報酬改定請求書・年金手帳・戸籍謄本などを提出し年金分割の手続をする必要がありますので、事前に年金事務所に必要書類について問い合わせをすることをオススメします。
なお、年金分割手続は離婚後2年以内にする必要がありますのでご注意ください。
3 財産分与で得た財産の名義変更をする
不動産や自動車の名義変更をする際には、パートナーの協力が必要ですので離婚協議時に調整しておくことをオススメします。
4 児童手当の受取人の変更をする
児童手当は、子どもと同居して養育する者に対して支給されますので、離婚後は必ず受給者変更手続きを行うことをオススメします。
離婚後、住民票がパートナーと別になっている場合には、新たに居住する自治体の役所に新規の形で児童手当の申請を行うことになります。
5 健康保険に加入する
パートナーの勤務先の健康保険に被扶養者として加入していた場合、離婚後新たに健康保険に加入する必要があります。
加入しないと無保険になり、医療費が全額自己負担になってしまいますのでご注意ください。
すぐに仕事をしない場合には、国民健康保険に加入することになりますので、最寄りの市区町村役場に行って手続をする必要があります。
まとめ
子連れ離婚でやるべきことを離婚前・離婚後に分けてご説明しましたが、やるべきことは多々あります。
離婚後の生活に対する不安を少しでも解消するためにも、事前にやるべきことをリスト化しておくことをオススメします。
もし、疑問や不安があれば専門家である弁護士にご相談ください。