景品表示法上規制される不当表示の中に、おとり広告があります。
これは、時折、違反事例が報道される等、我々にとって身近なものであるといえます。
このコラムでは、おとり広告について具体例を交えながら詳しく解説します。
1 おとり広告とは?
景品表示法上、規制されている不当表示のひとつとして、「おとり広告」があります。
これは、簡単に言うと、販売するつもりがない・販売することができない商品をあたかも販売できるかのように表示することをいいます。
これは、表示した商品に関心を持つ消費者を誘引した上で実際に販売する他の商品を売ろうとするものであり、消費者の選択を誤らせるおそれのあるものとして規制されているのです。
2 おとり広告の類型
景品表示法上規制されるおとり広告には以下の類型があります。
(1)表示されている商品について取引を行うための準備がなされていないにもかかわらず、取引ができる旨の表示
これは、表示された商品が実際には販売されていないものであり、おとり広告の典型です。
具体的には、以下のような場合があたります。
・販売されている旨表示されている商品が実際には販売されていない(販売するつもりがない)場合
・店頭販売されている商品について、当該商品が店頭に陳列されていない場合
・ある商品について、他の商品よりも引渡しに長期間を要する場合
(2)表示されている商品の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容を明瞭に記載せず行われる表示
これは、表示された商品について、実際に取引・販売は可能であるものの、供給量に著しい限定がある場合の表示をいいます。
この表示を見た消費者は、購入できる可能性が低いにもかかわらず、その商品を購入できるだろうと誤認するおそれがあるため、このような表示は規制されています。
「商品の供給量が著しく限定されている」とは、商品の販売数量が予想購買数量の半数にも満たない場合をいいます。
「限定の内容が明瞭に記載」されているとは、商品名等が特定された上で、実際の販売数量が明瞭に記載されていることをいいます。単に販売数量が限定されているという記載だけでは、この要件を満たしているとはいえません。
(3)表示されている商品の供給期間、供給の相手方、顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容を明瞭に記載せず行われる表示
これは、表示されている商品の取引・販売が可能ではあるものの、供給期間や供給の相手方等が限定されている場合の表示をいいます。
このような表示を見た消費者は、その商品が何らの制限なく購入できると誤認するおそれがあるためです。
供給期間等が限定されていることについては、実際の販売日、販売期間、販売の相手方、顧客一人当たりの販売数量が広告に明瞭に記載されていなければならず、単にこれらが限定されているという記載だけでは、限定の内容が明瞭に記載されているとはいえません。
(4)表示されている商品について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合に行われる表示
取引可能ではあるものの、実際には、他の商品に顧客を誘引するために表示したにすぎず、商品を取引する意思がない場合をいいます。
具体的には、以下のような場合です。
・表示した商品の難点や欠点を殊更に強調する場合
・表示した商品の取引を事実上拒否する場合
・表示した商品の購入を希望する顧客に対し他の商品の購入を推奨し、顧客が推奨された商品について購入の意思がないことを表明したにもかかわらず、重ねて推奨する場合
3 おとり広告にあたるとされた事例
(1)ケース1
①事実関係
集合住宅へ投函したチラシにおいて、その集合住宅においてはあたかも、「●●光」という光回線を利用できるかのように表示し、当該回線の設置工事を行っている畝を表示した。。
しかし、実際は、当該集合住宅においては、「●●光」という光回線は利用できず、当該表示をした会社は、当該回線の設置を行うことはできなかった。
②結末
この表示はおとり広告にあたるとして、当該会社に対して措置命令が出された。
(2)ケース2
①事実関係
とある飲食店チェーンにおいて、期間限定のフェアとして、数種類の商品を提供する旨の広告を行った。
しかし、実施は、それぞれの商品の原材料が不足するおそれがある等の理由から、それぞれの商品について、全く提供できない期間があった。
②結末
表示された商品の供給量等が限定されているにもかかわらず、それを明示せずに広告を行ったとして、おとり広告にあたるとされ、措置命令が出された。
4 おわりに
広告は、消費者を誘引するための有効な手段ではありますが、やり方を間違えると、おとり広告として、景品表示法上の規制・行政処分等を受けることになってしまいます。
おとり広告に当たるかどうかについては、法律に関する専門的な知識や判断が必要になりますので、お困りの場合は、お早めに弁護士に相談されることをおすすめします。