最近受けた著作権に関する相談の中から、キャラクターの著作権、フォントの著作権、著作物の「私的利用」、AI画像の著作権について述べてみました。

質問① キャラクターの著作権について

   キャラクターに著作権はないということを聞きましたが、これは「キャラクターという概念には著作権はない」という意味だそうです。

   これを前提とした場合、概念をそのまま表現した部分は、イラストであっても著作権は発生せず、それ以外の部分(服装、装飾品等)にのみ発生する、というような適用になるのでしょうか? 

回答①

著作権というのは、漫画、絵画、映画などに具体的に表現されたものついて成立するのであり、具体的に表現されないアイデアについて著作権は成立しませんし、法的に保護されることはありません。

例えば、ドラえもんを例にとると、漫画家が、「いろいろな夢のような物をポケットから取り出すことができる、未来から来た猫型ロボット」を主人公にした漫画を描こうというアイデアを生み出したとして、それをAさんに話したとします。

Aさんは、これは面白いと思って、このアイデアをもとに、「いろいろな夢のような物をポケットから取り出すことができる、未来から来た猫型ロボット」のイラストを描いたとしても、それは漫画家の著作権を侵害していませんし、漫画家の何らかの権利を侵害したことにもなりません。上記のように、アイデアは保護されないからです。

しかし、「漫画家がいろいろな夢のような物をポケットから取り出すことができる、未来から来た猫型ロボット」というアイデアをもとに、具体的にこの猫型ロボットをイラストとして書いた場合、このイラストは、アイデアが具体的に表現されたものですから、イラストは著作物として、著作権保護の対象になり、このイラストと同じものを描いて使用したり、このイラストと本質的な部分が似ているものを書いて使用すれば、漫画家の著作権を侵害したことになります。

キャラクターは著作権によって保護されないという場合のキャラクターというのは、上記のドラえもんの例でいれば、「いろいろな夢のような物をポケットから取り出すことができる、未来から来た猫型ロボット」というアイデアの部分を言っており、アイデアをもとに具体的に表現されたイラストを言っているのではありません。

キャラクターに著作権はないというのはそういう意味で、アイデア(概念)をそのまま表現したイラストは、具体的に表現されたものですから、もちろん著作権が成立します。

他人のイラストと同じイラストを使用する、あるいは他人のイラストと本質的部分が似ているイラストを使用すれば著作権法に違反しますから、使用できるのは、他人のイラストを参照しつつも、他人のイラストと本質的部分が違っており、イラストの複製、翻案とは言えないといえるようなイラストだけということになります。つまり、他人のイラストと似ているようなイラストは使用しない方がよいということになります。

質問② フォントの著作権について

原則としてレイアウトや配色に著作権は無いが、レイアウトや配色にも著作権が発生する場合があると記載された記事を見ました。

 どのようなものであれば著作権で保護されるのでしょうか?

 

また、アニメのタイトル画像と類似した画面を資料に使用しても、問題は発生しないのでしょうか?

文字にイラスト、図形が組み込まれた表記の場合は、通常のイラストの著作権と同様に考えても良いものでしょうか?

回答②

著作権は、思想や感情を創作的に表現したものでなければならないので、

① 思想や感情を、

② 創作的に、

表現することが必要です。

ありふれたレイアウト、配色には、思想も感情もありませんし、創作的とも言えませんから、通常は、レイアウト、配色には著作権は成立しないと言われています。

したがって、ありふれたものではない、思想や感情があり、創作性があるレイアウト、配色には著作権が成立するということに理屈ではなるのですが、どのようなレイアウト、配色に、思想、感情が表現されていて、創作性があるのかという具体的な判断は難しいですよね。

ちなみに、デザイン画について、特徴的なものとはいえず、思想、感情も表現されていないとして著作物とは認めなかったものに、大阪地方裁判所平成24年1月12日判決があります。

アニメなどのタイトル画像は、文字、配色、レイアウトで構成されているとしても、世間で有名になっていますし、思想、感情があり、創作性があるとされる可能性が高いように思います。

文字にイラスト、図形が組み込まれたものも、思想、感情を表現したもので、創作性があれば、著作権が成立し、有名になれば、著作権が認められる可能性が高くなってくると思います。

質問③ 著作物の「私的使用」

 会社内の発表資料に使用した場合は、一律「私的使用」に該当しないのでしょうか。

 資料を見ることができる人の対象に、業務委託の方や派遣社員が含まれる場合と、そうでない場合で、私的使用に該当するか否かの結論が変わりますか。

 どのような条件下であれば、「私的使用」として著作物の使用が認められるのでしょうか。

回答③

著作権法30条によれば、私的使用とは、個人的に、または家庭内その他これに準じる限られた範囲内において使用することとされています。

企業内部で使用する目的で複製した場合は、頒布目的がなくても私的使用にはあたらないと考えられています。それでは、企業内でごく少数複製される場合についてはどうかというと、これを私的使用とする学説もありますが、そうでない学説もあり、微妙なところということのようです。

ただ、このようなごく少数複製する場合は、発見も困難ですし、著作権を侵害されたといっても損害額は少なく、実際に問題になることはほとんどないと思います。

業務委託をした方、派遣社員に複製したものを渡した場合、ごく少数と言えるかどうかが問題になり、(上記のとおり実際に問題になることはほとんどないと思いますが)著作権を侵害している可能性が高くなると思います。

質問④ AI画像の著作権について

AIにより出力された画像、文章を使用するにあたって、著作権法上、注意する事項があれば教えてください。

回答

AIと著作権については議論の途上といってよいと思いますが、現時点では、AIによって作られた文章や画像は、思想、感情を創作的に表現したものではないために、著作権ではないと考えられています。

したがって、仮に貴社がAIで画像や文章を作ったとしても、簡単なキーワードを入れ、ボタン一つで作ったようなものは著作物ではないため、他社がこれを利用したとしても著作権侵害を主張できず、他方、貴社の従業員が、努力して画像や文章を作った場合は、AIを道具として使用したとしても、そこには著作権が成立するとされます。

他社がAIを使って画像や文章を作り、貴社がこれを他社に無断で使った場合でも、上記の前者であれば、他社の著作権を侵害したことにはならず、後者であれば、他社の著作権を侵害したことになるようです。

ただ、使う時点では他社の状況は分かりませんから、AIを使った物であっても、他社が作ったものであれば、複製などはしない方が無難ということかと思います。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表・弁護士 森田 茂夫

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