昨今の健康ブームで健康食品やサプリメントの需要は急増しております。
それに伴って、これらの販売などを行う企業はますます増加しております。
ですが、健康食品やサプリメントは薬機法の規制対象となり、その取り扱いには細心の注意が必要になります。特にこういった商品の広告には強い規制があります。
もしも薬機法に違反した場合、懲役や罰金なども規定されておりますので、ここでは、薬機法の広告規制に違反しないよう、広告規制の概要をご案内いたします。
薬機法の目的
そもそもなぜ薬機法はなぜ広告について規制をしているのでしょうか。
薬機法の目的は、薬機法第1条に記載されておりますが、医薬品等の品質や有効性、安全性を確保して、保健衛生上の危害の発生と拡大を防止し、国民の生命や身体を守ることです。
医薬品などは、人の身体に大きな影響を与えます。品質が悪いものが流通するなどすると、健康被害をもたらす大きな問題となります。
そこで、薬機法では医薬品等の品質不良と、それを原因とする健康被害の予防を図っています。
製品について知ってもらうための活動として、広告活動がありますが、広告は販売促進を目的とするので、製品についてのポジティブな面ばかり強調され、ネガティブな面はあまり表に出てこないことが多いです。
しかし、医薬品等の効果、効能は必ずしも目に見えるものではなく、明らかになりにくいので、使用する側としては、情報提供者の発信する情報を信じて、その医薬品を使用するかどうか決めてしまいます。
もし、情報提供者の情報が不正確であると、実際には使わなくてよい医薬品を使ってしまい健康被害が出るなどのことがあり得ます。
そのために、広告規制がされているのです。
広告規制以外の薬機法での規制については、以下の記事をご覧ください。
薬機法の広告規制
広告とは
薬機法にいう広告とはどういったものを指すのでしょうか。
薬機法では、以下の3つの要件を満たす場合に、広告に該当するとされております。
①顧客を誘因(顧客の購入意識を昂進させる)意図が明確であること
②特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
③一般人が認知できる状態であること
ここで、それぞれの要件について詳しく見ていきます。
① 顧客を誘因(顧客の購入意識を昂進させる)意図が明確であること
文字どおり、広告を目にした人に対して、商品を販売したいという意図が明確にわかることを示します。
これは、客観的に判断がなされますので、「そのような意図はなかった」と反論をしたとしても、誘因する意図があると判断される可能性もあり得ます。
・商品販売のリンクがあるサイト
・チラシ
・PR投稿
・雑誌
・展示会での資料
・メールマガジン
などがこれにあたると考えられます。
一方、単に効能などをまとめた研究論文などは、販売の目的がないので、これには該当しません。
② 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
これは、消費者がどの製品についての情報を提供されているかを明確に理解できる状態をいいます。
製品名が具体的に記載されているパンフレットやウェブサイトの記載は、この要件に当てはまります。
③ 一般人が認知できる状態であること
一般人とは、自社以外の全ての人を指し、広告が公衆に対して公開され、誰でもがその内容を認識できる状態を意味します。
例えば、インターネット上に公開されたウェブページや雑誌、チラシなどは、誰でもがアクセスをし、閲覧することができますから、この要件に該当します。
広告にあたるかの判断
薬機法の規制する広告にあたるかどうかは、企業の認識としてどのようなものがあったかという観点ではなく、「消費者がこれらの要件を満たすと認識できるかどうか」が重視されて判断されます。
そのため、形式上では広告には当たらないように見えても、実質的に広告の要件を満たしていれば規制の対象となるので注意が必要です。
虚偽または誇大広告の禁止(法66条)
薬機法は、虚偽の広告や誇大広告について規制をしており、おそらくこれがもっとも企業において注意しなくてはならない規制であると思われます。
薬機法では、事実に反する虚偽の表現や誇張した表現により消費者に謝った認識をさせるおそれのある広告を規制しています。
たとえば、健康食品について広告をするときに、「サプリメントAを飲むと関節の痛みが治ります!」という表現をしたいと考えたとします。
しかし、こうした表現は広告規制に違反します。
健康食品は、あくまで一般的な商品より健康に良いとされている食品であり、薬とは異なります。
「治る」「予防する」という表現は、基本的には薬でしか用いることはできませんので、注意が必要です。
対して、「サプリメントAでは、現在人に不足しがちなビタミン○を効果的に補給できます!実感の早さが好評です!」などと広告することは薬機法に反しないと考えられます。
不足しがちな栄養素の補給ができるということに虚偽や誇大な部分はありませんし、ここでは、「何の実感の早さが好評か」を明らかにしておりません。
健康食品の広告で、ここを明示すると、誇大広告に当たる可能性があるので注意が必要です。
このように、基本的に健康食品では「病名」や「体の部位」を示すと規制に反する可能性があるので注意が必要です。
特定疾病用の医薬品・再生医療等製品に関する一般向け広告の禁止(法67条)
法67条では、使用にあたって高度な専門性が要求される一定の疾病に用いられる医薬品については、広告を制限しております。
特定の疾病とは、がん、肉腫及び白血病などです。
これらについては、医薬品の医薬関係者以外の一般人を対象とする広告の制限をしております。
未承認医薬品等に関する広告(法68条)
法68条では、医薬品、医療機器及び再生医療等製品として承認や認証を受けていないものの広告を禁止しています。これは、厚生労働省から承認を受けていない医薬品や医療機器を広告することを禁じる規制です。
例えば、海外で販売されているものの、日本国内で未承認の薬を「驚愕の効果!」などと広告することは禁止されています。
広告や販売をする際、企業は必ず承認を受けているものであるかどうかの確認を徹底する必要があります。
その他の規制
その他、薬機法以外にも医薬品などについて規制する規定があります。
たとえば、「医薬品等適正広告基準」では、他社製品を誹謗する広告が禁止されておりますし、医薬関係者等の推薦表現の禁止などの規制もあります。
このように、医薬品や健康食品を取り巻く広告規制には、細心の注意を払う必要があります。
まとめ
ここまで、薬機法に違反しないために、薬機法の規制内容の中でもとりわけ重要となる、広告規制について解説しました。
薬機法は、法律を読んでも難解な用語が多く、一方で、これは規制に反しないだろうと思って誇大広告などをしてしまい、知らぬ間に違法なことを行ってしまう可能性がある難しい分野です。
薬機法に違反しないかなど、きちんとした判断をするには専門的な知識が必要となります。
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