退職後に元従業員は会社に対して未払い残業代を請求できる~弁護士が解説~

退職をした後であっても、元従業員は会社に対して未払い残業代を請求できます。退職後に残業代を請求することについて、時効によって消滅することがあるので注意すべきこと、及び、どのような証拠があれば請求できるのかも含めて、解説いたします。

残業代は退職後も請求できるが、時効に注意

残業代は退職後も請求できるが、時効に注意

退職をした後であっても、残業代を請求できますが、時効によって消滅しますので、注意が必要です。2020年4月1日以降に支払期限が到来する残業代については、通常は支払い期限から3年で時効となりますので、注意が必要です。

どの様な証拠があれば請求できるか

どの様な証拠があれば請求できるか

タイムカード

代表的な証拠です。機械による記録ですので、労働時間を正確に記録した証拠です。たまに、他の従業員が複数の従業員のタイムカードをまとめて押していたと使用者側が主張することがありますが、各従業員のタイムカードの打刻時間が酷似している場合に初めて認められる主張ですので、基本的にタイムカードの打刻時間は正確な労働時間を示していると言えます。

タコグラフ

代表的な証拠です。自動車が止まったり、動いている時間を記録しています。これもまた機械による記録ですので、労働時間を正確に記録した証拠です。

動いている時間帯は、基本的に労働をしているものとみなされます。早く事務所を出発しすぎている場合に、その時間帯は会社が指示した労働時間ではないという主張がなされることもありますが、会社の方で遅く出発しても間に合っている日があること等を証拠によって示して反論する必要があります。

止まっている時間帯は、休憩時間なのか労働時間なのかが争われる時間帯ですが、会社の決めた休憩時間以外の時間帯に労働者が休憩をしていたと会社側が主張するためには、ある程度の根拠が必要になります。

日報

出社時間、その後の活動時間、退社時間を、労働者が使用者側に申告する記録です。使用者側も確認しているはずの記録ですので、これもまた労働時間を正確に示す証拠と言えます。会社側が、日報に記録されている時間が労働時間でないと主張するためには、証拠を提出して反論する必要があります。

LINEやメールによる家族への退社時間の報告

日常的に家族に対して退社時間をメールやLINEによって報告している場合は、退社時間を示す証拠になることがあります。

日記・手帳

自分自身のために、日記や手帳で労働時間を日常的に記録している場合は、これらもまた労働時間の証拠になることがあります。

使用者側の反論に備えた証拠

使用者側の反論に備えた証拠

使用者側は、事務所に備え付けてある就業規則を提出して、従業員の知らない不利な労働条件を主張することがあります。例えば、○○手当は残業代の性質があるので、○○手当を払ったことによって既に残業代は支払っている等の主張です。

このような主張を防ぐためには、あらかじめ、就業規則が会社に備え付けられていなかったことを示す証拠を確保しておく必要があります。

例えば、会社の内部資料を保管するキャビネットの様子を写真に撮影しておき、会社に対して就業規則はどこに保管していたのかを尋ね、キャビネットであると回答した場合には、写真を提出し、就業規則はキャビネットでは保管されていなかったことを証明します。

また、最近では、就業規則は、社内の共有ネットワークに保存していることもありますので、共有ネットワーク上に就業規則が保管されていないような場合は、そのこともパソコンの画面を撮影するなりして証拠化しておくのが良いと思います。

他にも、使用者側が、労働者が事務所にいながら仕事をしていなかった等の主張をすることもありますが、最近の会社は、社内の共有ネットワークの各従業員の操作記録を記録していたりしますので、こういった証拠がないか等を会社に質問して開示をさせることを検討します。

操作記録が開示された結果、従業員が特定の取引先のデータを閲覧していて、その取引先に関する仕事をしていることが証明されるようなこともありますので、社内記録の開示請求は検討すべきかと考えます。

在職中に証拠は集めておいた方が良いが、集められなかったときも方法はある。

在職中に証拠は集めておいた方が良いが、集められなかったときも方法はある。

以上に紹介した証拠は、会社の方で、退職後に処分してしまう可能性がありますので、在職中に収集しておいた方が良いです。もっとも、SUICA・PASMOの履歴や、メールやLINEで仕事に関する連絡を行った時間を証拠として、労働時間を立証するというような方法もあり得ます。

まとめ

まとめ

以上、退職後に残業代を請求することについて、時効によって消滅することがあるので注意すべきこと、及び、どのような証拠があれば請求できるのかも含めて、解説をいたしました。退職後の残業代の請求を検討する際には以上のことを参考にして頂きながら、ご不明な点があれば弁護士にご相談をしていただいた上で、進めて頂くのがよろしいかと思います。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 村本 拓哉

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