こんにちは。弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士 渡邉千晃です。

近年、独占禁止法違反の疑いにより、公正取引委員会が企業などに対して、立ち入り検査をしたといったニュースを見かけることが増えてきました。

もっとも、ニュースでは、公正取引委員会が行う立入検査について、その具体的な内容まで知ることができません。

では、公正取引委員会は、どのようにして調査を開始し、どのような調査を行うのでしょうか。

公正取引委員会が行う調査の流れとしては、立ち入り検査等から始まり、供述聴取や報告命令等がなされた後、どのような処分が適当かの判断が下されるということになります。

そこで、この記事では、公正取引委員会がどのようにして調査を開始するのかを簡単に説明したのち、調査の方法などをわかりやすく解説していきます。

公取委の調査の端緒とは

公正取引委員会(以下、「公取委」といいます。)は、調査の端緒(独占禁止法違反の疑い)を掴むと、違反した事業者に排除措置命令や課徴金納付命令を出すため、行政調査を開始することとなっています。

独禁法45条では、事件調査の端緒として、誰でも、独禁法に違反する事実があると思料するときは、公取委にその事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができるとされています(1項)。

そして、上記報告があったとき、公取委は事件について必要な調査をしなければならないとされています(2項)。

また、上記報告が公取委規則で定めるところにより、書面で具体的な事実を適示してされた場合、当該事件について、適切な措置をとり、又は措置をとらないこととしたときは、公取委は速やかにその旨を報告者に通知しなければならないとされています(3項)。

もっとも、違反事実の報告により、必ず調査が開始されるというわけではありません。

すなわち、公取委の審査リソースには限りがあり、事案の重要度や優先度は考慮されるのはもちろん、審査の要否や方法は、公取委の専門的な裁量により判断されるため、報告者(申告者)に対して、公取委が具体的な調査義務を負ったり、報告者が具体的な措置請求権を有したりするものではないと解されています。

なお、事件の端緒としては他にも、課徴金減免制度の利用や、公取委独自の情報収集なども挙げられます。

立入検査とは

公取委は、事件について必要な調査をするため、事件関係者の営業所やその他必要な場所に立ち入り、検査することができるとされています。

この立入検査を正当な理由なく拒否した場合には、1年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

また、立入検査と並行して、関係者各位からの供述聴取が行われたり、事件調査に必要な情報についての報告命令が下されることもあります。

提出命令とは

立入検査を開始した公取委の審査官は、被疑事実に関する資料などがないかを探します。

調べられる対象となる場所は、「審査官が事件調査に必要であると合理的に判断した」場所になります。

したがって、審査官が事件調査に必要であると判断した場合には、会社だけに限らず、個人宅が立入検査の対象となる可能性もあります。

事件に関する資料などが見つかった場合には、審査官が提出命令を行い、その資料などを留置することとなります。

一度留置された物品は、事件調査の必要性が無くなるまで還付されないこととされています。

立入検査のマスコミ報道について

立ち入り検査が行われた場合、マスコミが報道したりすることがあります。

公取委の方では当初から立ち入りの事実を公表しないとされていますが、マスコミが立ち入りを把握し、公取委へ「どこどこへ立ち入りの情報があるが事実か」という照会がなされれば、公取委は回答をしているようです。

このような経緯により、立ち入り検査が行われた場合には、マスコミが報道することもあるということになります。

まとめ

公正取引委員会がどのように調査を開始し、どのような調査をするのかを解説していきました。

当然、独占禁止法に違反する行為を行ってはならず、公取委から立入検査を受けた場合には、事実上、これを拒否することはできません。

独占禁止法は専門的な知識が必要な分野ですので、お困りの際は、独占禁止法に強い弁護士に相談することをお勧めいたします。

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