お仕事中に起きてしまった怪我などは、労災(労働災害)として保険金が給付されたり、場合によっては会社に対して損害賠償請求をすることができます。

特に、肩から手指にかけてを怪我してしまうことは多いかと思われますが、具体的にどういった怪我であれば、労災になるのか疑問も多いかと思います。

ここでは、肩、腕が動かない、怪我をしたという場合に労災の請求ができるかについて解説いたします。

労災認定までの流れ

労災認定までの流れ

そもそも労災とは、業務が原因で生じた従業員の怪我や疾病、傷害、死亡などのことを指します。

そして労災から補償を受けるには、申請の手続きが必要ですが、労災の申請をして認定されるまでの流れは以下のとおりです。

①従業員が労災の発生を会社へ報告する
→会社は労働基準監督署長に対して「労働者死傷病報告」を提出する

②労災の請求書を労働基準監督署長に提出する

③労働基準監督署長にて事故の調査が行われる
→労災認定がされれば、給付の決定がされる
→労災認定がされなければ、不支給の決定がされる

まずは、従業員の方から会社へ事故の報告をし、会社から労働基準監督署に報告をすることで、労災の申請はスタートします。

ですが、必ずしもすべての会社が労災申請に協力的であるとは限りません。

ある会社では、労災申請に協力しない、労災であることを認めないといったこともあります。

会社が労災申請に協力的でなく、いわゆる「労災隠し」を行う場合もあります。

この場合、直ちに弁護士にご相談いただくことがよいです。

労災認定後の流れ

労災認定後の流れ

労災認定が下りたら、労災保険で治療を続けていただくこととなります。

治療を続けていただき、ある時点で「症状固定」という時期が訪れるかと思います。

これは、これ以上治療を行っても医学的に回復が見込めないという時点のことをいいます。

もちろん、完治することが一番ですが、労災などの大きな事故の場合ですと、「症状固定」の時点でもまだ痛みが残っていたり、生活に支障がある場合があります。

症状固定時に残存している症状は、後遺障害と呼ばれます。

残存している後遺障害は、その重さに応じて等級の認定が行われます。

等級認定がされれば、それに基づいた保険金が支給されたり、会社に対して後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。

どの部位の怪我であったとしても、ここまでの流れは基本的には変わりません。

怪我の部位ごとで変わってくるのは、後遺障害の認定と認定後のことです。

肩や腕の労災の怪我

肩や腕の労災の怪我

そこで、肩や腕の後遺障害が残った場合について特に解説をおこないます。

肩から腕にかけての後遺障害の認定は以下のとおりです。

なお、後遺障害の等級は1級から14級まであり、1級が一番重く、14級が一番軽いものとなっております。1級1号や1級2号など「〇号」という言葉が用いられますが、これはその等級に該当する事由を列挙したものであり、1号にあたるか、2号にあたるかで保険金などでの際はありません。

欠損傷害

欠損傷害

欠損傷害とは、切断などの事由で身体の一部を失うことをいいます。

・1級3号          両上肢をひじ関節以上で失ったもの
・2級3号          両上肢を手関節以上で失ったもの
・4級4号          1上肢をひじ関節以上で失ったもの
・5級4号          1上肢を手関節以上で失ったもの

 「上肢をひじ関節以上で失ったもの」

「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは、①肩関節において肩甲骨と上腕骨を離脱した②肩関節とひじ関節との間において上肢を切断した③ひじ関節において、上腕骨と橈骨および尺骨とを離断したことをいいます。

「上肢を手関節以上で失ったもの」

「上肢を手関節以上で失ったもの」とは、①ひじ関節と手関節の間において上肢を切断した②手関節において、橈骨および尺骨と手根骨とを離断したことをいいます。

機能障害

機能障害

機能障害とは、動きが制限されるようになったことをいいます。

・1級4号          両上肢の用を全廃したもの
・5級6号          1上肢の用の全廃したもの
・6級6号          1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
・8級6号          1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
・10級10号    1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
・12級6号       1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

「上肢の用を廃したもの」

「上肢の用を廃したもの」とは、3大関節(肩関節、ひじ関節、手関節)のすべてが強直し、かつ、手指の全部の用を廃したものをいいます。

「関節の用を廃したもの」

「関節の用を廃したもの」とは、次のどれかの状態をいいます。

・関節が強直した
関節の完全強直またはこれに近い状態(関節可動域が健側の10%程度以下に制限される場合)です。

・関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にある
「これに近い状態」とは、他動では動くものの、自動運動では関節の可動域が健側の10%程度以下となった場合をいいます。

・人工関節・人工骨頭を関節に挿入置換し、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されている

「関節の機能に著しい障害を残すもの」

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、①関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されている②人工関節・人工骨頭を関節に挿入置換し、その可動域が健側の可動域角度の1/2以上ある状態をいいます。

変型傷害

変型傷害

・7級9号          1上肢に仮関節を残し、著しい運動障害を残すもの
・8級8号          1上肢に偽関節を残すもの
・12級8号       長管骨に変形を残すもの

偽関節

ここでいう偽関節とは、骨折等による骨片間の癒合機転が止まって異常可動を示す状態をいいます。

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とする状態をいいます。

・上腕骨の骨幹部等(骨幹部または骨幹端部)に癒合不全が残っている
・橈骨および尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全が残っている

「偽関節を残すもの」

「偽関節を残すもの」とは、次のどれかに該当する状態をいいます。

・上腕骨の骨幹部等に癒合不全が残っているが、著しい運動障害は認められない状態
・橈骨および尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全が残っているが、著しい運動障害は認められない状態
・橈骨および尺骨のいずれか一方の骨幹部等に癒合不全が残っていて、時々硬性補装具を必要とする状態

「長管骨に変形を残すもの」

「長管骨に変形を残すもの」とは、次のどれかに該当する状態をいいます。

・上腕骨に、15度以上屈曲して不正癒合する変形が残っている
・橈骨および尺骨の両方に、15度以上屈曲して不正癒合する変形が残っている(いずれか一方のみの変形であっても、程度が著しければ該当します)
・上腕骨、橈骨または尺骨の骨端部に癒合不全が残っている
・橈骨または尺骨の骨幹部等に癒合不全が残っているが、硬性補装具を必要としない
・上腕骨、橈骨または尺骨の骨端部のほとんどを欠損した
・上腕骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に、または橈骨もしくは尺骨(骨端部を除く)の直径が1/2以下に減少した
・上腕骨が50度以上外旋または内旋変形癒合している

会社への損害賠償請v求

会社への損害賠償請求

このように後遺障害の等級が認定された場合、労災からの保険金受給もそうですが、会社への損害賠償請求も検討できます。

会社への損害賠償請求が認められるためには、会社に不法行為として過失が認定される必要があります。

ここがもっとも法的に問題となるところです。

会社に対してどのような義務が課せられているか、それをどのように違反したかということなどを緻密に検討する必要があります。

労災からの受給だけでは十分な補償は、必ずしも受けられません。

適切な補償を受け取るためには、会社への損害賠償請求を検討する必要があり、ここには緻密な法的検討が必要となりますため、弁護士へご相談いただくことが良いです。

まとめ

まとめ

ここまで、労災のなかでも肩や腕の怪我について解説いたしました。

後遺障害がとれるかどうかや、とれたあとどういった対応をするかで最終的に得られる利益が大きく変わってきます。

適切な補償を受けるためには、専門的な知識に基づいた動きをする必要がございます。

そのために、まずは弁護士にご相談いただけますと幸いです。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭

弁護士のプロフィールはこちら