【労災】膝が動かない、膝を曲げると痛い…その原因は労災かも。弁護士が解説します!

お仕事中に起きてしまった怪我などは、労災(労働災害)として保険金が給付されたり、場合によっては会社に対して損害賠償請求をすることができます。

特に、膝の怪我は頻発しておりますが、具体的にどういった怪我であれば、労災になるのか疑問も多いかと思います。

ここでは、膝が動かない、膝を曲げると痛い…という怪我をした場合に、労災の請求ができるかなどについて解説いたします。

膝の痛みと労災との関係

膝の痛みと労災との関係

膝が動かない、膝が痛いという場合には、以下のような原因が考えられます。

膝関節には、脛骨(けいこつ)大腿関節と膝蓋大腿関節の二つの関節があります。脛骨代替関節には半月板があります。

・半月板損傷

外傷を受けることにより、半月板が損傷し、炎症が起こり、痛みが生じます。

転んで怪我をすることもあれば、カートに衝突する、フォークリフトがぶつかる等、仕事内容が原因で発症することがあります。

・関節炎

膝関節の軟骨がすり減り、炎症が起こることで痛みが生じます。

重労働や長時間の作業、振動工具の使用などが原因で発症することがあります。

・神経の圧迫

膝の神経が圧迫されることで、痛みやしびれが生じます。

デスクワークや、膝をついての作業など、一定の姿勢を長時間続けることが原因で発症することがあります。

・靭帯損傷(内側側副靱帯損傷、前十字靭帯損傷など)

膝関節を支える靭帯が損傷することで、痛みや不安定感が生じます。

仕事中の転倒や、重い物を運ぶ際に膝を捻るなど、突発的な外力が原因で起こることがあります。

・骨折

膝周辺の骨が折れることで、強い痛みや腫れが生じます。

仕事中の転倒や、高所からの落下などが原因で起こることがあります。

労災認定までの流れ

労災認定までの流れ

そもそも労災とは、業務が原因で生じた従業員の怪我や疾病、傷害、死亡などのことを指します。

そして労災から補償を受けるには、申請の手続きが必要ですが、労災の申請をして認定されるまでの流れは以下のとおりです。

①従業員が労災の発生を会社へ報告する
→会社は労働基準監督署長に対して「労働者死傷病報告」を提出する

②労災の請求書を労働基準監督署長に提出する

③労働基準監督署長にて事故の調査が行われる
→労災認定がされれば、給付の決定がされる
→労災認定がされなければ、不支給の決定がされる

まずは、従業員の方から会社へ事故の報告をし、会社から労働基準監督署に報告をすることで、労災の申請はスタートします。

ですが、必ずしもすべての会社が労災申請に協力的であるとは限りません。

ある会社では、労災申請に協力しない、労災であることを認めないといったこともあります。

会社が労災申請に協力的でなく、いわゆる「労災隠し」を行う場合もあります。

この場合、直ちに弁護士にご相談いただくことがよいです。

労災認定後の流れ

労災認定後の流れ

労災認定が下りたら、労災保険で治療を続けていただくこととなります。

治療を続けていただき、ある時点で「症状固定」という時期が訪れるかと思います。

これは、これ以上治療を行っても医学的に回復が見込めないという時点のことをいいます。

もちろん、完治することが一番ですが、労災などの大きな事故の場合ですと、「症状固定」の時点でもまだ痛みが残っていたり、生活に支障がある場合があります。

症状固定時に残存している症状は、後遺障害と呼ばれます。

残存している後遺障害は、その重さに応じて等級の認定が行われます。

等級認定がされれば、それに基づいた保険金が支給されたり、会社に対して後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。

どの部位の怪我であったとしても、ここまでの流れは基本的には変わりません。

怪我の部位ごとで変わってくるのは、後遺障害の認定と認定後のことです。

膝の労災の怪我

膝の労災の怪我

そこで、膝の後遺障害が残った場合について特に解説をおこないます。

膝に関する後遺障害の認定は以下のとおりです。

なお、後遺障害の等級は1級から14級まであり、1級が一番重く、14級が一番軽いものとなっております。1級1号や1級2号など「〇号」という言葉が用いられますが、これはその等級に該当する事由を列挙したものであり、1号にあたるか、2号にあたるかで保険金などでの際はありません。

機能障害

機能障害とは、動きが制限されるようになったことをいいます。

・8級7号 「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」

→関節の完全強直又はこれに近い状態にあるものや、神経麻痺等により自動運動不能又はこれに近い状態にあるもの

・10級11号   「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」

→健側に比べ可動域が2分の1以下に制限されている状態

・12級7号 「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」

→健側に比べ可動域が4分の3以下に制限されている状態

※なお、ひざ下を欠損した場合、4級5号「1下肢をひざ関節以上で失ったもの」というより重い後遺障害もあります。また、機能障害についても、1級6号「両下肢の用を全廃したもの」、5級7号「1下肢の用を全廃したもの」、6級7号「1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの」など、より重い等級が認められる場合もあります。

変型傷害

・7級10号 「1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」

→偽関節とは、骨折等による骨片間の癒合機転が止まって異常可動を示す状態

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とする状態をいいます。

・大腿骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもの

・脛骨及び腓骨の両方の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもの

・脛骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもの

・8級9号 「1下肢に偽関節を残すもの」

→「偽関節を残すもの」とは、次のどれかに該当する状態をいいます。

・大腿骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの

・脛骨及び腓骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの

・脛骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの

・12級8号 「長管骨に変形を残すもの」

→「長管骨に変形を残すもの」とは、次のどれかに該当する状態をいいます。

・15度以上屈曲して不正癒合したもの

・大腿骨若しくは脛骨の骨端部に癒合不全を残すもの又は腓骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもの

・大腿骨又は脛骨の骨端部のほとんどを欠損したもの

・大腿骨又は脛骨(骨端部を除く)の直径が3分の2以下に減少したもの

・大腿骨が外旋45度以上又は内旋30度以上回旋変形癒合しているもの

会社への損害賠償請求

会社への損害賠償請求

このように後遺障害の等級が認定された場合、労災からの保険金受給もそうですが、会社への損害賠償請求も検討できます。

会社への損害賠償請求が認められるためには、会社に不法行為として過失が認定される必要があります。

ここがもっとも法的に問題となるところです。

会社に対してどのような義務が課せられているか、それをどのように違反したかということなどを緻密に検討する必要があります。

労災からの受給だけでは十分な補償は、必ずしも受けられません。

適切な補償を受け取るためには、会社への損害賠償請求を検討する必要があり、ここには緻密な法的検討が必要となりますため、弁護士へご相談いただくことが良いです。

まとめ

まとめ

ここまで、労災のなかでも膝の怪我について解説いたしました。

後遺障害がとれるかどうかや、とれたあとどういった対応をするかで最終的に得られる利益が大きく変わってきます。

適切な補償を受けるためには、専門的な知識に基づいた動きをする必要がございます。

そのために、まずは弁護士にご相談いただけますと幸いです。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志

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