こんにちは。弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士 渡邉千晃です。

本記事では、「確約手続」とは何か、そして企業にとってどのようなメリットがあるのかを解説していきます。そもそも、「確約手続」とは、独占禁止法違反の疑いがある企業が自主的に適切な是正措置を講じることで、課徴金や排除措置命令等を回避できる制度です。この「確約手続」について、令和6年7月、公正取引委員会が、弁護士ら第三者による監視を義務化する運用を始めると発表したことから注目が集まっています。そこで、本記事では、確約手続の基本概要、適用の流れ、メリット、そして企業が取るべき実務対応について詳しく解説していきます。さらに、確約手続をスムーズに進めるための弁護士活用の重要性についても紹介いたします。

確約手続とは?独占禁止法違反リスクを軽減する新たな手段

基本概念と導入背景について

公正取引委員会(以下、「公取委」といいます。)は、競争を制限する行為が疑われる事案に対し、迅速な是正を促すため、平成30年、新たな制度として「確約手続」を導入しました。「確約手続」とは、簡単にいうと、企業が自主的に是正措置を講じることによって、行政処分を回避することができる制度です。

「確約手続」の目的は、長期間に渡る審査や訴訟を避けつつ、競争環境の健全化を促進することにあります。「確約手続」は、排除措置命令等と比較して早期の是正が可能であると考えられており、また、独禁法違反が疑われる事業者が、自発的な是正計画に従って改善を図るため、問題解決までの期間をこれまでよりも短縮できると期待されています。

すなわち、公取委は、確約手続の導入により企業の迅速な対応を評価し、確約計画を認めることで市場の安定を図ろうとしているといえます。

平成30年に導入されてから令和6年6月までの間に、この確約手続を適用して事件処理をされた案件は19件あるとのことです。

「確約手続」の流れについて

「確約手続」は、公取委から違反が疑われる事業者に通知が届いた時点で開始されます。事業者は、不正を排除するため、具体的な是正効果が見込まれる「確約計画」を作成後、通知から60日以内に確約認定申請を行うことができます。

その「確約計画」が公取委において認定されれば、排除措置等には移行しないこととされます。他方で、これが認定されない場合は、再び調査などの対象となることとなります。

確約手続のメリットとは?企業が活用すべき理由

課徴金等の回避!財務リスクを抑えた対応が可能

確約手続によれば、企業は課徴金納付命令等の処分を回避できる可能性があります。これにより、多額の財務リスクを避けながら、コンプライアンスを維持できるといえます。

手続の迅速化!公取委の審査長期化を防ぎ、ビジネスの影響を最小限に

独禁法違反の有無を争う通常の審査は、手続に長期間を要することが多いですが、確約手続によれば、企業は早期に問題を解決し、ビジネスへの影響を最小限に抑えることができるといえるでしょう。

企業イメージの悪化を防ぐ!ブランド保護とステークホルダーへの影響管理

仮に行政処分を受けてしまう場合には、会社のブランドイメージが損なわれてしまうというおそれがあります。確約手続によれば、法令違反を認定される前に自主的な是正措置を示し、企業イメージやステークホルダーからの信頼を維持することができるといえます。

確約手続の適用事例と実務対応のポイント

確約手続を活用した企業の成功事例

過去には、特定の流通分野での抱き合わせ販売の問題に対し、企業が確約手続を利用し、是正措置を講じることで公取委の処分を回避した事例等があります。これにより、市場の公正性が確保されるとともに、企業の事業継続性も確保されました。

企業の法務担当者が準備すべき対応策とは?

企業の法務担当者においては、常日頃より、独占金法違反のおそれを考慮し、内部監査を強化しておくことが求められます。特に、独禁法に抵触しうる取引慣行については、事前のコンプライアンスチェックを徹底することが重要だといえます。

企業が注意すべきポイントとは?

確約計画の策定

確約手続においては、確約計画の策定が重要です。公取委から確約計画の内容が不十分であると判断されないように、慎重な計画立案が求められます。

確約内容の履行義務!監視措置とコンプライアンス強化の必要性

確約計画が認定された場合、企業は確約計画に沿った是正措置を適切に履行しなければなりません。

確約手続の運用変更について

冒頭で述べたとおり、令和6年7月3日、公取委は、今後の確約手続につき、主に以下の3点の運用を変更する旨を公表いたしました。

①確約措置の履行期間

確約手続を適用した事案における確約措置の履行期間を3年間から5年間以上とすること

②第三者の監視

確約措置の履行を確保するため、外部専門家による監視を原則とすること

③公取委による履行状況の確認の強化

上記に加え、公取委においても、特に必要がある場合は、罰則付きの調査権限を適用し、履行状況の確認などを行うこと

公取委によると、今後の案件については、上記方針に基づいて対応していくとのことです。

企業の独禁法対策を強化!顧問弁護士との連携でリスク管理を最適化

確約手続の利用を含め、独禁法対応を強化するためには、顧問弁護士との継続的な連携が重要です。定期的な法務チェックを行い、独禁法違反のリスクを最小限に抑えることで、企業の健全な事業運営を実現できるといえます。

まとめ

確約手続は、企業が迅速に独占禁止法違反の疑いを解消し、課徴金等のリスクを回避するための有効な手段です。しかし、確約手続には慎重な対応が求められます。

独占禁止法は専門的な法分野だといえますので、お悩みの際には、同法に精通した弁護士に一度ご相談されることをお勧めいたします。

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