商品・サービスの性能・効果に関する広告についての規制として、不実証広告規制というものがあります。

この規制に関しては、学術的な根拠等が厳格に求められます。

このコラムでは、事業者が特に注意すべき点を具体例を交えて解説します。

1 不実証広告規制とは?

事業者が販売する商品の性能・効果に疑問がある場合、消費者庁は事業者に対し、当該商品の性能・効果に関する合理的な根拠を提出するよう求めることがあります。

提出期限までに合理的な根拠を示す資料が提出されなければ、当該表示は不当表示とみなされます。

この仕組みを不実証広告規制といいます。

2 合理的な根拠の判断基準

合理的な根拠があるかどうかについては、次の2つの要素により判断されます。

①提出資料が客観的に実証された内容のものであること

②表示された効果・性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

以下、この2つの要素について説明します。

(1)提出資料が客観的に実証された内容のものであること

これにあたる資料としては、(ア)専門家・専門機関の見解または学術文献、(イ)試験・調査によって得られた結果、である必要があります。

(イ)については、(ⅰ)当該商品に関する学術界・産業界において一般的に認められた調査方法、(ⅱ)関連分野の専門家多数が認める調査方法、である必要があります。

これらの調査方法が存在しない場合、(ⅲ)社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法、である必要があります。

(2)表示された効果・性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

この要件は、簡単に言うと、提出資料以上の表示をしてはいけないということです。

この要件を満たしていないとされるものとしては、例えば、根拠とした学術文献が示した以上の効果があると表示しているケース、あらゆる事象について一定の効果があると表示しているものの実際は限定された特定の事象にのみ効果があるに過ぎないケース、あらゆる条件下で一定の効果があると表示しているものの実際はある特定の条件下でのみ効果があるに過ぎないケースなどがあります。

3 合理的な根拠が問題になった事例

以下では、合理的な根拠について実際に問題となったケースを見て行きます。

(1)ケース1

問題となった大人用の尿漏れ防止パンツの広告に、「最大吸収量30cc」、「最大吸収量120cc」などと表示されていましたが、実際には、この商品を実際に人が着用して使用した場合、表示された吸収量を相当程度下回る量で尿が漏れ出すことがあり、不当表示とされました。

表示の根拠を検討するために消費者庁は以下の検証を行いました。

①商品をマネキンに装着し、人口の尿を排出し、尿漏れが確認されるまでの尿の量を測定した。

この試験の結果、ほとんどの商品において広告で表示された量のおよそ9%~35%の量の尿により尿漏れが起こることが確認されました。

(2)ケース2

冷凍庫で冷凍して首に巻くことで暑さを和らげる商品について、表示されたとおりの時間効果が持続しなかったとして措置命令が出されました。

消費者庁は、実際の人体を用いた試験とヒーターを内蔵し人体の発熱と熱損失を再現するマネキンを用いた試験を行いました。

これらの試験の結果、当該商品には、表示されたような持続時間の効果がないことが確認されました。

(3)ケース3

携帯電話に貼り付けることによって電波の受信状態が大幅に改善するかのように表示していた商品について、優良誤認表示として公正取引委員会から排除命令を受けました。

事業者が公正取引委員会に提出した資料は、①当該商品を付けた場合と付けない場合の携帯電話の画面のアンテナの本数を検証した資料、②パソコンソフトで電波の受信状況を計測した資料、③ウェブサイトに書き込まれたユーザーの感想でした。

これについて、東京高裁は、いずれの資料も合理的な根拠を示すものとはいえないとして、事業者の請求を退けました。

①について、それぞれの場合に測定した時間帯が異なり、それ以外の測定条件も不明確であったため、資料としての合理性がないとされました。

②についても、複数の携帯電話の電波の受信状況を測定したというものの、資料として提出されたのは、2機種のみであり、都合の良い2機種のみのデータを提出したものとされました。

③については、事業者は、通販サイトに書き込まれた当該商品の評価・感想をプリントアウトしたものを資料として提出しました。しかし、これについては、販売数に比べて提出された評価・感想が少なすぎる、インターネット上の書き込みなので記載内容の正確性が担保されていない、提出された評価・感想が無作為に抽出されたものとはいえない等のことが指摘されました。

4 まとめ

以上見てきたように、商品・サービスの性能・効果については、合理的な根拠の存在が求められます。

そして、この根拠については、ただ単に学術的な根拠があればいいというものではなく、表示にしっかりと対応したものである必要があります。

特に、商品・サービスの効果については、一般消費者による使用と同じ条件下で検証されることや表示のとおりの効果があるかどうかを正確に検証する必要があります。

このように、不実証広告規制については、法律上厳格な要件が定められていますので、商品・サービスの性能・効果に関する表示を行う場合には、合理的な根拠の有無について特に気をつける必要があります。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 権田 健一郎

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