不貞慰謝料における「求償権放棄」とは?メリット・デメリットについて弁護士が解説

不貞慰謝料請求をする場合、「求償権放棄」について検討する場面がございます。

本ページは、「不貞慰謝料における求償権放棄とは何?」、「求償権放棄することのメリット・デメリットは?」といったお悩みの方に向けて、専門家が解説するページとなっております。

そもそも不貞(不倫)慰謝料請求とは?基礎知識について解説

そもそも不貞(不倫)慰謝料請求とは?基礎知識について解説

不貞行為とは、「配偶者ある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」と定義されております。

この「性的関係を結ぶ」とは、肉体関係を持つことを意味します。

不貞行為は、配偶者の「婚姻共同生活の平和の維持」という人格的利益を侵害する行為であり、一方配偶者は、不貞行為に及んだ他方配偶者及び不貞相手に対して慰謝料請求(民法709条、710条)をすることができます。

不貞慰謝料請求における求償権とは?

不貞慰謝料請求における求償権とは?

不貞慰謝料請求は、不貞行為に及んだ他方配偶者及び不貞相手に対して、本来認められるべき慰謝料の全額を請求することが出来ます。

不貞行為は、「共同不法行為」といって複数の人間によって行われる不法行為であり、加害者側は、「不真正連帯債務」を負っていると法律上は表現されます。

例えば、本来認められるべき不貞行為の慰謝料が300万円であった場合、不貞配偶者・不貞相手どちらかにだけ300万円請求することもできます。また、不貞配偶者に150万円、不貞相手に150万円請求するということもできます。

仮に、不貞相手が慰謝料300万円全額を支払った場合、不貞配偶者はなにも支払わなくていいのか?というと、そういうわけではありません。

この場合、不貞相手は、不貞配偶者に対して支払い済みの慰謝料の一部を請求することが出来ます。

これを、法律上、「求償権を行使する」といいます。

負担割合はどのように決めるのか?

負担割合はどのように決めるのか?

共同不法行為者(本件でいうと、不貞配偶者と不貞相手を指します。)の間の負担割合は、各自の過失割合から決まります(最判昭和41年11月18日)。

不貞慰謝料の場合であれば、主に、主導性がポイントとなります。

例えば、不貞相手が積極的に主導していたのに対して、不貞配偶者はそれほど積極的ではなかったという場合、不貞相手の負担割合は大きく判断されると考えられます。

もっとも、裁判例上、不貞慰謝料請求の場面では、不貞相手よりも、不貞配偶者の方が、負担割合が大きく判断される傾向にあります(東京地判平成28年10月20日参照)。

不貞配偶者は、不貞相手と異なり、被害者に対し、被害者以外の第三者と肉体関係を持たないという義務(貞操義務)を負っているからと考えられます。(民法732条、752条、770条1項1号参照)。

求償権を放棄するメリット・デメリットは?

求償権の放棄とは、求償権を行使する権利を放棄することです。

求償権を放棄することにより、支払った慰謝料の一部を他の共同不法行為者に請求することができなくなります。

慰謝料を受け取った側にとって、求償権を放棄することのメリットとしては、家計から求償された慰謝料を支払う必要がないという点です。

不貞相手が慰謝料を全額支払い、不貞配偶者に対して求償権を行使した場合、夫婦が離婚しなければ「家計に入った慰謝料の一部から支払うこと」になります。

求償権を有する側にとっても、慰謝料を全額支払った後に、支払っていない方に対して求償をするとなると手間も時間もかかってしまいます。

また、他方の不貞当事者が、きちんと求償した分のお金を払ってくれるとも限りません。

そのため、求償権を放棄する代わりに慰謝料を減額してもらって、争いを一気に解決した方が合理的であるといえるケースもございます。

そして、夫婦が離婚しない場合は、「浮気相手にだけ慰謝料を請求して求償権の放棄」を求める場合がございます。

求償権を放棄することは、不貞相手にとっては金銭的メリットが少ない行為ですので、求償権の放棄を求める場合は「慰謝料の減額」とセットで交渉することがございます。

不倫慰謝料の求償権放棄の手続

不倫慰謝料の求償権放棄の手続

交渉内で、請求側との間で、求償権放棄について合意をし、不貞慰謝料に関する和解合意書の取り交わしをする際、求償権放棄について明記する必要がございます。

例えば、以下のような文言とされることが多いです。

「(浮気相手)は、当該慰謝料に係る(配偶者)に対する求償権を放棄する。」

合意書には、このほかに、不貞相手が被害者に対して不貞行為について謝罪する旨の条項や、今後、不貞相手が不貞配偶者に連絡や接触をすることを禁じる条項(接触禁止条項)が定められることもあります。

まとめ

まとめ

不貞慰謝料における求償権放棄について解説いたしました。

不貞配偶者と離婚しない場合は、求償権放棄について検討する余地がございますが、離婚する場合は家計が別々となりますので、求償権放棄について検討する必要性は低くなります。

求償権について正しく理解していないうちに示談してしまった場合、不利益を被ってしまう場合がございます。

不貞が発覚し、不貞慰謝料請求をしようと考えている方は、まず弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 安田 伸一朗

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