従業員の育児のために、育児介護休業法が定められており、育児休業、育児のための短時間勤務、所定外労働の制限、子の看護等休暇の制度が認められています。また、令和7年10月から改正育児介護休業法が施行されるために、育児期の柔軟な働き方を実現するための措置の実施が義務付けられます。今回は、これらの制度について解説し、使用者が注意すべき点をまとめます。

育児休業

対象者: 原則として、1歳未満の子を養育する従業員が対象です。一定の条件を満たせば、最長で2歳まで延長可能です。​

一定の条件は、①自己または配偶者が当該子の1歳到達日に育児休業をしている場合であって、当該子の1歳以後の期間について保育所での保育の申し込みを行っているが当面実施されないとき、または、②1歳到達日以後に養育を行う予定だった配偶者が死亡、傷病、障害、婚姻解消による別居、産前産後の期間中のいずれかに該当するとき、になります。

申請手続: 従業員からの申し出が必要であり、企業はこれを拒否できません。​申し出は、原則として休業開始1か月(1歳以上1歳6か月まで、ないし1歳6か月以上2歳までの子については2週間)前までに、休業期間の開始予定日・終了予定日など所定事項を示して行います。

企業の対応: 育児休業中の従業員に対して不利益な取り扱いをしてはなりません。​

育児のための短時間勤務制度

対象者: 3歳未満の子を養育する従業員。​

制度内容: 1日の所定労働時間を6時間に、または6時間を含む複数の時間を選択肢とするとする制度を設ける必要があります。​

除外規定: 労使協定により、以下の従業員を対象外とすることが可能です。

入社1年未満の従業員

週の所定労働日数が2日以下の従業員

業務の性質上、短時間勤務が困難な従業員​

所定外労働の制限(残業免除)

対象者: 2025年4月の法改正により、小学校就学前の子を養育する従業員が対象となりました。​

制度内容: 従業員からの申し出があった場合、企業は所定労働時間を超える労働をさせてはなりません。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は例外となります。​

申請手続: 1回につき1か月以上1年以内の期間を指定して申し出ることができます。​

子の看護等休暇

対象者: 小学校第3学年修了前(9歳に達する日以後の最初の3月31日まで)の子を養育する従業員。​

取得可能日数: 子が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日まで取得可能です。​

取得事由の拡大: 従来の病気やけがの看護、予防接種・健康診断に加え、感染症による学級閉鎖、入園・卒園式への出席も対象となりました。​

時間単位での取得: 時間単位での取得が可能です。​

育児期の柔軟な働き方を実現するための措置

令和7年10月に改正された育児介護休業法が施行されることに伴い、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対し、使用者は、以下の5つの措置の中から2つ以上を選択して実施することが義務付けられます。​

始業時刻等の変更

フレックスタイム制や始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ制度(時差出勤)など。

テレワーク等(10日以上/月)

1日の所定労働時間を変更せず、月に10日以上利用可能なテレワーク制度。

保育施設の設置運営等

保育施設の設置・運営やベビーシッターの手配および費用負担など。

養育両立支援休暇の付与(10日以上/年)

就業しつつ子を育てることを容易にするための休暇。

短時間勤務制度

1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む制度。

使用者が注意すべき点

就業規則の見直し: 法改正に対応するため、就業規則や育児介護休業規程を最新の法令に合わせて改定し、所轄労働基準監督署への届出を行う必要があります。​

労使協定の確認: 除外規定を設けている場合、法改正により適用除外が認められなくなった項目がないか確認し、必要に応じて労使協定の見直しを行います。​

従業員への周知: 制度の内容や申請手続について、従業員に対して十分な説明と周知を行い、理解を促進します。​

管理職への教育: 制度の適切な運用を確保するため、管理職に対して制度内容や対応方法についての教育を実施します。​

これらの制度を適切に運用することで、従業員が仕事と育児を両立しやすい職場環境を整えることができます。​詳細な対応については、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 村本 拓哉

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