法曹三者と呼ばれる裁判官や検察官は、日中に庁舎から外に出ることはほとんどありませんが、弁護士は、裁判所や警察署などに移動する時間が多くあります。
私は、移動中、人目もあるため事件記録は開かず、自由時間を過ごします。私の場合、音楽を聞いたり、小説を読んだりしながら、脳がリラックスできるように心掛けています。例えば、ラヴェルやシューベルトのクラシックを聴きながら芥川賞・直木賞の受賞作品を読めば,電車内もカフェに早変わりです。
ところで、タイトルの「聖の青春」をご存じの方も多いと思いますが、これは、棋士村山聖の生涯を描いた大崎善生の小説のタイトルです。主人公の村山聖は、幼い頃から持病ネフローゼという難病と戦いながら、将棋に命を燃やし、羽生善治などの時の棋士たちと渡り合い、「東に天才の羽生がいれば、西に怪童の村山がいる」などと並び称されましたが、わずか29歳という若さでこの世を去った棋士です。
同小説では、村山の心情がリアルに書かれていて、例えば、村山対羽生戦で、村山は、羽生が自分よりも明らかに強いと痛感しつつ、自己も何度も大人に負かされ、その度に療養所で必死に勉強して努力で乗り越えてきたことを振り返り、挫けるわけにはいかないと立ち直ろうとする姿が描写されています。
村山は病気と向き合うことで、対外的な困難に挫けない心を会得していたのだと思います。当時の勇猛果敢に将棋を打つ村山の姿は、見る人の心を奮い立たせたことでしょう。
なお、この作品は、近く映画化されるようです。映画では、村山聖役を松山ケンイチ、羽生善治役を東出昌大が演じるようです。私の地元の映画館でも放映されるようですので、仕事帰りに、ナイトシネマを見に行くのが楽しみです。
「聖の青春」
弁護士 時田 剛志