私は、以前は美容院に通っていたのですが、直木賞受賞作・萩原浩さんの「海の見える理髪店」を読み、床屋の雰囲気を懐かしく思い、その後偶然にも入った床屋がとても良いサービスでしたので、今ではその床屋さんに通っています。
ところで、皆さまは、「美容室」と「床屋」の違いをご存知でしょうか。
多くの方が頭に思い浮かべるのは、シェービング(顔そり)があるかどうか、あるいは男性は床屋で女性は美容室というイメージではないかと思います。
意外と意識されていない方も多いのではないかと思いますが、美容師(美容院)と理容師(床屋)とは、「美容師法」と「理容師法」という、異なる法律に定められた国家資格であり、それぞれの仕事内容が法律上区別されています。つまり、美容師の仕事は、「パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」であるのに対して、理容師の仕事は、「頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えること」とされているのです。
しかし、両者は、いずれも髪を切るという点では同じ仕事ともいえます。それなのに、なぜ両者は二つに分かれ、仕事内容が区別されているのか気になりましたので、簡単に歴史的背景を調べてみました。
一説によると、理容師の起源は、安土桃山時代(1573年頃)の「月代(サカヤキ)」という、額から頭頂部までを剃る職(織田信長の髪型をイメージ)であり、美容師の起源は、江戸時代の「女髪結(カミユイ)」(舞妓さんのような髪型をイメージ)であるといわれています。
法律が成立した時期を比較してみると、理容師法は昭和22年、当時は美容師に関することも理容師法に定められていましたが、理容と美容に求められる技術が異なることなどから、美容師法がいわば独立する形で、昭和32年に成立しています。
なお、近年は利用状況の変化に伴い、理容師と美容師の職務内容を広げる(内容が重なる)方向で、運用基準の変更(規制緩和)がなされているようです。
床屋と美容院
弁護士 時田 剛志
以上