弁護士 木村 綾菜

現代においては,個人間の連絡のやりとりも,仕事上の書面のやりとりも,クラウドやアプリ,メール等を使ってオンライン上で行われていることが多いのではないでしょうか。
最近では確定申告などもスマホ申告とかe-Taxなどといって,オンライン提出を促しているようです。

私たち弁護士が最も多く書面・書類を提出する相手先は裁判所になります。
ひとつの裁判で,膨大な書面・書類を提出することになりますが,現在,大部分の書面はファックスで提出しています(訴状など,一部の書面・書類に至っては郵送または持参での提出です。)。
行政以外でこんなにファックスを使い倒している業種も珍しいのではと思っておりますが,皆さんの身近なところではファックスは使われておりますでしょうか…?

日本においてファックスが普及し始めたきっかけは昭和46年(1971年)の公衆電気通信法改正にあるようですが,裁判所へのファックスでの書面提出が可能となったのは,平成8年(1996年)の民事訴訟法改正によるものでした。実に25年のタイムラグがあります。
一方,インターネットの普及率については,平成11~14年頃に大幅に伸びており,平成19年頃(2007年)に世帯普及率が9割を超えました(企業への普及はもう少し早かったようです。)。
参照:
総務省HP「昭和51年版通信白書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/s51/html/s51a01030202.html
同「個人のインターネット利用状況の推移」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/field/tsuushin01.html

そして昨今,裁判手続のオンライン化が進められています。
令和4年(2022年)には一部の裁判所で,従来ファックスでの提出が可能だった書面についてオンライン上で提出できるシステムの運用が始まります。
さらに,訴状といったファックスでの提出が認められていなかった書面もオンライン上で提出が可能になる民事訴訟法の改正案が閣議決定されたようです(この制度は令和7年(2025年)頃に運用開始される予定です。)。
やはり,裁判所において,ある通信方法が使えるようになるには,普及し始めてから20~25年程度の時間がかかるようです。

今後,弁護士業界は新しいシステムに対応するために試行錯誤を重ねることになりますが,弊所も取り残されないよう,しっかりと対応していきたいと思っています。