A これに関してつぎのような条文があります。

民法536条1項
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができる。
   ※ つまり、貴社と業者のいずれの過失にもよらないで、業者が、清掃業務をすることができなくなったときは、業者は業務委託料を請求することができない。

民法536条2項
  債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
※ つまり、貴社の過失によって、業者が、清掃業務をすることができなくなったときは、業者は業務委託料を請求することができる。この場合、業者が、清掃業務を免れたことによって利益を得たときは(業者が人の手配をする必要がなくなり、その分、費用の支出を免れたなど)、この利益分を貴社に支払わなければならない。

したがって、問題になるのは、今回のコロナウイルス騒ぎによるダンスホールの休止が、「貴社と業者のいずれの過失にもよらないで、業者が、清掃業務をすることができなくなった」のか、「貴社の過失によって、業者が、清掃業務をすることができなくなった」のかということになります。

ところで、新型インフルエンザ対策特別措置法(今回の新型コロナウイルスも、この対策法によって規制されます)45条2項は、「新型インフルエンザなどの蔓延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザなどの潜伏期間及び治癒までの期間を考慮して、特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設、興行場、その他政令で定める多数のものが利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催し物を開催する者に対し、施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止、その他、政令で定める措置を講ずるよう要請することができる」と定めており、学校、社会福祉施設など多数のものが利用する施設について、使用の制限などを要請することができるとなっています。

このような「多数のものが使用する施設」に該当し、また、使用の制限などの要請が知事からされたときは、上記の「貴協会と業者のいずれの過失にもよらないで、業者が、管理・清掃業務をすることができなくなった」場合にあたるとする考えが強いようです(ただし、反対の考えもあります)。要請であっても事実上の強制力があると考えるからだと思います。

ところで、ダンスホールは上記の「政令で定める多数のものが使用する施設」に該当しますので、貴社が、知事から施設使用の制限、停止などの要請を受けているということであれば、反対説はあるものの、上記の民法546条1項あたり、貴社は、業者に対する業務委託料の請求を免れることになる可能性が高くなります。

ただ、上記のとおり反対説もあることですので、業者が被る損害のある程度はみてあげて、話し合いで解決するのが穏当かもしれません。