A 賃借人が賃料を支払わない場合、賃貸人は、賃料不払いを理由に賃貸借契約を解除でき、明け渡しを求めることができるのですが、賃借人が争うとすると次のようなことが考えられます。

① 賃貸人は、賃貸借物件を使用に適する状態にして賃借人に貸す義務があるが、コロナの影響で、事実上、賃借人は賃貸借物件を使用できないのと同じだから、賃貸人はこの義務を果たしておらず、したがって賃借人には、賃料の支払い義務はない。

② 仮に賃料不払いがあるとしても、貸主が賃貸借契約を解除するには、貸主と借主の信頼関係が破壊されていなければならない。今回は、コロナの影響で売り上げが落ち、それで賃料の支払いができないのだから、賃借人に不払いがあっても、貸主と借主の信頼関係は破壊されておらず、賃貸借契約の解除はできない。

①については、コロナは賃貸人とはまったく関係ないことですし、賃貸借物件自体は、賃借人が使用収益できるのですから、賃料を免除、減額してほしいという賃借人の主張は法的には無理があり、賃貸人は免除、減額を拒否することができます。

②ですが、通常は3ヶ月の滞納で契約解除ができ、それでも明渡しをしない場合は、訴訟になって賃貸人が勝訴するということになるのですが、今回は、賃借人が賃料を払えないのは、コロナの影響ということがあるので、3ヶ月の賃料不払いでは信頼関係が破壊されたとはいえず、それ以上(5か月とか6か月)の賃料不払いが必要だと裁判所が判断する可能性はあります。ただ、その場合でも、3ヶ月の時点で契約を解除し、その後も不払いは続いて、5ヶ月、6ヶ月になるのでしょうから、3ヶ月で解除するということでもよいと思います。

以上、賃料不払いがある場合には、法律的には、解約を解除し、原状回復してもらって退去してもらうということも可能と思います。
ただ、政府も、コロナの影響で賃借人が賃料を払えない場合は、賃料支払の猶予に応じるなど柔軟な措置の実施を不動産団体に要請しているようですし、また、原状回復費用を賃借人に負担させるとしても、賃借人がそれだけのお金を持っていない場合は、結局賃貸人の負担になってしまいます。また、新たな賃借人をすぐに発見できるのかの疑問も残ります。そこで、賃料の支払い猶予に応じるなど、ある程度の妥協をしてあげることも必要かと思います。