令和元年5月 弁護士 田中智美
30年以上前 Aの父がその所有する土地を、Bに建物所有目的で賃貸
Bは土地上に家を建てて一家で居住
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H11 Aの父が死亡し、Aがこの土地を相続
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H26 Bが死亡し、以降地代が支払われなくなる
同居していたBの妻C、娘DはBの死亡後もしばらく住んでいたが、地代を支払わないまま、「気付いたらいなくなっていた」という
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Aが、「賃貸借契約を解約し、土地を更地にして明け渡して欲しい」と来所
Bの相続人を調査したところ、C・Dを含めて6名いたが、全員が相続放棄をしていることがわかった⇒相続人不存在
相続財産管理人の選任を申し立てる必要があるのか?
「相続人のあることが明らかでないとき」(民法951条)
特別代理人選任申立で足りるのか?
「法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことできない場合において、未成年者又は成年被後見人に対して訴訟行為をしようとする」場合(民訴35条1項)
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相続人がいるかどうか「不分明」である場合の相続財産について、特別代理人の選任を認めた古い判例あり(大決S6.12.9)
⇔本件では、相続人が全員相続放棄しており、「相続人が不存在」であることが明らかなケース
亡B相続財産を被告として、建物収去土地明渡請求訴訟+特別代理人選任申立を行ったところ、裁判所は「相続財産管理人を申し立てて下さいよ。予納金も負担できますよね?」
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上記古い判例と、地代相当損害金が膨らむ一方なので早期の明渡しが必要であり、相続財産管理人ではそれが実現できない旨を主張したところ、特別代理人の選任が認められた。