労災による慰謝料はいくらもらえる?労災保険からは支払われない慰謝料の金額や請求時の注意点について解説します。

不運にも労災事故に遭われた方へ

絶対にやってはいけないこと

不運にも労災事故に遭われた方へ
絶対にやってはいけないこと

・労災保険の申請をしないで自費治療する

・怪我をしたのに病院に行かない

・会社から労災保険を使用しないでほしいと言われ鵜呑みにしてしまう

労災に遭ったのに、労災保険だけ申請し、会社等に対する慰謝料請求を検討しない

労災を受けた方は、心身ともに苦痛が生じます。

苦痛を補うためには、「慰謝料」を受け取ることしかありません。

しかし、労災保険からは、慰謝料は、一切支払われません。

なお、労災保険から支払われるのは、療養補償給付、休業補償給付、傷病補償年金、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭給付、介護保障給付、二次健康診断等給付等に限られます。ここに、慰謝料というのはありません。

労災に遭った場合に必ず検討すべきこと

労災に遭った場合に必ず検討すべきこと

労災事故の原因がどこにあったのか。

これは必ず、法的視点から、検討をする必要があります。

なぜなら、会社に安全配慮義務違反がある場合、もしくは、労災を生じさせた第三者(従業員等)に過失がある場合には、被災者は、会社もしくは第三者に対し、労災の慰謝料を請求することが可能となるからです。

では、慰謝料というのは、具体的に何に対する苦痛を補償してくれるのでしょうか。法的には、3種類の性質がありますので、解説して参ります。

労災により会社もしくは第三者に請求できる慰謝料の3種類とは?

①怪我の程度にかかわらず被災者の誰しもが請求できるもの

①怪我の程度にかかわらず被災者の誰しもが請求できるもの

    労災により怪我をしたら、皆さまは病院に行くと思います。

    時に、入院を要することもありますし、通院を継続することもあります。

    労災がなければ入院や通院をする必要もありませんでしたが、労災のせいで入院や通院を余儀なくされることから、「入通院慰謝料」というものがあります。

    実務上、交通事故の事案などで用いられることも多く、傷害慰謝料といわれることもあります。

    この「入通院慰謝料」というのは、入院期間や通院期間の長さに比例して慰謝料の金額が増えていく性質があります。

    ただし、それらの期間が増えるほど、加算される金額は小さくなりますので、一概に「通院期間を長引かせればよい」というわけではありません。

    次に説明する後遺障害との関係で、通院期間が不要に長引いたがゆえ、後遺障害とは認められない程度に回復してしまうというジレンマもあるという考えもあるようです。

    なお、以下のとおり別表Ⅰと別表Ⅱがあり、別表Ⅰを原則として用いつつ、怪我の程度が比較的軽い場合には別表Ⅱを用いることが多いです。

    ※表の見方

    ・入院のみの方は、「入院」欄の月に対応する金額(単位:万円)となります。
    ・通院のみの方は、「通院」欄の月に対応する金額となります。
    ・両方に該当する方は、「入院」欄にある入院期間と「通院」欄にある通院期間が交差する欄の金額となります。
    (別表Ⅱの例)
    ①通院6か月のみ→89万円
    ②入院3ヶ月のみ→92万円
    ③通院6か月+入院3ヶ月→148万円

    ②後遺障害が認められた場合に請求できるもの

    ②後遺障害が認められた場合に請求できるもの

    通院を続け、その症状に対する一般的な治療を行ったものの、医学的にそれ以上の治療効果が期待できないという状態を、「症状固定」といいます。

    症状固定の時に、身体に残ってしまった症状、つまり、完治せず将来的に回復が見込めない身体的(あるいは精神的)な症状を「後遺症」といいます。

    そして、後遺症のうち、労働者災害補償保険法施行規則に定めのある1級~14級までの障害に該当すると言える場合には、「後遺障害」が認定されます(基本的に、労働基準監督署が認定します。例外的に、裁判所で認定してもらうこともあります。)。

    1級が1番重く、14級が一番軽いということになっています。

    後遺障害の等級は、慰謝料や逸失利益などの項目の金額に関わるので、非常に重要なものです。

    後遺障害が認められた場合に認められる慰謝料こそ、「後遺障害慰謝料」といいます。

    後遺障害慰謝料についても、交通事故の場合と同様に考えることができ、以下のような裁判基準により、金額を定めることが多いです。

    後遺症慰謝料金額早見表

    等級慰謝料金額
    1級2800万円
    2級2370万円
    3級1990万円
    4級1670万円
    5級1400万円
    6級1180万円
    7級1000万円
    8級830万円
    9級690万円
    10級550万円
    11級420万円
    12級290万円
    13級180万円
    14級110万円

    例えば、12級ですと290万円の慰謝料、14級ですと110万円の慰謝料です。

    これは、入通院慰謝料は別の慰謝料となります。

    ③死亡した場合に請求できるもの

    ③死亡した場合に請求できるもの

    労災事故で死亡事故が発生してしまった場合は、本人の慰謝料と、遺族固有の慰謝料が発生します。下の表は、被害者本人の慰謝料と遺族固有の慰謝料を合わせた金額となります。

    ポイントは、被害者の属性や家庭での役割によって金額が異なることです。

    被害者が一家の支柱(例えば、夫が会社員、妻が専業主婦の場合は夫)であれば、一番金額が高くなります。「その他」とは、独身の男女、子ども、高齢者のことです。

    被災者の属性死亡慰謝料の金額
    一家の支柱2800万円
    母親・配偶者  2500万円
    その他 2000万~2500万円

    労災慰謝料の請求時の注意点

    労災慰謝料は誰に対して請求する?

    労災慰謝料の請求時の注意点
労災慰謝料は誰に対して請求する?

    労災慰謝料は、労災保険では支払われません。

    労災慰謝料は、会社(勤務先)、または請負関係にある元請会社や派遣先会社、第三者(会社の従業員等)やその第三者を雇用する会社などを相手に、求める必要があります。

    ただし、すべての労災事故について労災慰謝料を請求できるわけではありません。労災認定されたとしても、会社側に落ち度がない場合には労災請求することができない場合もあり得ますので、弁護士とともによく検討する必要があります。

    どのような場合に労災慰謝料を請求できる?

    どのような場合に労災慰謝料を請求できる?

    会社に安全配慮義務違反がある場合には、会社に対する請求を行うことが可能です。

    安全配慮義務違反とは

    「労働者が役務提供のために設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体を危険から保護するよう配慮すべき」という安全配慮義務を負う(最判昭和59年4月10日・労判429号12頁、労働契約法5条)

    また、第三者行為災害による場合の第三者に過失があれば第三者に請求することが可能であり、その雇用主に対しても使用者責任を追及し請求することが可能です。

    さらに、元請下請の関係がある会社の元請に責任を追及する場合や派遣先や派遣元が存在する場合にも請求できる場合があります。

    労災慰謝料を支払ってもらう場合に注意(留意)すべきことはあるか?

    労災慰謝料を支払ってもらう場合に注意(留意)すべきことはあるか?

    会社との交渉をおひとりで進めようとするのは危険です。

    会社側は、安全配慮義務違反がないことを主張した方が慰謝料を支払わなくて済む関係から、責任を否定し、不利になる証拠を出さないことが考えられるからです。

    会社が責任を認めなければ裁判を余儀なくされますが、安全配慮義務違反があることの主張立証責任は原告(つまり被災者側)にあるため、労災が発生したら、すぐにでも弁護士に相談を開始し、会社側からの情報収集や証拠集め、交渉、訴訟などを見越し、法律の専門家の力を頼るべきです。

    また、時効という問題もあります。

    2020(令和2)年4月1日以降に生じた労災については、5年で消滅時効にかかります。時効の問題についても、詳しくは、弁護士にご相談ください。

    労災慰謝料を請求するために当事務所ができること

    労災慰謝料を請求するために当事務所ができること

    ぜひ、上で解説したことを現在の自分と照らし合わせてみてください。

    しかし、どれだけ調べてみても、実際に労災申請を自分で進めたり会社に対して損害賠償請求をするとなるとやはり不安が残ってしまいますよね。

    どれだけ状況が上で解説したことに当てはまるとしても、会社にどのように話をもっていけばよいのか悩まれる方もいらっしゃると思います。

    もし労働災害で辛い思いをしているのに、本来受け取れるはずだった給付が受け取れなくなるというのは非常に辛いことだと思います。

    私たちとしても、1人でも多くの給付を受け取る権利がある方に給付を受け取っていただき、みなさまの未来への不安解消と前を向くきっかけづくりをお手伝いさせていただきたいと思っております。

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    ■この記事を書いた弁護士

    弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
    弁護士 時田 剛志

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