模倣品の製造、仕入と不正競争防止法
Xは、若年層に人気のあるブランドショップであり、自社ブランドの製品を全国10店舗のショップやネットで販売し、本件の対象となった商品について、若年層に人気の月刊誌にも掲載されていました。
Xは、その月刊誌に発表された衣料品の「模倣品」がY店舗で販売されていたことから、不正競争防止法に基づきY店舗と製造元の2社に対し損害賠償請求を求め訴訟提起をしました。
まず、製造元は、衣料品等はトレンドがあり、そのトレンドを組み合わせた結果、一部、Xの製品の形状と類似した点は認められるものの、ありふれた(トレンドとなっている)形態に依拠して商品を製造したのであって、Xの製品に依拠してこれを作成したのではない以上、「模倣」をしていないと争いました。
また、販売店舗は、模倣品であると知らずに、また、重大な過失なく模倣品であることを知らずに製造元から仕入れたものであり、その場合、不正競争防止法上の損害賠償責任を負わない(不正競争防止法19条1項5号ロの規定)と争いました。
原告は、自社ブランドは著名であり、雑誌等に紹介されているから、販売店舗が模倣品であることを知らずに購入したことなどあり得ないし、模倣は明かであると争いましたが、裁判所の判断は、Y店舗との製造元の主張どおりとなりました。
模倣か否かの判断は、先行商品に依拠して模倣品が作成されたと評価されなければならず、衣料品のような「似たような」商品が相当量流通する場合、「そっくり」との評価を受けない限り「模倣品」との評価がしにくい面があります。
また、販売店舗の場合、悪意・重過失により模倣品を仕入れた場合に限り、損害賠償責任が認められるところ、衣料品などの場合は上記のとおり「似たような」商品が多数あるため、原告側の悪意・重過失立証は困難な面があります。
そのため、模倣されるような商品群を有している企業は、商標などによる保護を受けられるように積極的な商標等の登録が必要となると考えられます。
顧客名簿を「営業秘密」として管理し、また、従業員と競業禁止契約を結んだ事例
A社は、A社を退職した元従業員Bが、A社の顧客に対して、戸別訪問をしたり、ダイレクトメールを送るなどの営業行為をしているため、これを何とか止めさせたいと思いました。
そこで、弁護士に相談したところ、その顧客情報がA社の「営業秘密」にあたるのであれば、不正競争防止法を根拠にして、裁判所に対し、Bの戸別訪問やダイレクトメールの禁止を請求したり、また、裁判所から禁止を命じられたにも関わらず、これらの行為をやめないときは、裁判所はBに対し、損害金を支払うよう命令することもできるとのことでした。
ただ、「営業秘密」と言えるためには、
① 秘密として管理されている、
② 事業活動に有用である、
③ 公然と知られていない、
の3つの条件が必要だとのことでした。
そして、A社の場合、顧客情報は、A社の社員であれば誰でも見ることができる状態にあったため、「営業秘密」とは言えないとのことでした。
そのため、今回については、Bの営業活動を止めさせることは難しいのではないかということになりました。
そこで、今後、このようなことが起きないよう、A社は、顧客情報にマル秘マークを付け、自由に閲覧することができないようにして、顧客情報にアクセルできる者を少人数に限ることにしました。
また、今回のようなケースを防ぐためには、会社の取締役や従業員が退職した後に備えて、在職中に、取締役や従業員と競業禁止契約を結んでおくことが有効だという弁護士からのアドバイスを受けました。
この契約を結んでおけば、A社の元従業員が、同業他社に就職したり、A社の顧客に対して営業活動を行ったような場合でも、顧客名簿が「営業秘密」にあたるかどうかを問題にするまでもなく、「同業他社に就職したり、A社の顧客に対して営業活動をこと自体が、競業禁止契約に違反している」との理由で、元従業員の行為の差止めや損害賠償を請求することができるとのことでした。
そこでA社は、
① 業務上知り得た一切の営業秘密を、在職中はもちろん、退職後も第三者に漏えいしない。
② 退職後2年間は、会社業務と競業する事業に関与しない。
という内容の競業禁止契約をすべての従業員と締結しました。
なお、憲法では職業選択の自由ということが定められていますが、競業禁止をするということは、この職業選択の自由を制約することでもあるので、
■ 競業を禁止する期間
■ 競業を禁止する地域
■ 就業が制限される職種
■ 何らかの代償措置がとられているか、
などの点からみて、競業禁止措置が合理的なものでなければならないとされています。
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