歩行中や自転車に乗っているときに自動車に接触されて転倒すると、鎖骨を骨折してしまうことがあります。
今回は、鎖骨を骨折してしまったときに、どのような後遺障害が認められる可能性があるか、慰謝料はどうなるかについて解説します。
1 交通事故における鎖骨の骨折
交通事故において、鎖骨を骨折してしまうケースとしては、以下の例があります。
・歩行中の交通事故
・自転車・バイクに乗っているときの交通事故
自動車に乗っているときは、身体が車体の内部にあるため転倒のおそれはほぼありませんが、歩行中や自転車・バイクに乗っているときは、身体を守るものがありません。
そのため、そのような時に交通事故にあうと、接触の際に転倒し、鎖骨を骨折してしまう可能性があります。
2 鎖骨を骨折したときの後遺障害
⑴ 鎖骨骨折によって残る可能性がある後遺症
鎖骨を骨折したときは、ギプスなどで患部を固定する、手術をする等の方法により、治療をしていくことになります。
もっとも、治療が行われたとしても、以下の後遺症が残ってしまうことがあります。
・骨がきれいにくっつかない
・肩の動く範囲が狭くなる
・骨折した部分の痛みが残る
⑵ 交通事故のおける後遺障害の認定
交通事故にあって後遺症が残ってしまった場合には、自賠責損害調査事務所という機関に後遺障害等級を認定してもらうことになります。
後遺障害の等級は、「自動車損害賠償保障法施行令」で定められています。
等級が認定されると、後遺障害分の慰謝料や逸失利益などに関する損害を請求できます。
鎖骨を骨折した場合には、変形障害、機能障害、神経障害の後遺症が残っていると判断される可能性があります。
ア 変形障害
治療の結果、鎖骨の癒合がうまくいかなかったという場合には、12級5号の後遺障害が認定される可能性があります。
●後遺障害 第12級5号
「鎖骨…に著しい変形を残すもの」
ここでの「著しい変形を残す」とは、裸になったときに、変形していることが明らかにわかるかどうかによって判断されることになっています。
レントゲンを撮ってみないとわからないという変形では、この後遺障害は認定されません。
イ 機能障害
治療をしても、肩関節を自由に動かせない状態になってしまうことがあります。
そのような場合には、10級10号または12級6号の後遺障害が認定される可能性があります。
●後遺障害 第10級10号
「1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」
●後遺障害 第12級6号
「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」
10級10号の「機能に著しい障害を残す」とは、
・関節の可動域が、腱側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの
・人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が腱側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの以外のもの
をいいます。
12級6号の「機能に障害を残す」とは、
・関節の可動域が、腱側の可動域角度の4分の3以下に制限されているもの
をいいます。
ウ 神経障害
鎖骨骨折の治療をしても、神経の損傷や圧迫などにより、痺れや痛みなどの症状がずっと残ってしまうことがあります。
そのような神経症状が残ってしまった場合には、以下の後遺障害等級に該当する可能性があります。
●後遺障害 第12級13号
「局部に頑固な神経症状を残すもの」
●後遺障害 第14級9号
「局部に神経症状を残すもの」
医学的証明の有無によって、12級または14級が認定されます。
3 後遺障害が認められたときに請求できる項目
鎖骨骨折による後遺障害が残ってしまった場合、加害者に対して請求できる損害の項目としては、主に後遺障害慰謝料と逸失利益が挙げられます。
⑴ 後遺障害慰謝料
慰謝料には、3つの基準があります。
1.自賠責基準
自賠責保険とは、自動車を運転する人は必ず加入する強制加入保険です。その自賠責の基準は、最低限の補償をするための基準です。
2.任意保険基準
保険会社が独自に定めた基準で、自賠責基準よりは若干高いと言われています(基本的には基準は非公開となっています。)。
3.裁判(弁護士)基準
裁判所で、算定の基準として採用されているものです。金額は、3つの中で最も高額です。
そうすると、被害者にとっては、裁判基準がもっとも良いということになります。
しかしながら、保険会社は一般的に、「弁護士が代理人で入っている場合」や「裁判での判決の場合」、「紛争センターでのあっせんを受けた場合」にしか、裁判基準での支払いをしようとしません。
ご自身で交渉している場合は、ほとんどの場合、自賠責基準か、自賠責基準とほぼ同じ基準である任意保険会社の独自の基準で慰謝料額を計算し、提案してきます。
したがって、慰謝料をあげる簡単な方法の一つは、弁護士を代理でつけることになります。保険会社は、たいていは自賠責基準に近い金額の慰謝料額を提示してきますので、示談の際には注意が必要です。
⑵ 逸失利益
後遺障害が残ってしまったが故に、将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入のことを、「逸失利益」といいます。
逸失利益の基本的な考え方は、1年あたりの基礎収入に、後遺障害によって労働能力を失ってしまうことになると想定される期間(労働能力喪失期間)と、後遺障害によって失われた労働能力の割合(労働能力喪失率)を乗じて計算することになります。
(ただし、将来もらえるはずの金額を、現時点で一括してもらうことになるので、中間利息を控除することになります)
ただし、保険会社によっては、鎖骨骨折によって鎖骨が変形しても今後の収入には影響しないと主張して、逸失利益の全部または一部を否定してくることもあります。
その場合、交渉や訴訟の中で、事故によって将来の収入が減少すると言えるのかが問題となってきます。
4 交通事故で鎖骨を骨折してしまった際は、ぜひ弁護士へ相談を
交通事故で鎖骨を骨折してしまった場合、残念ながら、後遺症が残ってしまう可能性は否定できません。
そうなってしまった場合には、しかるべき賠償金をきちんと受け取れるよう、弁護士に相談することをお勧めします。
ご自身で交渉するよりも、弁護士が交渉する方が、受け取れる賠償額が大きくなることが多いです。
グリーンリーフ法律事務所は、地元埼玉で30年以上の実績があり、各分野について専門チームを設けています。ご依頼を受けた場合、専門チームの弁護士が担当します。無料で10分の電話相談も行っております。まずは、一度お気軽にご相談ください。