このページは、弁護士が書く労働災害でお悩みの方向け記事です。

労働災害による治療が一通り終わり、症状固定と判断されたとき、元通りに戻らなかった身体に対して認定されるのが後遺障害です。

後遺障害は、1~14級まであり、それぞれに応じて給付される金額が異なります。

そこで今回は、どの程度の金額が補償されるのかを解説し、手続の進め方についても、数々の労働災害弁護を取り扱ってきた専門家が分かりやすく掘り下げてみたいと思います。

さっそくですが、本題に入りましょう。

1 後遺障害の種類は?

後遺障害は、1~14級まであります。
後遺障害の分類の中では、1級が一番重く、14級が一番軽い、というイメージです。

詳しい説明は、労働者災害補償保険法施行規則の別表第一「障害等級表」に明記されており、以下に抜粋します。

給付の内容についても記載がありますが、分かりやすく金額のことを知りたい方は、下の「2 後遺障害ごとの補償金額は?いくらもらえる?」までスクロールしてください。

障害等級 給付の内容 身体障害
第一級 当該障害の存する期間一年につき給付基礎日額の三一三日分 一 両眼が失明したもの
二 そしやく及び言語の機能を廃したもの
三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
五 削除
六 両上肢をひじ関節以上で失つたもの
七 両上肢の用を全廃したもの
八 両下肢をひざ関節以上で失つたもの
九 両下肢の用を全廃したもの
第二級 同二七七日分 一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
二 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
二の二 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
二の三 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
三 両上肢を手関節以上で失つたもの
四 両下肢を足関節以上で失つたもの
第三級 同二四五日分 一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
二 そしやく又は言語の機能を廃したもの
三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
五 両手の手指の全部を失つたもの
第四級 同二一三日分 一 両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
二 そしやく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
三 両耳の聴力を全く失つたもの
四 一上肢をひじ関節以上で失つたもの
五 一下肢をひざ関節以上で失つたもの
六 両手の手指の全部の用を廃したもの
七 両足をリスフラン関節以上で失つたもの
第五級 同一八四日分 一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの
一の二 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
一の三 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
二 一上肢を手関節以上で失つたもの
三 一下肢を足関節以上で失つたもの
四 一上肢の用を全廃したもの
五 一下肢の用を全廃したもの
六 両足の足指の全部を失つたもの
第六級 同一五六日分 一 両眼の視力が〇・一以下になつたもの
二 そしやく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
三 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
三の二 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
四 せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
五 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
六 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
七 一手の五の手指又は母指を含み四の手指を失つたもの
第七級 同一三一日分 一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの
二 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
二の二 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
三 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
四 削除
五 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
六 一手の母指を含み三の手指又は母指以外の四の手指を失つたもの
七 一手の五の手指又は母指を含み四の手指の用を廃したもの
八 一足をリスフラン関節以上で失つたもの
九 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
一〇 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
一一 両足の足指の全部の用を廃したもの
一二 外貌に著しい醜状を残すもの
一三 両側のこう丸を失つたもの
第八級 給付基礎日額の五〇三日分 一 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
二 せき柱に運動障害を残すもの
三 一手の母指を含み二の手指又は母指以外の三の手指を失つたもの
四 一手の母指を含み三の手指又は母指以外の四の手指の用を廃したもの
五 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
六 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
七 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
八 一上肢に偽関節を残すもの
九 一下肢に偽関節を残すもの
一〇 一足の足指の全部を失つたもの
第九級 同三九一日分 一 両眼の視力が〇・六以下になつたもの
二 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
三 両眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの
四 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
五 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
六 そしやく及び言語の機能に障害を残すもの
六の二 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
六の三 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
七 一耳の聴力を全く失つたもの
七の二 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
七の三 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
八 一手の母指又は母指以外の二の手指を失つたもの
九 一手の母指を含み二の手指又は母指以外の三の手指の用を廃したもの
一〇 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
一一 一足の足指の全部の用を廃したもの
一一の二 外貌に相当程度の醜状を残すもの
一二 生殖器に著しい障害を残すもの
第一〇級 同三〇二日分 一 一眼の視力が〇・一以下になつたもの
一の二 正面視で複視を残すもの
二 そしやく又は言語の機能に障害を残すもの
三 十四歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
三の二 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
四 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
五 削除
六 一手の母指又は母指以外の二の手指の用を廃したもの
七 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
八 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
九 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
一〇 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
第一一級 同二二三日分 一 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
二 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
三 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
三の二 十歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
三の三 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
四 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
五 せき柱に変形を残すもの
六 一手の示指、中指又は環指を失つたもの
七 削除
八 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
九 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
第一二級 同一五六日分 一 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
二 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
三 七歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
四 一耳の耳かくの大部分を欠損したもの
五 鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
六 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
七 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
八 長管骨に変形を残すもの
八の二 一手の小指を失つたもの
九 一手の示指、中指又は環指の用を廃したもの
一〇 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
一一 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
一二 局部にがん固な神経症状を残すもの
一三 削除
一四 外貌に醜状を残すもの
第一三級 同一〇一日分 一 一眼の視力が〇・六以下になつたもの
二 一眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの
二の二 正面視以外で複視を残すもの
三 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
三の二 五歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
三の三 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
四 一手の小指の用を廃したもの
五 一手の母指の指骨の一部を失つたもの
六 削除
七 削除
八 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
九 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
一〇 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
第一四級 同五六日分 一 一眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの
二 三歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
二の二 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
三 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
四 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
五 削除
六 一手の母指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
七 一手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
八 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
九 局部に神経症状を残すもの

備考

一 視力の測定は、万国式視力表による。屈折異常のあるものについてはきよう正視力について測定する。

二 手指を失つたものとは、母指は指節間関節、その他の手指は近位指節間関節以上を失つたものをいう。

三 手指の用を廃したものとは、手指の末節骨の半分以上を失い、又は中手指節関節若しくは近位指節間関節(母指にあつては指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。

四 足指を失つたものとは、その全部を失つたものをいう。

五 足指の用を廃したものとは、第一の足指は末節骨の半分以上、その他の足指は遠位指節間関節以上を失つたもの又は中足指節関節若しくは近位指節間関節(第一の足指にあつては指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。

2 後遺障害ごとの補償金額は?いくらもらえる?

(1)では、何級に認定されれば、いくらもらえるのでしょうか。

誤解のないようにあらかじめ申しますと、障害補償給付は、労災保険として支払われるものであり、あなたの損害の「一部」に過ぎません。

具体的には、障害補償給付では、慰謝料(後遺障害慰謝料と入通院慰謝料との2種類があります)は、全く支払われませんので、慰謝料については、会社に対する損害賠償請求を検討する必要があります。

また、損害としては大きくなることの多い逸失利益(将来稼げなくなった分の補償)についても、障害補償給付ですべてがまかなわれるわけではないと考えて差支えありません。

障害補償給付として支払われるのは、次のとおりです。
1~7級までに当たれば、生涯、「年金」が補償されます。
8~14級までに当たれば、「一時金」しか補償されません。

具体的な金額は、あなたの収入によって異なります。

(2)給付基礎日額とは

まずは、あなたの「給付基礎日額」を考える必要があります。

簡単に説明すると、給付基礎日額=平均賃金のことであり、事故「前」3ヶ月分(例えば、10月15日に事故があれば、7月~9月分の給与を指します。)の賃金(ボーナスは含みません。)を足して、3ヶ月で割った場合に、1日の賃金額が分かります(例えば、3ヶ月で90万なら、90日で割り、1日1万円ということになります。)。

この金額をもとに、以下の表をみて、障害補償給付・障害補償一時金の額として、該当する日数をかけてみてください。

(3)算定基礎日額とは

以下のとおり「特別」がつく給付については、給付基礎日額ではなく、算定基礎日額をベースに計算されます。

これは、事故前の1年間の収入のうち、賞与などのボーナスに対して、365日で割って算出されるものです(例えば、年間100万円のボーナスがあれば、365日で割ると、1日約2740円となります)。

この金額をもとに、以下の表をみて、障害特別年金、障害特別一時金の額として、該当する日数をかけてみてください。

(4)1~7級に該当するケース

障害補償年金、障害特別支給金、障害特別年金が給付されます。
なお、詳しくは別の記事に書きますが、「特別」がつく給付については、会社等に損害賠償請求する際に、「すでにもらったでしょ!」といって、損害額から差し引かれることのないお金ですので、労災保険の恩恵です。

(5)8~14級に該当するケース

障害一時金、障害特別支給金、障害特別一時金が給付されます。

(6)給付額

※厚生労働省「障害(補償)等給付の請求手続 」から抜粋。

3 障害補償給付の請求手続の流れ

さいごに、障害補償給付の請求手続きの流れを簡単に解説します。

(1)会社が協力してくれる場合

まず、障害補償給付を請求するということは、一定の治療期間を経ていることになります。治療費については、おそらく、療養補償給付、休業していれば休業補償給付という、いずれも労災保険の適用を受けている状況、言い換えれば、会社やその社労士により、「労働者死傷者報告書」がきちんと提出されていて、かつ療養や休業の補償のための申請がなされているケースが多いと思います。

その場合には、障害補償給付の申請についても、会社と相談しながら進めるケースが多く、被災者の方では、通院していた病院に労災提出用の「後遺障害診断書」の作成を依頼し、入手すればよいことになります。

(2)必須の提出書類

労基署に提出するのは、この二点です。

① 障害給付支給請求書
② 後遺障害診断書

(3)会社が協力的でない場合(労災隠しの可能性)

万一、不当に自費(健康保険含む)で治療をさせられているとか、会社がその費用は支払っているが労災保険が支払われていないという場合には、残念ながら、違法な「労災隠し」の可能性が高いですので、早急に弁護士にご相談ください。

(4)弁護士に依頼する場合

中には、
・すでに会社を辞めており、やりとりするのがストレスである。
・会社を辞めようか迷っており、会社も協力的ではない。
・ご自身では進めることが困難である。
・後遺障害診断書のほかに説明が必要である。
・医学的エビデンス(レントゲン、CT、MRI、カルテ)を提出したい。
・労災顧問医の診断に不安が大きい。
など、様々な理由から、弁護士に、障害補償給付の申請を依頼される方もおります。

グリーンリーフ法律事務所では、障害補償給付申請の代行も行いますし、退職に関する会社との交渉、有給申請、会社に対する損害賠償請求、資料収集などを、あなたの代理人として行うことが可能です!

ご相談 ご質問
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
弁護士のプロフィールはこちら