このページは、弁護士が書く交通事故でお悩みの方向け記事です。
交通事故による治療が終わり、症状固定と判断されたとき、元通りに戻らなかった身体に対して認定されるのが後遺障害です。後遺障害は、1~14級まであり、それぞれに応じて給付される金額が異なります。後遺障害が認定される時期は、症状固定後、自賠責の認定を申請してから3ヶ月程度で認定され、認定とほぼ同時に支払が行われます。症状の内容や程度に応じて審査にかかる期間は異なります。
今回は、後遺障害が認定される時期、保険金が支払われるまでの期間について、数々の交通事故弁護を取り扱ってきた専門家が分かりやすく掘り下げてみたいと思います。
さっそくですが、本題に入りましょう。

1 後遺障害等級認定までの流れ

(1)交通事故に遭われた方は、以下の流れを辿ります。

(2)自賠責保険金が支払われるまでの期間

なお、本題にあります、自賠責保険金が支払われるまでの期間は、人それぞれ、怪我や治療の内容により異なります。

一般的にいえるのは、治療終了から後遺障害申請までは、約1~2ヵ月以内で申請可能(この間は、書類の準備期間があり、特に、任意保険会社から最終支払月の診断書・レセプトという必要書類を取り付けるまでに1ヵ月程度かかることがあります。)であり、申請後、後遺障害認定までの期間は、3ヶ月程度を見込んでおります(この間、自賠責から、追加で画像等の取りつけを依頼されます。自賠責の依頼により画像等を取りつければ、費用はすべて自賠責持ちとなりますので、この流れを踏むことが多いです。頚椎捻挫等の比較的軽傷な事案では3ヶ月程度で認定に至ることが多く、高次脳機能障害等の専門部会による審査が必要な場合には、申請してから認定までに半年程度がかかることもあります)。

自賠責保険金は、上記の後遺障害認定の結果が届くのとほぼ同時に振り込まれますので、後遺障害認定と同時期と覚えておいていただければ構いません。

2 交通事故発生~治療開始まで

(1)はじめにすること

交通事故が発生すると、最初に通報・実況見分・保険会社とのやりとり(救急搬送等され、即入院の場合もあります)を行い、直ちに、治療を開始します。
治療開始が遅くなると、詐病を疑われる等の不利益もありますので、少しでも痛みや不快感があれば、迷わず、通院を選択しましょう

(2)スピーディな初診の重要性
最初に通院する病院は、診察していただけるまでのスピードを重視しましょう。通院する病院を変えることは後からでもできますから、事故後、例え、土日祝日であったとしても、病院を探すことはできます。
例えば、埼玉県では、埼玉県救急電話相談→#7119から探してみるのも一つでしょう。

3 治療開始~治療終了まで

(1)病院選びの重要性

治療を開始すると、しばらくは特定の病院に通院することになります。ここで注意が必要なのは、病院にもそれぞれ良し悪しがあり、予約制でリハビリテーションまで充実しているところもあれば、待合室に何十人と待たされ、治療は投薬のみというところもあります。

病院に通院するのは、怪我を治癒するためですから、病院選びは慎重に行う必要があります。病院選びのポイントは、①あなたの症状に対してその病院や医師が精通しているかどうか、②リハビリテーションなどのあなたの要望を踏まえた治療を提供しているかどうか、③予約制等、過度な負担なく通院できるオペレーションをしているかどうか、という点です。

(2)病院を途中から変更すること

病院を変える場合には、任意保険会社(一括対応といい、治療費を立て替えて払ってくれています)に事前連絡をし、かつ、可能な限り、通院先の病院に、新たな通院先に対する紹介状の作成を依頼してください。そうすることで、スムーズに交通事故の治療を引き継ぐことが可能です。

(3)整骨院や接骨院の施術と通院との関係

整骨院や接骨院を希望の方は、事前に通院先の医師に確認し、整骨院や接骨院の施術を受けてもよいかを聞いていただくとよいです。誤解されている方も少なくないのですが、整骨院や接骨院は、柔道整復師や理学療法士等の国家資格保持者ではありますが、医師ではありません
そのため、医療機関による「治療」そのものとは言えないからです。

しかし、実務では、医師が指示を場合には、これらの施術についても治療費を認めるという扱いがなされます。
もちろん、任意保険会社は特に否定することはありませんが、万一、事後的に損害賠償の争いになった場合に、治療費であることを否認してくることがありますので、ご注意ください。

4 治療終了~後遺障害申請まで

(1)症状固定とは

治療が終了すると、「症状固定」という判断となります。つまり、一般的な治療を施したもののそれ以上改善が見込めない状態をいい、それ以降、実務では、一般に治療費を加害者に請求することができなくなります。傷害慰謝料(入通院慰謝料)の請求もこの時点までの期間に限定されるという意味を持ちます。また、症状固定時の状態で、後遺障害の有無を判断しますので、後遺障害認定の上でも重要な意味を持ちます。

(2)症状固定の時期は誰が決める?~任意保険会社という誤解~

たまに誤解されている方がいらっしゃいますが、症状固定の時期は、任意保険会社が決めるのではありません。任意保険会社は、あくまでサービスとして、治療費の立て替え払いをしておりますところ、治療期間が長すぎると判断すると、このサービスを打ち切るということ、いわゆる一括対応の打切りということをしてくることがあり、そのため治療はもうできないと勘違いされる方もいらっしゃるのでしょう。しかしながら、これはあくまでサービスを打ち切るだけであって、症状固定かどうかとは直接関係がありません。

症状固定の時期は、医師と患者様との間で話合い、医師により決してもらうというのがセオリーです。

(3)後遺障害診断書の作成依頼上の注意点

症状固定後、医師に、「後遺障害診断書」(自賠責提出用)を作成していただきます
注意点としては、①病院は、後遺障害診断書の書式を持っていないため、患者様から病院にお渡しする必要があること、②診断書の内容(自覚症状、所見、可動域計測等)については詳しくない医師の場合、補足説明をする必要がある場合もあること、③形式的不備(日付の間違い等)がなく、かつ、患者の主訴を漏らさずに反映されていること、です。これは、患者様の問題というより、医療機関側の問題ですが、自賠責において審査する上で、一つの重要な資料となります。

ただし、自賠責保険は、画像所見を重視する機関です。そのため、治療期間中に、画像所見(レントゲン、CT、MRI)を、必要に応じて、撮影しておくことも肝要です。

(4)後遺障害申請の2種類の方法

後遺障害申請には、おおむね2種類の進め方があります。
一つは、事前認定という手続(加害者の任意保険会社に進めてもらう)、もう一つは、被害者請求(自賠法16条請求などともいいます)といい自分(多くは代理人弁護士)から請求を進める手続です。
後者の場合、後遺障害等級が認定されれば、直接、自賠責保険があなたに振り込まれます。なお、弁護士を選任するメリットもありますので、後述します。

5 後遺障害申請から後遺障害の認定まで

(1)診断書・レセプトの取り寄せ

後遺障害申請には、事故日から症状固定までのすべての病院の診断書、レセプト(診療報酬明細書)の提出が必要です。多くは、加害者側の任意保険会社が治療費を立替え払いしており、その手続上、患者様があらかじめ提出した「同意書」に基づいて診断書・レセプトを取り寄せておりますので、弁護士が依頼を受けた場合には、任意保険会社から診断書・レセプトの写しを取り寄せて、準備を進めます。

なお、診断書・レセプトは、当月の通院分が病院から保険会社に届くのは、大体翌月の中頃ということが多いです。そのため、タイムラグが生じます。具体的には、症状固定が1月31日であればよいのですが、それが2月1日であった場合、2月分の診断書・レセプトが任意保険会社に届くのは3月中旬、そして弁護士事務所にお送りいただくのが3月下旬になると、必要書類がそろうのは、2月1日の症状固定後から約2か月後、ということになることもあります。

(2)申請後のさらなる資料の収集

自賠責に、被害者請求を行うと、自賠責調査事務所から、受け付けましたという内容の書面が通知されることが多いです。

その後、画像取付(通常、事故から症状固定までの間に撮影したレントゲン等の取りつけ)を依頼する文書が届きます。この際、画像が必要なのは自賠責の判断ですから、画像等の取りつけ費用は、一旦は患者様に立替えていただきますが、自賠責から直接、振込を受けられます。

画像取付の手続は、患者様ご本人から病院に依頼していただき、入手していただくことになります

(3)後遺障害認定までの期間

このような流れから、自賠責申請から、画像取付期間(2週間程度)も踏まえ、後遺障害が認定されるのは、3ヶ月程度かかることが多いです。
ただし、怪我の内容が、高次脳機能障害等、認定基準に基づき、厳格に審査される場合には、自賠責は専門部会に審査を回します。それ以外の傷病でも本部審査という場合があります。この場合、3ヶ月で結果が出ることは考えられず、4~6ヵ月を要することもあります

6 後遺障害の認定から示談交渉まで

(1)認定されるとどのように分かるのか

後遺障害は、1~14級まであります。後遺障害の分類の中では、1級が一番重く、14級が一番軽い、というイメージです。もちろん、後遺障害がない=非該当という場合もあります。

後遺障害の等級が認定されれば、その理由を書いた書類が自賠責から送られてくるのとほぼ同時に、申請時に指定した預金口座まで、保険金が振り込まれます。
突然、75万円が保険会社から振り込まれましたが、何でしょうか?」という質問を受けることもありますが、これは、第14級の認定に基づく支払であることから、その時点では認定結果が届いていなくても、「14級が認定されましたね。」と分かることがあります。もちろん、認定された等級が大きければ大きいほど、入金される金額は大きくなります。このあたりは、別のコラムで詳細に解説いたします。

(2)示談交渉

後遺障害の認定を受け入れる場合には、その等級に基づいて、損害賠償請求額を確定させます。この時、弁護士が就いていなければ、保険会社の基準で計算されることになりますが、弁護士が就いていれば、弁護士基準(裁判基準)により、最も患者さんにとって有利な金額で積算することが可能です。
お怪我はお金だけの問題ではなく、健康を取り戻せるなら、お金なんていらないというのもごもっともです。
しかし、時間は戻りません。
お身体に障害を残置してしまった場合には、それに代わるお金、賠償金を、適切に、最大限、受領するしか、慰謝する方法がありません。そのためのサポートを全力で行うのが、弁護士の使命です

(3)示談交渉の前に異議申立てという方法も

もし、非該当など、後遺障害認定に納得がいかない場合には、医学的証拠を再度検討し、新たに収集するなどして、異議申立てを行う手段もあります。この手続は、自賠責の認定に対し、ここがおかしい、と指摘して、再考を促すものです。
とはいえ、改めて時間がかかります(異議申立てに対する判断は、平均で3ヶ月程度はかかります)のと、一度認定した認定を覆すのは容易なことではありません。ただし、弊所では、異議申立てにより、非該当→14級の認定を獲得したケースは多数あります。また、より重い等級である9級→8級の事案などもあり、異議申立てをしなければ、任意保険会社との関係でも揉める(つまり、自賠責保険は最低限の保険金であり、それを受け取っていないと、任意保険会社が既払金として賠償額から差し引いてもらえないので争いになりがちになる)こともあります。

7 示談交渉から示談成立(又は訴訟等)まで

示談交渉は、加害者の任意保険会社との間で行います。
弁護士が代理人に就いていれば、示談交渉の段階でも裁判基準の解決を目指し、交渉を粘り強く行います。弁護士が入るか入らないかで、何倍もの賠償額に差が出るということは極めてよくあります。この段階では、必ず弁護士を代理人として依頼することを強くお勧めいたします

交渉が上手くいかなければ、紛争処理センターという機関を利用して示談斡旋を求めたり、裁判(140万円以下なら簡易裁判所、それ以上なら地方裁判所が多い)による解決を求めたりすることになります。

示談交渉から解決までの期間は、怪我の内容、後遺障害の内容、損害賠償の内容、事故態様(過失割合)、任意保険会社の性質(残念ながら、やはり保険会社がどこかによって、解決までの道のりが変わることが多いです。もっとも、決して、ネット系の保険会社が悪く、大手保険会社がいい、というわけではなく、担当者やサービスセンターによっても差があり、その前提として、事故態様や当事者は事案によりケースバイケースであることが少なくありません。)により異なります。

上手くいけば、1か月以内です。
しかも、後遺障害申請をしない場合には、症状固定後速やかに示談交渉に移りますので、任意保険会社からの保険金の支払いまで、スピーディに進められるケースもあります。

その意味では、たとえば、頚椎や腰椎捻挫といういわゆる他覚的所見のない自覚症状のみの傷病の場合、自賠責に後遺障害申請をするかどうか、検討が必要です。スピードを最重視する場合、後遺障害が見込めない場合には、この手続を踏まずに進めることが時間短縮になることは否めません。

8 弁護士に依頼するメリットは?

一言でいうと、弁護士に依頼するメリットが非常に大きいです。つまり、上で述べたすべての過程において、間違いなく手続を進めることができ、あなたの手間は必要最小限に控えることが可能です。

例えば、治療期間一つをとっても、任意保険会社は、早い時期から打切りを視野に進めてきますので、打切りを阻止し、必要十分な治療期間を確保するために弁護士の交渉が活きてくることがあります。後遺障害申請においても、自賠責の認定に必要な資料収集、陳述書の準備など、認定に向けてできる限りの方策を練ることができます。さらに、任意保険会社との示談交渉においても保険会社の基準ではなく裁判所の基準(最も高い基準)を前提に進めることが可能です

・ご自身では進めることが困難、面倒である。
・医師の診断に不安が大きい。
・最大限の賠償金を獲得したい。
・過失割合について争いたい。
など、様々な理由から、弁護士に依頼される方もおります。
グリーンリーフ法律事務所では、事故直後の段階から、あなたの代理人として活動を行うことが可能です!
弁護士費用補償特約を利用すれば、300万円までの弁護士費用が保険により賄われますので、とてもお得に弁護士を利用いただけることも多いです。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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