自己破産というとどういうイメージがありますでしょうか。
社会的な信用が下がる、日常生活に何か制限が課されてしまうのではないか。公民権がなくなったと聞いたことがあるけど、などがあるかもしれません。
この記事では、自己破産手続き中にしてはいけないこと、どんな制限があり得るのかということについて考えます。

自己破産中にしてはいけないことは?日常生活が制限される?

1 自己破産手続きとは

借金が多くて返せないという場合に考える債務整理の手続きの一つとして「自己破産」という手続きがあります。

この手続きは、簡単に言いますと、債権者に対してお金を返さなくても良いことにしてもらい、生活の建て直しをしていく方法の一つです。

債権者は、債務者に対してお金を貸したわけですから、債権者は債務者に対し当然に「借りた金返せ!」という請求をすることができます。

自己破産手続きは、裁判所の手続きを利用して、この債権者のお金を返せ!という請求ができなくなるようにする方法、すなわち、債務者からしてみれば、「返済しなければならない」という義務をなくしてもらうための手続きとなります。

もっとも、自己破産手続きをとれば、何でもして良い!というわけではありません。

本来であれば返済をするべきところ、返済をしなくて良いとしてもらうわけですから、制限されることはいくつかあります。

2 自己破産手続き中に行なっていけはならないこと

自己破産手続中に行なってはいけないこととしては、次のようなものが挙げられます。

(1)財産を隠すこと
例えば、持っている預貯金口座を隠したり、家の名義や保険、車の名義を親族らに変更したりすることです。

破産は、債権者に借金を返さなくても良いとする手続きです。借金の返済をしなくて良いとしてもらうためには、債務者も誠実に対応する必要がありますし、全額返済できるだけの財産がないとしても、返済できる財産があれば、それらは債権者に平等に返済して、残りの借金を返済しなくても良いとすることが必要になってきます。

持っている財産を隠すことは債権者を害する行為になりますので、財産を隠すことはやめましょう。

(2)財産を処分すること
例えば、お金になりそうな(価値がつく高級な時計など)ものを安く他人に売ったり、他人にあげたりすることです。

資金繰りをするために、持っているものを売りたいという気持ちがあるかもしれませんが、財産があるのであれば、その財産をきちんとお金にして返済をすることが必要になります。

安く物を売るということは、その分債権者に返済できる、配当できるお金を減少させることになりますので、財産を隠すことと同じように、財産を処分することもやめましょう。

(3)クレジットカードの現金化をすることなど
すでに借金の返済をすることができない状況であるにもかかわらず、クレジットカードのショッピング枠で購入した物(ギフトカードなど)を金券、換金ショップなどで換金することなどです。

上記(2)と重なる部分もありますが、例えばショッピング枠で購入した時計を転売することなども該当しえます。

このような行為は、立て替え払いをした会社に対して、損失を与えることになります。

(4)一部の債権者に返済をすること
債権者の一人だけ返済をすることもできません。

自己破産には「債権者平等の原則」というものがあります。これは、債権者は平等に扱わなければならないというものです。

債権者の一人が、たとえ親族であったとしても、親族だけに返済するということもできません。

(5)浪費や賭博などで財産を減少させて、債務を膨らませたこと
無駄遣いや、賭博などギャンブルを行うなどして財産を減少させたり、負債を増やしたりすることです。

債務整理を行うことになった原因が、無駄遣い等であったとしても、債務整理の手続き中も同様な行為を行うことは許されません。

(6)嘘をついてお金を借りること
もう返せないとわかりながら、嘘をついてお金を借り続けることもできません。

(7)嘘の債権者一覧表などを提出すること
債権者がほかにもいるにもかかわらず、一部の債権者には全額返還をしたいと思い、債権者がいることを伏せて、嘘の債権者一覧表などを出すことも許されません。

(8)家計簿など財産の状況に関する書類を偽造したりすること
債務整理手続きを行う場合、家計の状況をみることになりますが、財産の状況に関する帳簿や書類などに嘘の記載をすることは許されません。

(9)そのほか
裁判所や破産管財人の調査に対して協力をせず、説明を求められても説明に答えなかったり、嘘の説明をしたりすることもできません。

3 自己破産手続き中に行なってはならないことを行なった場合にはどうなる?

先ほど説明したような行為は、いわゆる免責不許可事由というものです。これらの行為をおこなった場合には、破産の申し立てをしたとしても、債権者に対する義務(お金を返す義務)を免れることができないこともあります。

そのため、上記行為はしないようにしましょう。
嘘とは言わなくても、事実関係について報告を失念していた場合も、速やかに報告することが必要になりますので、万が一失念していた場合には、すぐに報告をしましょう。

4 自己破産手続き中に日常生活で制限されることとは

破産手続き中は、裁判所の許可がない限り、居住地を離れることはできません。
また、管財人が選任された場合には、郵便物はすべて管財人に転送されます。

そのほか、仕事によっては資格制限がある仕事もありますので、資格制限がある仕事の場合には、破産手続き中はその仕事を行うことができないかもしれません。

5 まとめ

自己破産手続きは、経済的な再生をするために、債権者にお金を返さなくても良いという効果を生じさせるものです。

本来であれば返済すべきものを返済せずに許してもらうものですから、誠実に対応をすることが必要となってきます。

嘘をつくことはもちろんいけませんし、友人や親戚だけにはお金を返済しようとすることは、ほかの債権者を害することになってしまいますので、行なってはいけませんし、行なった場合には、お金を返済するという責任を免れることができず、全額の返済をしなければならないということになってしまいます。

誠実に対応をし、きちんと法的にも破産を行うことで、返済ができなくなってしまった状態を許してもらうということが必要になると思います。

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■この記事を監修した弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表・弁護士 森田 茂夫
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