別居期間の長さは、離婚原因が認められるか否かの1つの指標と考えられております。
このページは、「なるべく早く離婚したいのだが、何年間別居すればいいのか?」「別居するときに気を付けるべきことは?」などのお悩みを抱えている方へ、専門家が解説する内容となっております。

離婚原因


まず、「別居をしているという事実が離婚原因になるかどうか?」について、軽くご説明します。

裁判上の離婚の場合、以下の理由がないと離婚が成立されません。
1 配偶者に不貞な行為があったとき
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき
3 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

別居の事実は、上記の離婚原因のうち、「5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」との関係で重要な要素になると考えられます。

離婚原因が認められるためには、何年別居すればいいのか?


先ほどご説明した「5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」が認められるために、どのくらいの別居期間が必要なのかについては、相場として5年~10年と考えられております。

また、一般的に、同居期間と比べて別居期間が長い場合、離婚請求が認められやすい傾向にあります。

例えば、結婚年数が10年で別居期間が5年である夫婦の場合と、結婚年数が15年で別居期間が7年である夫婦の場合と比較した場合、前者の方が、同居期間と比べて別居期間が長いため、離婚請求が認められやすい傾向にあります。

もっとも、ほかの事情(例えば、一方配偶者による不倫・暴力など)がある場合、離婚が認められるために必要な別居期間が短くなることも少なからずあります。

「家庭内別居」や「単身赴任」は、別居にあたるのか?

家庭内別居

完全に夫婦が別々の家で生活をし、その期間が相当長期にわたる場合には、夫婦関係が破綻していると認められやすい傾向にあります。

他方で、家庭内別居は同じ家の中で生活していることから、夫婦関係が破綻しているとは認定されにくい傾向にあります。

単身赴任

単身赴任は、夫婦関係の悪化を理由とする別居ではなく、双方が同意の上で別々に住んでいるに過ぎないと考えられますので、「別居」にはあたらないと考えられています。

もっとも、家庭内別居・単身赴任の状態であったとしても、ほかの離婚原因(先ほどご説明した1~4の事実)がある場合、婚姻関係が破綻していると認められる可能性がございます。

過去の裁判例紹介


以下では、実際の裁判例を踏まえて、離婚原因が認められるために必要な別居期間等について説明いたします。

1 平成17年5月13日 東京地方裁判所判決

上記判決では、婚姻期間が約9年、別居期間が約6年の事案において、離婚原因があると認められました。

離婚原因があると認められた要因として、以下の事情が挙げられておりました。
・日常的に夫婦げんかがあったこと
・原告の母が来客の前で、「子どもたちが金婚式の計画をしてくれている」と発言し、被告
が原告に対して、「被告には予めこれについて知らされていなかった」と非難したことから、夫婦関係が一気に悪化した
こと

上記事案は、夫婦双方に婚姻関係破綻の有責性があるとは判断されず、別居期間の長さを理由に婚姻関係破綻していると判断されました。

2 平成30年6月20日 東京家庭裁判所判決

上記判決は、婚姻期間が約25年、別居期間が約7年の事案において、下記の事情も踏まえて、離婚原因が認められました。

・原告の離婚の意思が強固であること
・被告は、以前に提起された離婚訴訟において、原告が婚姻を継続できないと考える原因について知ることができたのだから、原告の訴えに耳を傾けて歩み寄る姿勢を示すことも可能であったと思われるのに、原告が離婚訴訟を提起する理由が分からないとの態度を変えていないこと

3 平成16年5月28日 東京地裁判決

上記判決では、婚姻期間が約14年、別居期間が約2年弱の事案において、下記の事情も踏まえて、離婚原因が認められました。

・一方配偶者(被告)が他方配偶者(原告)に対して、何度も身体的暴力を加えていた
・被告が子供に対して、両足首を持って逆さずりや、夜家の外へ閉め出すといった暴力を加えていた
こと

同居期間と別居期間同居期間の比較するに、前者の方が長期間に及ぶ事案ではあるものの、配偶者による暴力行為の要素等を総合的に考慮し、離婚原因があると判断されました。

4 平成15年8月27日 東京地裁判決

上記判決では、婚姻期間が約13年、別居期間が約1年弱の事案において、下記の事情も踏まえて、離婚原因が認められました。

・長男が急性リンパ性白血病にかかり入院し、三男も重い病気で入院となり、原告が、長男が入院する病院と三男が入院する病院を往復する毎日であった。三男は病気により死亡し、そのショックから被告は1人で香港に里帰りして原告のそばにいなかったこと

・原告は,避妊の失敗により妊娠し,中絶手術を受けたが,被告からはいたわりの言葉がなかったこと

・原告が病気の子の看病を含む育児や家事で多忙を極めていたにもかかわらず,被告から十分な協力を受けられなかったために,被告との夫婦共同生活に失望し,別居を望んでいたこと

別居期間が短いものの、原告が、別居以前から離婚したいという意思を伝え続け関係の修復をするつもりがないということが明らかであること等を理由に、裁判所は婚姻関係破綻していると判断されました。

有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、別居期間は何年必要か?

そもそも、有責配偶者(例えば、不倫が原因で夫婦関係を壊した配偶者)からの離婚請求が認められるのか?

昭和20年代までは、有責配偶者からの離婚請求は認められない傾向にありましたが、昭和62年の最高裁判所の判決により、その傾向は大きく変更されました。

具体的には、
①別居期間が長いこと
②夫婦間に未成熟の子がいないこと
③妻が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれないこと
とった事情がある場合に有責配偶者からの離婚請求が認められると判断されました。

過去の裁判例


以下では、実際の裁判例を踏まえて、有責配偶者からの離婚請求が認められるために必要な別居期間等についてご説明いたします。

1 平成14年6月26日 東京高裁判決

上記判決は、婚姻期間が約28年、別居期間が約6年の事案において、下記の事情も踏まえて、離婚原因が認められました。

・相手方配偶者婚姻関係破綻についての原因の一端があったこと(主に異性との交遊あり)
・相手方配偶者にも一定の収入があること
・有責配偶者からの離婚に伴う給付があったこと(具体的には、有責配偶者が住んでいる自宅を他方配偶者に分与し、同建物の残ローンを有責配偶者が支払い続けるという給付)

2 平成29年3月9日 横浜家裁判決

上記判決は、婚姻期間が約4年、別居期間が約2年8か月の事案において、下記の事情も踏まえて、離婚原因が認められました。

・同居期間が約1年9か月と、別居期間と比較して短いこと
・夫婦の間に子がいないこと
・有責配偶者が以前から婚姻費用として月10万円を支払っていたことに加え、320万円を支払うと申し出ていること
・当時、有責配偶者が33歳で、他方配偶者が32歳であったこと

本件判決は、有責配偶者からの経済的給付が十分に行われていること等が評価され、離婚原因が認められたと判断されております。

もっとも、有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかは、事案ごとの具体的な状況が大きく関わってくるといえますので、上記の裁判例は参考にすぎないことをご理解ください。

別居後の生活費は相手方に請求できるの?


別居してから離婚成立するまでの間の生活費について心配し、なかなか別居に踏み出せない方もいらっしゃるかと思われます。

婚姻費用とは婚姻共同生活を送るうえで必要となる一切の費用をいいます(民法760条参照)。
したがって、別居~離婚成立までの間、一方配偶者が他方配偶者に対して、婚姻費用を支払うよう請求することができます。

婚姻費用の額は、子供の有無・子供の年齢・人数を踏まえて、夫婦それぞれの収入を比較して、算定されます。

現在の実務では、「改定標準算定方式・算定表(令和元年版)」を参考にして婚姻費用を算定する方法が広く用いられております。
ネットでも「婚姻費用 算定表」と検索していただけると、婚姻費用の算定表が出てきますので、ご参考にしていただければと思います。

まとめ

このように別居期間の長さは離婚原因が認められるかどうかの1つの要素になりますが、実際には離婚原因が認められるかどうかは、事案ごとの具体的な状況が大きく関わってくるといえます。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 安田 伸一朗
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