試用期間中又は試用期間満了後に解雇通知書が届いた!解雇は有効か? 労働専門チーム弁護士が解説

会社に就職すると、最初の数か月間は「試用期間」と会社から言われることもよくあると思います。
ではこの試用期間中に、あるいは試用期間満了後に解雇され、解雇通知書を受け取った場合、それは受け入れなければならないのでしょうか。
以下のコラムでは、試用期間中あるいは試用期間満了後に解雇が許さるのかどうかについて解説していきます。

試用期間中又は試用期間満了後の解雇

試用期間中又は試用期間満了後の解雇

結論から申し上げると、試用期間中あるいは試用期間満了後でも自由に解雇はできません。

試用期間とは

試用期間とは

試用期間とは、会社の従業員として相応しいかどうかを見極めるための期間で、試用期間を設けることは労働基準法でも認められています。
しかし、「お試し期間」というわけではありません。
そのため、使用者が労働者を自由に解雇できるというわけではありません。試用期間であっても、労働契約自体は、期間の定めのない雇用契約を締結した労働者であることに変わりはありません。

試用期間中は労働契約の“解約権”が留保されている

試用期間中は労働契約の“解約権”が留保されている

一方で、試用期間中は、使用者が、会社の従業員として相応しくないことを理由とした労働契約の“解約権”を持っている状態ではあります。
例えば、勤務態度が非常に悪く、とても社員として雇い続けることはできないなどと認められるような大きな事情があれば、使用者が解雇できる可能性はあります。

どのような理由があれば解雇できるか

どのような理由があれば解雇できるか

しかし、やはり解雇は無制限にできるわけではなく、単に使用者が気に入らないとか、少々仕事が遅い等の理由で、解雇できるわけではありません。

解雇の概要

解雇は、大きく分けて①普通解雇と②懲戒解雇の2つに分けられます。

① 普通解雇

普通解雇とは、従業員の能力不足や協調性の欠如、会社の経営悪化、就業不能など、社員の労務提供が不十分な場合に行われる解雇をいい、懲戒解雇以外の解雇をさします。
普通解雇を行うには、厳しい要件を満たす必要があります。そのため、使用者側にとって非常に高いハードルが課されています。
なお、普通解雇のうち、人員の整理を目的として行われる解雇は整理解雇と呼ばれ、これも普通解雇の一種です。

② 懲戒解雇

これに対して懲戒解雇は、従業員が就業規則などで定められた懲戒事由に該当することを理由に、懲戒処分として解雇を行うことをいいます。秩序に違反した社員に対して行う制裁的意味合いを持つ解雇です。

解雇が適法といえる場合

解雇が適法といえる場合

解雇の合理性・社会的相当性

解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権を濫用したものとして無効とされます(労働基準法第18条2項)。
すなわち、解雇が有効とされるためには、解雇権の濫用とされないだけの①合理的な理由②社会的相当性が必要なのです。

解雇の予告

解雇の予告も必要です。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならないとされています。
また、もし30日前に予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないとされています。

以上のことは、試用期間中の労働者にも当てはまります。
ただし、雇い入れから14日間は、解雇予告を行わず解雇できるとされています(その場合解雇予告手当も不要です)ので、その点は注意が必要です。

試用期間中や試用期間満了後の解雇でよくある具体例

試用期間中や試用期間満了後の解雇でよくある具体例

試用期間中や試用期間満了後に解雇されるケースとしては、以下のようなものがあります。
以下のようなケースでは、簡単に解雇はできないものの、試用期間を過ぎた一般の労働者と比べれば、より程度が軽い場合でも解雇が認められることがあります。

能力不足など

・出退勤状況が不良である
・勤務成績が極端に悪い
・勤務態度が不良である
・上司の指示や命令に従わず協調性がない
・健康状態の不良

経歴詐称など

入社試験や面接等選考時において、事実を隠蔽したり、虚偽の申告をしたりした場合です。多いのは経歴や学歴の詐称です。

会社の経営悪化など

会社の経営が悪化し、整理解雇をしなければならなくなった等の場合です。
また地震や洪水被害等、天災事変やその他やむを得ない事情のために事業の継続が不可能となった場合も考えられます。

突然解雇されたら、まず「解雇通知書」と「解雇理由証明書」の交付を求める!

会社から解雇を宣告された、解雇通知書が届いた場合にはまず、「解雇通知書」と「解雇理由証明書」の交付を求めましょう。

解雇通知書

解雇通知書とは、会社が労働者に対し、解雇の意思表示を通知する書面のことです。
もし仮に後で会社側が「労働者側の都合で自己都合退職した、合意解約した」などと主張してきたとしても、この通知書があれば、その言い分を否定し、解雇であることを主張できます。

解雇理由証明書

解雇理由証明書とは、解雇理由(解雇事由)について具体的に記載された書面のことです。
労働基準法22条1項に基づき、労働者から請求された場合に、会社が遅滞なく交付しなければならないものです。

なぜ「解雇通知書」と「解雇理由証明書」の交付を求めるのか?

後々重要な証拠となる

後々重要な証拠となる

解雇をめぐって労働者と会社側とで紛争となり、話し合いや交渉が必要となった場合や労働審判、訴訟へと発展してしまった場合に、会社側が解雇の有効性を主張するために、当初説明していた解雇理由とは別の理由を追加で主張してくることがあります。
そこで、早期に解雇通知書、解雇理由証明書を取得しておけば、会社は、当該解雇理由証明書に記載された理由以外の主張ができなくなりますので、後付けの主張を許さず会社側の言い分を確定させることができるのです。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
監修 代表弁護士 森田 茂夫
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