家族が交通事故に遭ったら?被害者家族に固有の慰謝料請求が認められるケース

こんにちは。弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士 渡邉千晃です。

不幸にも家族が交通事故に遭ってしまった場合、本人が損害を被るのは当然ですが、その近親者も、精神的に苦しめられてしまいます。

事故を起こした原因が相手方にあった場合には、そのような精神的な苦痛について、相手方に責任を追及したいと考えるのも当然だと思います。

では、交通事故の当事者ではない近親者も、相手方に対して、何か請求できるものがあるのでしょうか?

この記事では、家族が交通事故に遭ってしまった場合に、事故の相手方に対し、近親者がどのようなことを請求できるのかといった点をわかりやすく解説していきます。

近親者固有の慰謝料請求権とは

近親者固有の慰謝料請求権とは

まず、慰謝料とは、相手方の行為により、多大な精神的苦痛を受けた場合に、それを慰謝するものとして、相手方に請求できる金額のことをいいます。

交通事故の被害者である本人は、入通院慰謝料や後遺症慰謝料などを請求することができます。

そして、交通事故の被害者が死亡してしまったような場合などには、その被害者の近親者にも、多大な精神的苦痛が生じることとなります。

したがって、民法上、精神的な苦痛を受けた近親者についても、近親者固有の慰謝料請求権が認められているのです(民法711条)。

近親者とはどこからどこまでの範囲か

近親者とはどこからどこまでの範囲か

原則的な3つ場合

では、固有の慰謝料請求権が認められる近親者とは、具体的に誰のことをいうのでしょうか。

精神的な苦痛を受けた親族であれば誰でも請求することができるわけではありません。

民法上認められている範囲は、以下の3つの場合です。

・父母
・配偶者(夫または妻)
・子

なお、原則的に固有の慰謝料請求権が認められている者は、上記の通りですが、特別な身分関係にある者については、父母、配偶者、子でなくとも、例外的に、これが認められる場合もあります。

例外的な場合

特別な身分関係にある者については、例外的に、固有の慰謝料請求権が認められる場合があります。

例えば、以下のような場合です。

⑴ 唯一の身内が兄弟だけである場合
⑵ 内縁関係だが、同居・同一家計であるため、実質的に夫婦としてみなされる場合

このような場合には、民法で定められた立場の者と「実質的に同視」することが出来る身分にあるといえるため、裁判上、固有の慰謝料請求が認められています。

近親者に固有の慰謝料が発生する場合とは

近親者に固有の慰謝料が発生する場合とは

民法上、近親者に固有の慰謝料が発生する場合とは、「生命を侵害した」場合とされています。

すなわち、原則としては、交通事故の被害者が死亡した場合にしか、近親者固有の慰謝料請求権は発生しないということです。

しかしながら、交通事故によって寝たきりの状態になってしまった場合など、時には死亡にも匹敵するほどの損害を被ることもあると思います。

したがって、「死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛を受けたと認められる」ほどの精神的苦痛を近親者が受けた場合には、被害者が死亡しなかった場合にも、固有の慰謝料請求が認められることがあります。

具体的には、交通事故の被害者が高次脳機能障害で介護を要する後遺障害1級、介護を要する後遺障害2級、後遺障害3級を受けた場合には、近親者の固有の慰謝料請求を認める判断がなされる場合が多いといえます。

他方、後遺障害4級以下の場合には、判断が分かれています。

近親者が請求できる慰謝料額とは

近親者が請求できる慰謝料額とは

交通事故の被害者本人の慰謝料については、自賠責基準や任意保険基準、弁護士基準で、賠償基準が定められています。

例えば、被害者が死亡した場合、自賠責基準だと被害者本人分の死亡慰謝料は400万円、弁護士基準だとおよそ2000万円~になっています。

これに対し、近親者の固有の慰謝料請求については、明確な相場・基準がありません。

基本的には、加害者側との交渉・裁判の中で、金額が定まることになるでしょう。

まとめ

まとめ

家族が交通事故に遭ってしまった場合に、その被害者の近親者が慰謝料請求できる場合について、解説しました。

法律上は、近親者の範囲や、死亡した場合のみなど、固有の慰謝料請求権が認められる範囲が限定されていますが、特別な身分関係にある場合や、死亡にも比肩するほどの損害を被った場合などには、固有の慰謝料請求権が認められる範囲が拡大して解釈される傾向にあります。

固有の慰謝料請求が認められるかどうかについて、判断が難しい場合には、弁護士に相談することをおすすめいたします。

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