自己破産をすると、勤めている会社を解雇されるのではないかと心配される方がいらっしゃいます。
ただ、自己破産について正しく理解すれば、そのような心配も解消されることがほとんどです。
このコラムでは、自己破産と仕事の関係をわかりやすく解説します。
1 自己破産と仕事の関係
(1)自己破産すると会社から解雇される?
自己破産をすると解雇されるのではないかと心配される方がいらっしゃいますが、自己破産だけを理由として解雇されることはないと言って良いでしょう。
会社が従業員を適法かつ有効に解雇する場合、解雇事由があることに加え、解雇に客観的にみて合理的な理由があり、かつ、解雇が社会通念上相当である必要があります。
この要件を満たさなければ、解雇は違法かつ無効となるのです。
通常、解雇事由として認められるのは、勤務成績や勤務態度の不良・規律違反などであり、自己破産をしたことが解雇事由とされていることはありません。
そのため、万が一、自己破産をしたことだけを理由に解雇された場合は、解雇は違法かつ無効である可能性があると考えて良いでしょう。
(2)自己破産すると仕事上の不利益があるか?
自己破産したからといって、会社が従業員に対してそれのみを理由として懲戒処分などを行うことはできません。
懲戒事由がなければ懲戒処分を適法かつ有効に行うことはできないからです。
懲戒処分だけでなく、配置転換などの人事異動についても、自己破産することのみを理由として行うことは違法かつ無効とされる可能性があります。
2 自己破産することが会社に知られるきっかけ
自己破産をすることは、通常、自分から言わない限り、他人に知られることはありません。
ただ、以下のような場合は、会社に自己破産をすることが知られることがありますので注意が必要です。
(1)給与の差押えがされる場合
自己破産をする中で、債権者が給与の差押えをしてくることがあります。
この場合、給与差押えに関する裁判所からの書面が会社に送られることになり、会社に自己破産の事実を知られる可能性があります。
(2)会社から借入をしている場合
自己破産をする場合、受任通知(借入の支払いができず破産手続をとる旨を知らせる通知)を全ての債権者に送ることになります。
自己破産をする場合、すべての債権者を漏れなく手続にのせる必要があります。
そのため、会社から借入をしている場合、会社に受任通知を送り、自破産手続にのせる必要があるため、会社に自己破産することを知られることになります。
(3)会社に退職金の資料を出してもらう場合
勤めている会社に退職金制度がある場合、退職金の存在と金額がわかる資料を裁判所に提出する必要があります。
通常は、退職金規定や退職金計算書といった資料を用意する必要があり、それらの資料を会社に発行してもらう際に、会社に自己破産することを知られる可能性はあります。
また、退職金制度がない場合も、退職金制度がないことがわかる資料(就業規則や賃金規定など)が必要となりますので、同様に、会社に依頼することにより自己破産することを知られる可能性はあります。
(4)職業制限のある職業に就いている場合
自己破産をすると就けなくなる職業があります。
具体的には、弁護士や司法書士などの士業、警備員や生命保険募集人などです。
これらの職業は、社会的信用が必要とされ、金銭の管理をする仕事であるため、職業制限が設けられているのです。
もっとも、これらの仕事についても、免責許可決定が出ると、復権といって、再びこれらの仕事に就くことができます。
つまり、職業制限は一時的なものであり、ずっとこれらの職業に就くことができないものではないのです。
ただ、復権するまでは、これらの職業に就くことはできないので、もし自己破産をする方がこれらの仕事に就いていた場合、復権するまではこれらの業務を適法に行うことはできません。
もし、自己破産のことを会社に秘密にして仕事を行った場合、法律違反として損害賠償責任を負うリスクなどがありますので、会社には正直に自己破産のことを申告する必要があります。
その場合、会社には自己破産をすることを知られることになりますが、これはやむを得ないことといえるでしょう。
3 おわりに
以上見てきたように、自己破産をするからといって、会社との関係で直ちに不利益が生じるものではありません。
むしろ、会社との関係では、自己破産は仕事に影響しないことの方が多いのです。
そのため、借金でお困りの方は、お一人で悩まず、まずは弁護士にご相談ください。