高齢化社会の進展や、在宅介護への意識の高まりから、二世帯住宅が増えている印象です。
しかし、二世帯住宅が関係する相続について、ご相談が寄せられているのも事実です。
そこで、さいたま市大宮区で30年以上の歴史を持ち、「相続専門チーム」を擁する弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が、二世帯住宅と相続について解説を行います。
二世帯住宅とは
二世帯住宅とは
二世帯住宅について、法律上の定義はありません。一般には、親世代と子世代(孫世代を含む)が同居する住宅、ということになるでしょうか。
しかし、二世帯住宅は建築物ですので、「建築基準法」という法律の適用があります。
建築基準法に基づいて考えた場合、二世帯住宅が該当する可能性があるのは、
①一戸建ての住宅
②長屋
③共同住宅
のいずれかとなると思われます。
建築基準法
(長屋又は共同住宅の各戸の界壁) 第三十条 長屋又は共同住宅の各戸の界壁は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。 一 その構造が、隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために界壁に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。 二 小屋裏又は天井裏に達するものであること。 2 前項第二号の規定は、長屋又は共同住宅の天井の構造が、隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために天井に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、適用しない。 |
一戸建ての建物、長屋、共同住宅の違い
建築基準法施行令別紙、建築物用途区分コード記号表に基づく用途種別概要によれば、
①一戸建ての建物
1戸の住宅には、専用の居住室・台所・便所及び出入口を有していることが必要(浴室の有無は問わない)。
住戸内で行き来できる、多世帯住宅を含む。
②長屋
2以上の住戸※2又は住室※3があるもので、廊下・階段等の共用部分がない施設。
③共同住宅
2以上の住戸※2又は住室※3があるもので、廊下・階段等の共用部分がある施設。
とされています。
二世帯住宅の類型
ハウスメーカーなどのホームページによれば、二世帯住宅の類型としては、
①完全に世帯が分離しているもの
②一部の施設を共用しているもの
③完全に一つの住宅に同居しているもの
に分かれるようです。
二世帯住宅が相続で問題となりうる場合
被相続人の名義の土地・建物の場合
例えば、親甲名義の土地上に、親甲名義で建てた二世帯住宅に、親甲と子Aの家族が居住していたとします。
親甲には、子Aの他に子Bがおり、相続人が二人であるとします。
親甲が死亡した場合、土地・建物は被相続人である甲の名義ですから、相続財産を構成し、遺産分割の対象になるのが原則となります。
子Bからすれば、相続財産に該当すると主張するでしょうから、現に居住している子Aと対立が生じやすいと言えます。
更にこのような場合、子Aが資金を出していたり、ローンを負担していたり、連帯債務者であったりする場合もあるので、そのような場合にはより複雑になります。
被相続人名義の土地上に、相続人の一人が建物を建てた場合
実務上、このケースのような相談はしばしば受けます。
例えば、親甲名義の土地上に、子A名義で建てた二世帯住宅に、親甲と子Aの家族が居住していたとします。
親甲には、子Aの他に子Bがおり、相続人が二人であるとします。
親甲が死亡した場合、土地は被相続人である甲の名義ですから、相続財産を構成し、遺産分割の対象になるのが原則となります。
子Bからすれば、相続財産に該当すると主張するでしょうから、現に居住している子Aと対立が生じやすいと言えます。
また、建物建築に当たり、親甲が子Aに対し、資金を援助していたり、連帯債務者であったりする場合もあるため、やはり問題は複雑になります。
相続人の一人の名義の土地上に、被相続人名義の建物を建てた場合
例えば、子A名義の土地上に、親甲名義で建てた二世帯住宅に、親甲と子Aの家族が居住していたとします。
親甲には、子Aの他に子Bがおり、相続人が二人であるとします。
親甲が死亡した場合、建物は被相続人である甲の名義ですから、相続財産を構成し、遺産分割の対象になるのが原則となります。
子Bからすれば、相続財産に該当すると主張するでしょうから、土地を所有し現に居住している子Aと対立が生じやすいと言えます。
また、土地取得に当たり、親甲が子Aに対し、資金を援助していたり、連帯債務者であったりする場合もあるほか、建物建築に際して子Aが資金を出していたり、ローンを負担していたり、連帯債務者であったりする場合もあるので、そのような場合にはより複雑になります。
被相続人と相続人の一人の共有名義の土地・建物の場合
例えば、親甲と子Aとが、土地を共有名義で購入し、その土地上にやはり共有名義で建物を建てた二世帯住宅に、親甲と子Aの家族が居住していたとします。
親甲には、子Aの他に子Bがおり、相続人が二人であるとします。
親甲が死亡した場合、土地・建物は共有で、被相続人である甲の持分もありますから、相続財産を構成し、遺産分割の対象になるのが原則となります。
子Bからすれば、相続財産に該当すると主張するでしょうから、現に居住している子Aと対立が生じやすいと言えます。
また、土地・建物の取得に当たり、親甲が子Aに対し、資金を援助していたり、連帯債務者であったりする場合もあるほか、子Aが資金を出していたり、ローンを負担していたり、連帯債務者であったりする場合もあるので、そのような場合にはより複雑になります。
相続人の一人の名義の土地・建物の場合
例えば、子A名義の土地上に、甲A名義で建てた二世帯住宅に、親甲と子Aの家族が居住していたとします。
親甲には、子Aの他に子Bがおり、相続人が二人であるとします。
この場合、不動産としては子Aのものですから、不動産は相続財産を構成せず、遺産分割の対象にならないのが原則となります。
しかし、この場合で、親甲が資金を出していたり、ローンを負担していたり、連帯債務者であったりする場合もあるので、そのような場合には、子Bとしては、子Aに対して特別受益の主張をするなどのケースが考えられます。
また、一般には採用されにくいのですが、子Aから、親甲の世話をしたとして寄与分の主張がなされるケースもあります。
二世帯住宅をどう分割するか
二世帯住宅が遺産分割の対象になってしまった場合には、遺産分割に際して何らかの解決策を考えざるを得ません。
不動産の分割の方法としては、
①現物分割
②換価分割
③代償分割
の3つの方法があります。
上記の例でいえば、
①現物分割は、実際に不動産を子Aと子Bで分けるというものです。
しかし、現に子Aの家族が生活している不動産を、実際に分割することが難しいことは容易に想像できます。
②換価分割は、不動産を売却してその代金を子Aと子Bとで分けるというものです。
しかし、そもそも二世帯住宅は子Aが居住し続けることを前提に建築・購入されることが一般ですから、現に子Aの家族が居住・生活している不動産を売却することは現実的ではありません。
③代償分割は、不動産を子Aが取得する代わりに、その不動産の価値を算出し、法定相続分など子Bが取得すべき分を、子Aが子Bに支払う、というものです。
現に子Aの家族が居住・生活している不動産ですので、この方法が現実的ということになりますが、不動産の評価で合意できないという場合や、子Aが代償金(子Bに支払う金員)を用意できない、という問題が生じる可能性があります。
二世帯住宅は、生前の対策が重要
二世帯住宅が関係する相続には、上記のような問題が生じるため、生前、さらに言えば、建築・購入前の対策が重要です。
二世帯住宅が関係する相続とグリーンリーフ法律事務所
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴
開設以来数多くの相続に関する案件・相談に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、相続に精通した弁護士が数多く在籍し、また、相続専門チームも設置しています。
このように、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・相続専門チームの弁護士は、相続案件や相続に関する法律相談を日々研究しておりますので、二世帯住宅が関係する相続問題に関して、自信を持って対応できます。
なお、費用が気になる方は、上記HPもご参照ください。
最後に
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、当コラム執筆時点で17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
ぜひ、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所にご相談ください。