以前、当コラムで「フォークリフトによる労災事故」についてご紹介しました。

今回は、運送業における労災事故について、フォークリフトが原因となるものを中心に、さいたま市大宮区で30年以上の歴史を持ち、「労災専門チーム」を擁する弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が解説を行います。

運送業とは

運送業とは

運送業とは、法的には何を指すのでしょうか。

広い意味では、旅客と貨物を輸送する業をすべて指すと解されており、旅客輸送(旅客運送)と貨物輸送(貨物運送)ということになります。

今回は、このうち、自動車による貨物輸送(貨物運送)、いわゆるトラック輸送に主眼をおいて説明をしていきます。

貨物輸送(貨物運送)業

貨物輸送(貨物運送)業

貨物運送業

運送業のうち貨物運送業は、貨物自動車運送事業法という法律で規制されています。

そして、貨物自動車運送事業法では、

・一般貨物自動車運送事業

・特定貨物自動車運送事業

・貨物軽自動車運送事業

の3種類が規定されています。

貨物自動車運送事業法

(定義)
第二条 この法律において「貨物自動車運送事業」とは、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業及び貨物軽自動車運送事業をいう。

2 この法律において「一般貨物自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。次項及び第七項において同じ。)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものをいう。

3 この法律において「特定貨物自動車運送事業」とは、特定の者の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業をいう。

4 この法律において「貨物軽自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る。)を使用して貨物を運送する事業をいう。

5 この法律において「自動車」とは、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項の自動車をいう。

6 この法律において「特別積合せ貨物運送」とは、一般貨物自動車運送事業として行う運送のうち、営業所その他の事業場(以下この項、第四条第二項及び第六条第四号において単に「事業場」という。)において集貨された貨物の仕分を行い、集貨された貨物を積み合わせて他の事業場に運送し、当該他の事業場において運送された貨物の配達に必要な仕分を行うものであって、これらの事業場の間における当該積合せ貨物の運送を定期的に行うものをいう。

7 この法律において「貨物自動車利用運送」とは、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業を経営する者が他の一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業を経営する者の行う運送(自動車を使用して行う貨物の運送に係るものに限る。)を利用してする貨物の運送をいう。

運送事業中の怪我を法律的に考えた場合

運送事業中の怪我を法律的に考えた場合

個人事業主ではなく、運送事業に従事している労働者がけがをした場合を考えてみましょう。この場合、ケガについて、どのように法的に検討することができるでしょうか。

労災事故

従業員=労働者が、業務中にけがをした場合には、労災事故に該当します。

労災事故は、労働災害とも言い、労働者が労務に従事したことによってケガや病気を負ったり、死亡したりする事故を指します。

この労働災害は、業務災害と通勤災害の2種類で構成されます。

業務災害とは、業務から生じた災害、すなわち労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下において労働を提供する過程で、業務に起因して発生した災害をいいます。

ただし、例えば、業務時間内であっても、パチンコ店に立ち寄りパチンコ店内で転んだ、等の場合まで労働災害として保護すること必要はありません。

そこで、業務災害であると認められるための要件が設定されています。

その要件とは、①「業務遂行性」と②「業務起因性」の2つです。

詳細及び通勤災害の説明については、

をご参照ください。

安全配慮義務違反

また、従業員=労働者が業務中にけがをした場合には、雇用者=会社が労働者に対して配慮すべき様々な安全を配慮しなかった、というケースが考えられます。

このように、会社が労働者に対して配慮すべき安全を配慮しなかったことを、安全配慮義務違反と言います。

安全配慮義務違反にもとづき、会社に対して賠償を請求し、その被害の補償を求めるということも考えられます。

運送業の労災事故はどのような場合に発生するか。

運送業の労災事故はどのような場合に発生するか。

運送業といえば、トラックの運転手を思い浮かべる方が多いと思います。

そのため、交通事故による労災事故を想定される方が多いのではないでしょうか。

しかし、厚生労働省の労働災害統計によれば、道路貨物運送事業における労災事故は、いわゆる交通事故よりも、墜落・転落や激突等の方が多いとされています。

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/anst00.html

荷物の搬入出時の事故事例

荷物の搬入出時の事故事例

運送業の中でも、トラック運転手は、荷物を搬入出する場合もあります。

このような場合にも、事故が発生する可能性があり、このうち、フォークリフトが関係する場合を想定してみます。

墜落・転落

高所やフォークリフトから墜落・転落するものです。

・倉庫などで利用されるフォークリフトで荷を高い場所までもっていく際、本来乗ってはいけない場所にそのまま人が乗ってしまい、そこから転落する

・高所での荷積み作業中に転落する

激突

荷積み作業中に、フォークリフトから激突されるというものです。

・他の従業員のフォークリフトの運転ミスにより、フォークリフトに激突される

・視界不良下での作業中、フォークリフトに激突される

・自身でのフォークリフトの運転中、乱雑な床置き物件や飛び出してきた人を回避するために回避操作を行い、壁面に激突する

労災申請の流れ

労災申請の流れ

不幸にも労災事故に遭難してしまった場合、まずは労災を申請することが必要です。

 

労災申請(認定)の流れ

労災事故に遭ってしまった場合には、概ね、次のような流れで解決へ向かっていくことになります。

① 治療

② 症状固定

③ 後遺障害認定

④ 損害賠償請求(勤務先を相手方)

⑤ 話し合いでの解決が難しい場合には、労働審判申し立てや訴訟提起

⑥ 和解、判決など

⑦ 賠償金の受け取り

⑧ 解決

労災保険では十分な補償は受け取ることができない場合があります。

労災保険で受けることができる主な給付の種類としては以下のものがあります。

①休業(補償)給付

労働災害によって仕事を休んだときに受け取ることのできる、給付基礎日額の60%相当に相当する金額です。

② 療養(補償)給付

病院で治療費などを負担することなく治療を受けられる給付です。

治療費、入院費用、看護料など、療養のために通常必要なものを指します。

③ 障害(補償)給付

障害(補償)給付は、労災によって病気やケガが治癒の状態に至ったのちにも障害が残ったときに受け取ることのできる、その障害等級に応じた年金または一時金です。

④ 遺族(補償)給付

遺族(補償)給付は、遺族(補償)年金や遺族(補償)一時金等からなる給付金です。

⑤ 傷病(補償)給付

労災により病気やケガをして、療養開始後1年6か月を経過しても病気やケガが治癒しない場合に受け取ることのできる、傷病等級に応じた傷病(補償)年金等です。

 詳細は、

をご参照ください。

後遺障害が残った場合当事務所ができること

後遺障害が残った場合当事務所ができること

不幸にして後遺障害が残ってしまった場合、当事務所は、労災被害者のサポートを全力で行います。

医師への対応アドバイス

後遺障害が残ってしまった場合、まずは、どの程度の後遺障害が認定されるか、ということがポイントとなります。

そして、後遺障害の認定を受けるためには医師からの診断書が必須になりますので、医師への対応などのアドバイス等を行う必要があります。

当事務所は、労災事故、交通事故において後遺障害認定の実績を多数有しておりますので、適切なアドバイスを行うことができると考えています。

労災申請のサポート

労災申請、特に後遺障害申請には、後遺障害診断書の他に、様々な書類が必要になります。

そうした書類や、また、適切な後遺障害等級に認定されるよう、家庭での状況や業務への影響などをまとめた書類を作成するなどのサポートを行います。

当事務所は、労災事故、交通事故において後遺障害認定の実績を多数有しておりますので、適切なサポートを行うことができると考えています。

会社に損害賠償請求をするという選択肢

会社に損害賠償請求をするという選択肢

これまで見てきたとおり、労災事故が発生した場合には、会社の過失の有無にかかわらず労働者は労災保険からの給付を受けることができます。

しかし、労災保険は一定額を労働者に給付するもので、最低限の補償給付を行うものにすぎません。つまり、労災保険では給付されない労働者の損害があるのです。

この例としては、

・慰謝料(入・通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)

・事故前収入の100%分の休業補償

などが挙げられます。

 

こうした損害に関し、労災事故の発生について会社にも責任がある場合には、こうした損害を会社に対して行うことができる場合があります。

ただし、この請求を行うには、会社の「安全配慮義務」違反を主張・立証する必要があります。

こうの主張・立証には、事故内容を踏まえ、弁護士による法的な観点での主張や適切な証拠が必要になります。

当事務所は、交通事故、労災事故で安全配慮義務違反の主張・立証について実績を多数有しておりますので、会社への賠償請求についても自信をもって行うことができると考えています。

運送業での労災事故とグリーンリーフ法律事務所

運送業での労災事故とグリーンリーフ法律事務所

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来数多くの交通事故・労災を含む事故賠償に関する案件・相談に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、事故賠償に精通した弁護士が数多く在籍し、また、交通事故・労災専門チームも設置しています。

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・交通事故、労災専門チームの弁護士は、交通事故、労災や事故賠償に関する法律相談を日々研究しておりますので、交通事故、労災事件(フォークリフト労災事故)に関して、自信を持って対応できます。

上記HPもご参照ください。

最後に

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。

また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 野田 泰彦

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