いまや離婚は3組に1組の割合で起きており、夫婦関係の解消も、やむを得ないこともあるでしょう。ただ、子どもに関する問題や、財産に関する問題など、ただ離婚ができればよい、というだけでは足りないことも多いので、離婚に向き合う前に知っておいてほしい知識について説明します。
離婚問題、解決するまでに知っておきたいこと。弁護士に相談するに当たって。
離婚という選択肢について
2020年(令和2年)の婚姻件数は52万5490組、離婚件数は19万3251組となっており、単純計算でいえば3組に1組以上の割合で離婚していることになります。
離婚の方法としても昭和25年以降「協議離婚」の割合は昭和27年から90%前後であったものの、平成16年以降低下して80%台となり、令和2年には88.3%にとどまっています。協議で離婚できる割合は減りつつある、ということです。
離婚は、今や人生の選択肢のひとつであり、悩んだ結果、離婚に至る割合も低くありませんが、人生において大きな決断であるのは間違いがありません。
離婚の方法について
離婚の方法としては、上記のような協議離婚、つまり裁判所の手続を使わない話し合いによる方法が最も多いわけですが、そこで解決が出来なければ調停離婚、あるいは裁判離婚という裁判所の手続を経る方法を検討します。
協議離婚
当事者が話し合いで離婚をすることに合意してする離婚のことで、日本における離婚全体のうち9割弱は協議離婚で決まっています。この協議離婚の中には、弁護士に依頼して、代理人になってもらい、話し合い(交渉)で離婚を合意する場合も含まれています。
未成年の子がいる夫婦の場合、離婚に当たって親権者は必ず定めなければならず、親権について争いがある場合には協議離婚で解決するということが出来ません。
調停離婚のメリットとしては、「簡単で早い」ということ、単なる話し合いで裁判所への申立なども不要ですから、「費用がかからない」ということ、そして当事者が合意すればよいということから「離婚条件を柔軟に決めることができる」という点が挙げられます。
反対にデメリットとしては、単なる話し合いでの合意に過ぎないことから、決めた内容が守られなかったときに、すぐに「強制的な手続が取れない」という点が挙げられます。ただし、この点は合意内容を公正証書という書面にすることで、回避できる部分もあります。
調停離婚
調停という家庭裁判所での手続により離婚をするもので、夫婦関係調整(離婚)調停の申立てをして行う離婚のことです。
申立書や戸籍謄本等の必要書類を管轄の家庭裁判所に提出して申立てをしますが、調停ができるのは原則として相手方の住所地となるため、遠方の裁判所に申し立てなければならない場合もあります。
調停手続は、非公開の手続であって、申立人や相手方本人、そしてそれらの代理人弁護士以外は出席できないことになっています。弁護士を依頼している場合は、弁護士と一緒に調停手続に参加するので、特に「相手方の主張に応じるべきかどうか自分だけでは考えるのが大変だ」とか「DVなどの事情があって自分だけで手続を進めるのは不安だ」というケースなどでは、弁護士を調停の段階から就けているという人も少なくありません。
離婚を成立させる際には、申立人・相手方双方とも本人の出席が必要とされますが、電話会議やテレビ会議で協議は進め、合意の際には裁判官に「調停に代わる審判」という形で決めてもらう形にする場合もあります。
調停手続において離婚の合意できない場合(=調停不成立)は、裁判での離婚を目指すことになりますが、調停不成立となっても、自動的に裁判になるわけではありません。どうしても離婚したいという場合には、裁判を提起することになります。
調停離婚のメリットとしては、裁判所で決めた内容を「調停調書」という公的な書面にしてもらえるので、金銭などの給付約束などについて決めた内容が守られなかったときに強制的な手続が取れることが挙げられます。また、当事者が面と向かって直接話し合うのではなく、間に裁判所の調停委員が入ってくれるため、相手方とのコミュニケーションが上手くとれないという場合でも手続を進めることができます。話し合いで進めることは協議離婚と同様ですから、離婚条件を柔軟に決めることができるというメリットも同様です。
これに対して、デメリットとしては、裁判所での手続であるため、申立から第1回目の調停が行われるまでにある程度の時間がかかりますし、調停期日の都度、家庭裁判所へ出頭する手間がかかるという点は否定できません。さらに、あくまでも話し合いなので合意ができないと成立せず、離婚をするかしないか、離婚条件をどうするか、ということが絶対に白黒つけられる手続でもありません。
裁判離婚
裁判離婚とは、家庭裁判所に、離婚訴訟を提起して行う離婚のことで、日本では「調停前置主義」といって、原則として裁判を起こす前に調停をしていることが必要となっています。例外的に調停を経なくても裁判をすることが出来るケースとしては、相手方が生死不明、行方不明、心神喪失状態で話がつかない、服役中等の特別な事情がある場合が挙げられます。
訴状等の必要書類を管轄の家庭裁判所に提出して申立てするのですが、調停と異なり、相手方の住所地以外にも、自分(原告)の住所地を管轄する裁判所にも提起をすることが出来ます。
当事者の話し合い、という形ではないため、弁護士に依頼した場合、訴訟の期日は代理人弁護士のみ出席で手続を進めることができます。
訴訟手続では、原則としてお互いの言い分(法的主張)を書面にして、証拠と共に裁判所へ提出し、最終的には裁判官に離婚の成否や、離婚条件(親権など)の判断をしてもらうことになります。
裁判離婚のメリットとしては、第一に「必ず結論が出る」ということが挙げられます。ただし、裁判官が当事者の主張と立証を前提として判断を出すことになるので、その判断がご自身の希望する結論となるとは限りません。また、判決内容が守られなかったときには、強制的な手続が取れるのは調停離婚と同様です。
反対に、デメリットとしては、柔軟性に欠けることが挙げられ、判決の場合は、命じられる内容が離婚の可否、親権、養育費、財産分与、年金分割、慰謝料といったことに限られています。
まずは何を最優先とするのか
離婚か、離婚条件次第では離婚をしないのか
上記のとおり、離婚については主に協議・調停・裁判という方法があるわけですが、離婚をするしないということは人生にとって大きな分岐点になるものです。
離婚するか(相手方の離婚請求に応じるか)を迷っている方は、その迷いの原因を見極めることが必要です。
たとえば、「経済面」、つまり離婚までの婚姻費用(生活費)や離婚後の養育費に不安があるということであれば、相手方からの金銭の支払いがあるのか、公的な各種手当・支援などが受けられるのか、というところが判断のポイントとなります。
また「生活環境面」、たとえば離婚後の住居や名字、子どもの学校などの変化に不安があるということであれば、その点を変化のないよう相手方に求められるのか、という点が判断材料です。
さらに、「精神面」、たとえば離婚は求められたものの、相手方に対してまだ愛着がある、といった場合もあるでしょう。
弁護士に相談する、という選択肢
以上の材料などから、自分が離婚に向けて何を悩んでいるのか、という点を踏まえ、弁護士に相談するというのも一つの合理的な選択肢です。
特に、弊所では男性・女性問わず多くの件数の離婚相談、ご依頼を受けており、離婚を求める原因なども複数扱っておりますので、離婚をしたい場合だけではなく、相手方からの離婚に応じたくない、というケースでも遠慮なくご相談いただければと存じます。