自己破産をした場合、ブラックリストに登録される・手続終了まで特定の職業に就くことができないなどのデメリットが生じます。
もっとも、「自己破産をした場合、旅行(国内・国外問わず)をすることが許されるのか?」といったお悩みを持たれる方がいらっしゃるかと思われます。
本ページは、上記のようなお悩みを持たれてる方向けに専門家が解説するページになります。
そもそも、自己破産とは?
財産や収入が不足して「支払不能」(借金返済の見込みがない)状態であることを裁判所に認めてもらい、原則として借金の支払義務が免除される手続を自己破産といいます。
自己破産には「破産手続」と「免責手続」の2つの段階があり、「破産手続」は、債務者の財産を換価処分して、債権者に公平に分配する手続を指します。
免責手続は、破産手続により残ってしまった借金の支払義務を免除する手続のことを指します。
免責手続で、裁判所から支払義務の免除が認められれば(免責許可が下りれば)、借金が0になります。
なお、裁判上の手続には、借金を0にする自己破産の他、借金の額を減額する手続として「個人再生」があります。
減額された借金を3年(原則)から5年で返済していく手続であり、住宅などの財産を維持したまま、借金を大幅に減らせるという特徴があります。
自己破産をする前に、旅行することはできるのか?
自己破産の申立て前に旅行することができないということはありませんが、借金返済に困っている状態であったにもかかわらず旅行へ行き散財する行動は、裁判所にマイナス印象を与えることになります。
また、すでに弁護士に依頼している場合には、弁護士に相談せずに旅行へ行くことは避けるべきです。
自己破産手続中に旅行することはできるのか?
結論からいうと、管財事件の場合は旅行へ行くのに許可が必要であり、同廃事件の場合では制限はありませんが極力控えるべきです。
1 管財事件
管財事件とは、破産管財人(裁判所が選任する弁護士と言います)がついて財産を換価・配当したり破産者に対する免責の調査をしたりする手続のことをいいます。
管財事件になるケースとして、例えば、個人事業主・法人代表者による破産の場合や免責不許可事由に当たる場合が挙げられます。
自分が、破産手続をした場合管財事件になるケースになるのか否かは一度弁護士に相談することをオススメします。
管財事件の場合、旅行へ行く際に裁判所の許可が必要な理由は、破産管財人が破産者の所在を監督しいつでも迅速に連絡が取れるような状態にしておく必要があるからです。
冠婚葬祭・仕事上の出張などやむを得ず遠征をしなければならない場合は裁判所からの許可が下りる可能性が高いですが、娯楽目的の旅行は許可が下りないと考えておくことをオススメします。
2 同廃事件
同廃事件とは、破産手続開始決定と同時に破産手続きが廃止(終了)される、簡易な破産手続きのことをいいます。
旅行に関する制限はありませんが、前述したとおり、借金返済に困っている状態であったにもかかわらず旅行へ行き散財する行動は、破産者としてあまり好ましくない行動でありますので、破産手続が終了するまでは控えるべきと考えられます。
自己破産手続終了後は旅行できるのか?
免責決定が出て破産手続が終了した後は、行動制限はありませんので旅行することは自由です。
破産手続中・終了後に旅行へ行く際に注意すべきこと
1 クレジットカードが利用できない
自己破産を考えている人の多くは、クレジットカードやローンの支払ができず滞納している人は多いと思われます。
破産手続をした場合、ブラックリストに事故情報が登録されているため、クレジットカードの利用・作成ができなくなります(5年~10年間)。
したがって、旅行する際は、基本的に現金での支払いをすることになるのでご注意ください。
2 破産手続き中は裁判所の許可が必要
先ほどご説明したとおり、管財事件になった場合、旅行へ行く際には裁判所の許可が必要となります。
万が一、許可なしに旅行に行ってしまうと、免責許可が得られない場合もありますのでご注意ください。
個人再生の場合、旅行することはできるのか?
個人再生については、手続中に旅行に対する制限はありません。
しかし、借金の返済に困っている状態で裁判上の手続をする以上、旅行へ行き散財することは控えたほうがよろしいかと思われます。
また、個人再生手続を採った場合も、ブラックリストに載るため、基本的にクレジットカードの利用・作成をすることはできません(5年~10年間)のでご注意ください。
まとめ
弁護士に依頼することで、債権者からの取り立て行為が止まり精神的にも楽になることから旅行へ行きたいという気持ちが出てくるかもしれません。
しかし、基本的には破産手続は終了するまでの期間は旅行することは控えるべきかと考えられます。
仮に、冠婚葬祭や仕事の事情で遠方へ行く必要がある場合には、事前に依頼している弁護士に相談したほうがよろしいかと思われます。