「離婚」という言葉自体は、ネガティブなイメージが強いかもしれませんが、割合だけでいうと日本は「3組に1組が離婚する時代」になっており、もはや珍しい選択肢ではありません。日本の場合、多くは協議離婚という形で終わっている離婚手続ですが、今回は協議離婚ができなかった場合の次の手続となる調停離婚について、そもそもどのような手続か、そのメリット・デメリットなど説明します。
調停離婚、どんな手続?協議離婚との違いは?そのメリットとデメリット
協議離婚以外の選択肢について
令和2年の司法統計によれば、日本の離婚の約9割は協議離婚であったそうですが、昭和のころから比べれば、協議離婚で離婚するという割合は年々下がっているようです。
協議離婚は、当事者が話し合い、合意によって離婚届に記載して、役所に提出する、というイメージしやすい手続かと思います。
話し合いが上手くまとまらなかったら
当事者の話し合いだけではまとまらなかったとか、あるいはそもそも夫婦間で話し合いができないということであれば、裁判所の手続を使って離婚をすることになります。
裁判所の手続には、調停離婚・裁判離婚というものがあります。
この調停離婚・裁判離婚というもののほかに、「審判離婚」というのもあるにはありますが、数としては多くはないので、あくまでも例外的なものと考えておけばよいでしょう。
そこで、まずは協議離婚が出来そうにない場合には、裁判所を介して話し合いをしてみる「調停」を行い、それでもどうしてもまとまらなかった場合には、「裁判」という形で裁判官に判断してもらう、という流れになることを覚えておいてください。
なお、離婚の方法としても昭和25年以降「協議離婚」の割合は昭和27年から90%前後であったものの、平成16年以降低下して80%台となり、令和2年には88.3%にとどまっています。この数字を見ると、協議だけで離婚できる割合は減りつつあるようです。
調停離婚の方法について
調停離婚の申立
調停という家庭裁判所での手続により離婚をするもので、夫婦関係調整(離婚)調停の申立てをして行う離婚のことです。
申立の手続というのは、具体的には家庭裁判所に「調停申立書」という書類を提出し、その他の添付資料(戸籍謄本)などを提出して行います。
申し立てる先は?
原則的には相手方の住所地が基準となります。当事者で合意した家庭裁判所で行うことも可能ですが、その場合には、その合意している旨が分かるように、裁判所の書類に記載をして提出します。
原則は相手方の住所地の近くの家庭裁判所でとなるため、遠方の裁判所に申し立てなければならない場合もあります。
申し立てた後の手続は?
調停を申し立てた人を「申立人」、申し立てられた相手の方を、「相手方」と呼びます。
調停手続は、非公開の手続であって、申立人や相手方本人、そしてそれらの代理人弁護士以外は出席できないことになっています。弁護士を依頼している場合は、弁護士と一緒に調停手続に参加するので、特に「相手方の主張に応じるべきかどうか自分だけでは考えるのが大変だ」とか「DVなどの事情があって自分だけで手続を進めるのは不安だ」というケースなどでは、弁護士を調停の段階から就けているという人も少なくありません。
申し立てをしてから第1回目の調停期日までの間は、1か月以上かかることも多いです。調停期日は、調停委員を介して、お互いの言い分を確認し、離婚の可否そのものや、離婚条件の擦り合わせを行い、合意を目指すことになります。
調停期日を1回開くだけで合意に至ることもあるでしょうが、そうでない場合は2回・3回…と期日を重ねることになります。話し合いがまとまる見込みがないと判断された場合は、その時点で調停が終了(調停不成立)となります。
逆に、離婚及び離婚条件などが合意出来た際には、調停調書といって、合意の内容を条項の形にします。
離婚調停のメリット・デメリット
離婚調停のメリット
調停離婚のメリットとしては、裁判所で決めた内容を「調停調書」という公的な書面にしてもらえるので、金銭などの給付約束などについて決めた内容が守られなかったときに強制的な手続が取れることが挙げられます。
また、当事者が面と向かって直接話し合うのではなく、間に裁判所の調停委員が入ってくれるため、相手方とのコミュニケーションが上手くとれないという場合でも手続を進めることができます。話し合いで進めることは協議離婚と同様ですから、離婚条件を柔軟に決めることができるというメリットも同様です。
離婚調停のデメリット
これに対して、デメリットとしては、裁判所での手続であるため、既に述べたように、申立から第1回目の調停が行われるまでにある程度の時間がかかりますし、最近はテレビ会議やWEB会議による調停期日も設定されることがあるものの、原則的には家庭裁判所へ出頭する手間がかかるという点は否定できません。
さらに、あくまでも話し合いなので合意ができないと成立せず、離婚をするかしないか、離婚条件をどうするか、ということが絶対に白黒つけられる手続でもありません。
協議離婚で話を続けるか、離婚調停にすべきか悩んだら?
以上のとおり、離婚調停にはメリットもあればデメリットもあります。
離婚調停がまとまらなければ、最終的には離婚訴訟という手続も視野に入ってくるわけですが、そもそもご自身が離婚をしたい側なのか、拒否したい側なのか、離婚の話が進まないなら、その進まない理由は何なのか、という点を踏まえ、弁護士に相談するというのも一つの合理的な選択肢です。
特に、弊所では男性からの離婚相談も数多くいただき、ご相談に対してコメント申し上げたり、可能な場合には調停の手続代理人としてご依頼を受けておりますので、離婚をしたい場合だけではなく、相手方からの離婚に応じたくない、というケースでも遠慮なくご相談いただければと存じます。