民法には、「消滅時効」といった制度があり、一定の条件を満たした場合、借金の返済義務がなくなります。「今抱えている借金が時効により消滅するのか?」などのお悩みを持たれている方もいらっしゃるかと思います。
本ページは、上記のようなお悩みを持たれてる方向けに、消滅時効の概要・時効完成の条件、押さえておくべき注意点について専門家が解説するページになります。
消滅時効の制度とは?
クレジット会社などの債権者は、債務者(お金を借りた者)に対し、借金の返済を求めることができる「貸金返還請求権」を有しております。
もっとも、一定の期間、債権者が上記の権利を行使してこなかった場合には、権利自体が消滅してしまい、借金の返済を求めることができません。
これを、消滅時効の制度といいます。
令和2年4月に民法改正が行われました。
これにより、令和2年4月1日以降に借りた借金については、
①債権者が、権利を行使できると知ったときから5年間
②債権者が、権利を行使することが可能な時点から10年間
のいずれか早い方の期日で消滅時効が成立します。
他方、令和2年3月31日よりも前に借りた借金については、改正前民法が適用されます。
改正前民法では、消滅時効は10年間と定められていましたが(改正前民法167条1項)、貸金業者などからの借り入れの場合には、5年間が時効期間とされていました(改正前商法522条)。
消滅時効が成立するケースは?
消滅時効が「完成」するためには、先ほどご説明した「期間経過」という条件以外にも下記のような条件を満たしている必要があります。
1 弁済期又は最後の弁済日から5年以上経過している
お金を返すべき日(弁済期)が経過して以降1度も弁済をすることなく5年経過している場合、消滅時効が成立している可能性があります。
また、何度か弁済をしていたものの、最後に弁済をした日から5年以上何もせず弁済をしていない場合には、消滅時効が成立している可能性があります。
2 債権者から訴訟・支払督促・催告を起こされていない
消滅時効の完成には、裁判・支払督促・催告などが行われていない、といった条件を満たしていることが求められます。
時効期間が経過していても、債権者が裁判などの法的手続をとった場合、時効の進行がいったん停止されたり、進行がリセットされたりすることがあります。
時効の完成が一時的にストップし、先延ばしになる制度を「時効の完成猶予」といいます。
例えば、訴訟の提起・支払督促・催告といった事情がある場合、「時効の完成猶予」の効果が発生します。
また、時効の進行がリセットされる制度を「時効の更新」といい、たとえば、「権利の承認」(債務の存在を明示的に認めるような行動をとる)があったとき、「更新」の効果が生じます。
3 借金の存在を認めるような行動をとっていないこと
先ほどご説明した通り、「権利の承認」(債務の存在を明示的に認めるような行動をとる)があったとき、「更新」の効果が生じてしまい、時効の進行がリセットされてしまいます。
「権利の承認」に当たる行為としては、以下のものが挙げられます。
- 借金を少しずつ返済する
- 返済を少し待ってほしいなど、返済の猶予を求める
- 示談書を取り交わす
「時効の援用」とは? 時効完成しても援用しなければ借金は消滅しない
消滅時効の期間が過ぎたら自動的に借金が消えるのではなく、「時効の援用」といった法的手続きが必要です。
「時効の援用」とは、「時効により、借金を弁済する義務はない」という主張および意思表示であり、これにより消滅時効の効果が確定的に発生します。
1 援用方法について
一般的に、時効の援用をする場合、「時効援用通知書」という書面を作成し、内容証明郵便の形で債権者に送り、援用権を行使します。
上記の書面に記載すべき事項として、
- 時効援用日
- 名前と連絡先
- 債権者や金額、借り入れした日付など、借金に関する情報
- 時効が成立している事実と援用の意思表示
などが挙げられます。
2 時効援用する際の注意点
まず、時効期間が経過していることを確認してから時効援用通知書を送ることが重要です。
時効期間が「完成」する前に時効援用通知書を送ったとしても、時効援用の効果は生じません。
また、書面は届いたことで時効完成が間近であることを知った債権者としては、時効の更新や完成猶予をするための措置をとってしまう可能性もあります。
まとめ
抱えている借金が時効により消滅するかどうか判断するうえで、まず弁済期又は最終弁済日から現時点まで何年経過しているか確認することが大事です。
また、その期間までに、債権者との連絡において「権利の承認」に該当するような行動をとっていないか確認することも大事です。
自分で時効援用通知書を作成し郵送することでも可能ですが、弁護士に作成依頼することもできます。
自分の借金が時効により消滅するかどうかについてお悩みの方は、一度弁護士に相談することをオススメします。