労災で4級の後遺障害が認定された場合、補償される金額は?

労働災害に遭い、後遺障害が残ってしまった場合、程度に応じて1級~14級の後遺障害等級が認定される可能性があります。

本コラムでは、4級の後遺障害が残った場合について解説します。

1 労働災害とは

1 労働災害とは

労働災害とは、労働者が、労働をしている時や通勤の途中に起きた事故によって、ケガをする、病気になる、お亡くなりになることをいいます。

労働者には、正社員のみならず、パートやアルバイト、契約社員などの形態により雇用されている者も対象に含まれます。

具体的なケースとしては、以下のようなものが挙げられます。

・工場での作業中に、プレス機に足を挟まれて大ケガを負った。
・高所での現場作業において、足場が滑って転落し、ケガを負った。
・長時間のデスクワークにより脳出血や脳梗塞を発症した。
・他の従業員による重機の操作ミスにより、下敷きになり死亡した。
・会社を退勤した後、車で帰宅していたところ交通事故にあった。

2 労災事故の発生から労災補償給付を受けるまでの流れ

⑴ 労災保険への申請

⑴ 労災保険への申請

「労働者災害補償保険法」という法律の第1条は、次のように規定しています。

「労働者災害補償保険は、業務上の事由、(中略)又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、(中略)又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。」

このように、労災保険は、労働者が仕事中(通勤途中も含みます。)にケガをしたり、病気になった時、お亡くなりになったときに、必要な補償を受けられるようにして、労働者やご遺族の生活を守る制度です。

そのため、企業には、労災保険への加入が義務付けられています。

そこで、労働災害が発生したときには、労働基準監督署に対し、労災保険給付を申請することになります。

⑵ 労災が認定される要件

⑵ 労災が認定される要件

業務中に発生した事故が労災として認められるためには、「業務遂行性」「業務起因性」という2点がポイントになります。

「業務遂行性」とは、労働者が事業主の支配ないし管理下にある中で起きた事故である、ということを言います。

例えば、建設現場での作業中におけるケガということであれば、業務遂行性は認められることが多いのではないかと思われます。

「業務起因性」とは、業務に伴う危険が現実化したこと、つまり、業務と結果(ケガや病気、死亡)の間に因果関係があることを言います。

現場で作業している最中の事故であれば、一般的には業務起因性は認められやすいと思われます。

一方で、本人の私的行為、業務から逸脱した行為、規律に違反する行為等は、業務起因性を否定する事情になりえます。

⑶ 労災が発生した場合の給付請求の方法

⑶ 労災が発生した場合の給付請求の方法

給付の内容に応じて、労働基準監督署へ給付申請を行うことになります。

申請後、労働基準監督署の判断を経て、支給の決定がなされれば、給付を受けることができます。

例:

①療養(補償)給付

労災病院や労災指定病院等を受診・治療する場合には、当該病院に「療養(補償)給付たる療養の給付請求書」を提出し、請求します。

それ以外の医療機関を利用して受診・治療した場合には、費用を立て替えた上で、労働基準監督署に「療養(補償)給付たる療養の費用請求書」を提出し、請求します。

例えば、治療費や薬代、器具の費用、施術費用などが給付の対象になります。

②休業(補償)給付

労働基準監督署に「休業(補償)給付支給請求書」を提出し、請求します。

③障害(補償)給付

労働基準監督署に「障害(補償)給付支給請求書」を提出し、請求します。

④傷病(補償)年金

労働基準監督署が職権で行うため、請求は必要ありません。

⑤介護(補償)給付

労働基準監督署に「介護(補償)給付支給請求書」を提出し、請求します

書類の様式や記載する内容等に不明な点があれば、労働基準監督署の窓口等で相談しながら申請手続きをすることもできます。

もっとも、手続きが煩雑であると思われる方もいらっしゃると思います。

そのような場合には、弁護士に依頼することも考えられます。

3 4級の後遺障害が認められることで得られる可能性がある費目

⑴ 総論

3 4級の後遺障害が認められることで得られる可能性がある費目

4級の後遺障害が認められる場合とは、たとえば、

・両眼の視力が0.06以下になったもの

・そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの

・両耳の聴力を全く失ったもの

・一上肢をひじ関節以上で失ったもの

・一下肢をひざ関節以上で失ったもの

・両手の手指の全部の用を廃したもの

・両足をリスフラン関節以上で失ったもの

といったケースがあります。

4級の後遺障害が認定された場合、上記の労災給付のほかに、会社に対して、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求できる可能性があります。

ただし、これらは会社に安全配慮義務違反(労働者が安全かつ健康に働くことができるように配慮する義務についての違反)が認められなければなりません。

⑵ 後遺障害慰謝料

⑵ 後遺障害慰謝料

労災でケガをした場合、会社に安全配慮義務違反が認められれば、通院期間等に応じて、通院慰謝料を請求することができます。

もし、後遺障害が残ってしまった場合には、この通院慰謝料に加えて、さらに後遺障害慰謝料を請求することができます。

4級の後遺障害慰謝料は、弁護士基準(弁護士が代理人として介入した場合の基準)では1670万円が基準となります。

⑶ 後遺障害逸失利益

⑶ 後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、労働者に後遺障害が残ってしまったことで、将来における労働能力が低下してしまうことに対する補償のことをいいます。

逸失利益は、

「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

で計算します。

「基礎収入」は、事故前年の収入が基準となります。

「労働能力喪失率」は、4級の後遺障害の場合には、92%となります。

「労働能力喪失期間」は、原則として、症状固定時の年齢から67歳までの期間となります。例えば、就労可能年数があと20年存在する場合、ライプニッツ係数は14.8775となります。

たとえば、「基礎収入」が500万円、「労働能力喪失率」が92%、「労働能力喪失期間」が20年の場合、逸失利益は、

500万円×92%×14.8775=6843万6500円

となります。

4 後遺障害が残るような労災事故において、当事務所でお役に立てること

⑴ 後遺障害が残ってしまった場合

上記のように、後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害分の慰謝料や逸失利益など、損害額が大きくなる可能性があります。

また、そのほかにも、労災で給付されない休業損害の一部などについても、会社に請求することが考えられます。

しかるべき賠償を得るためにも、専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。

⑵ 会社への損害賠償請求

例えば、通院慰謝料や後遺障害慰謝料については労災からは支給されないように、労災給付は十分な補償とは言えません。

そのため、労災から給付されない部分については、会社への損害賠償請求を検討することになります。

会社には、「安全配慮義務(労働者が安全かつ健康に働くことができるように配慮する義務)」があります。

例えば、屋外での現場作業のケースでは、熱中症を予防するために十分な休憩や水分・塩分の補給をさせるといった対策を取らない、体調不良の疑いがあるのに涼しい場所で休ませない等の場合には、安全配慮義務違反が認められる可能性があります。

また、事故の態様によっては、「不法行為責任(事故の原因が企業の活動そのものを原因とするような場合や、現場の環境・設備に危険があった場合などに認められる責任)」が認められるケースもあります。

これらを根拠として、勤務先の会社に対して、損害賠償請求をすることが考えられます。

5 【まとめ】労働災害で後遺障害が残ってしまった際は、ぜひ弁護士へ相談を

5 【まとめ】労働災害で後遺障害が残ってしまった際は、ぜひ弁護士へ相談を

これまで述べてきたように、労災事故で4級の後遺障害が残ってしまった場合、賠償額が大きくなる可能性があります。

また、会社に対して多額の損害賠償請求をすることができる可能性もあります。

心当たりのある方は、ぜひ一度弁護士に相談をすることをおすすめします。

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。

また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。

まずは、一度お気軽にご相談ください。

※ 本コラムの内容に関するご質問は、顧問会社様、アネット・Sネット・Jネット・保険ネットの各会員様のみ受け付けております。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 赤木 誠治

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