労災の後遺障害5級とは?何がもらえて請求できる?弁護士が詳しく解説

労災に遭遇して負傷した場合、治療をしてもそれ以上改善せず、後遺障害として症状が残ってしまうことがあります。このコラムでは、その中でも後遺障害5級を取り上げ、具体的な症状や請求できる費目などについて詳しく解説します。

5級に認定されると、労災保険から、①障害補償年金として、毎年、給付基礎日額(直近3ヵ月の1日の平均給与額)×184日分、②障害特別年金として、毎年、算定基礎日額(直近1年間の受給額(ボーナス含む)÷365日の金額)×184日分、③障害特別支給金として225万円が給付されます。

よくある質問ですが、年金はいつまで受け取れるのか?と聞かれることがありますが、生きている限り、受給し続けることが可能です。つまり、受給期限はありません。

しかし、重要なのは、労災保険から支給されるのは、損害額のごく一部という事実です。

入院・通院の慰謝料、後遺障害の慰謝料、逸失利益(将来の損失)などは、労災保険ではその全てを満たしてくれません。

損害賠償請求をするかどうかにより、1000万円以上の差が開くことも少なくないのです。

適正な損害賠償を受け取りたい方は、直ちに弁護士までご相談ください。

1 労災における後遺障害とは?

1 労災における後遺障害とは?

労災においては、後遺障害が問題となることが少なくありません。

後遺障害とは、治療による改善が見込めず将来的に一定の症状が残存する状態をいいます。

通常、これ以上治療しても症状が改善しないと医師に判断してもらい、「症状固定日」を決めてもらいます。

後遺障害には重い方から順に、1級~14級の等級があります。

これらが認定されると、それぞれに応じた給付がなされることになります。

2 後遺障害5級の認定基準

(1)後遺障害5級の症状

(1)後遺障害5級の症状

後遺障害5級には、下記の症状があります。

労働能力喪失率でいえば、79%(つまり8割方失われる)です。

  • 一   一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの
  • 一の二 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  • 一の三 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  • 二          一上肢を手関節以上で失つたもの
  • 三          一下肢を足関節以上で失つたもの
  • 四          一上肢の用を全廃したもの
  • 五          一下肢の用を全廃したもの
  • 六          両足の足指の全部を失つたもの

このように、「失明」「失った」「全廃」などの文言からお分かりのとおり、大きな怪我である場合に認定される等級となります。

(2)認定のポイント

(2)認定のポイント

後遺障害5級は、労働能力喪失率79%であり、仕事や日常生活において、実に重大な影響を与えることが想定されております。

この等級の中で認定されるケースの例は、右目や左目の一つを失明した事故、長時間労働による脳梗塞等の症状により失語症や高次機能障害を患った事故、右手や左手の手関節以上を一つ失った(切断等)事故、右足や左足の足関節以上を一つ失った(切断等)事故などが実際に考えられるものです。

重機による人身事故、爆発による事故、長時間労働等の様々な事故要因があります。

ご自身の症状を医師に正確に伝えていただき、実際の症状をできるだけ正確に反映した後遺障害診断書を作成してもらうことが重要になります。

3 労災から受けられる給付

(1)労災から受けられる給付

(1)労災から受けられる給付

後遺障害5級が認定されると、労災から各種の給付を受けることができます。

後遺障害が認定された場合、障害補償給付を労災から受けることができます。

障害等級が1級から7級に該当するときは、「障害補償年金」として年金が、障害等級が8級から14級に該当するときは、「障害補償一時金」として一時金が支給されます。

そのほか、冒頭で触れたとおり、障害特別一時金などがあります。これは賠償請求する場合に既払いとして控除されません。

(2)障害補償一時金

5級の場合、障害補償年金が支給されることになり、その金額は給付基礎日額の184日分とされています。

生きている限り、受給し続けることが可能です。

給付基礎日額とは、労働基準法が定める平均賃金に相当する額をいいます。

原則として、労災発生前3か月間に労働者に支払われた賃金の総額をその期間の暦日数で割った金額とされています。

(3)障害特別一時金

(3)障害特別一時金

これ以外に、5級の場合、「障害特別一時金」として算定基礎日額の184日分が支給されます。

生きている限り、受給し続けることが可能です。

算定基礎日額とは、算定基礎年額を365で割った金額をいいます。

算定基礎年額とは、労災発生前1年間に支給された特別給与(賞与等の3か月を超える期間ごとに支払われる賃金)の総額をいいます。

(4)障害特別支給金

(4)障害特別支給金

これ以外に、5級の場合、225万円が支給されます。

一度だけ、支給されます。

なお、特別支給金は、前述の一時金とは異なり、いわゆる損益相殺(会社に損害賠償請求するような場合に、既払金として損害額から控除されること)の対象ではありません。

5 労災以外で請求できるもの

5 労災以外で請求できるもの

後遺障害が認定されれば、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益という2つの損害を請求できることになります。

(1)後遺障害慰謝料

(1)後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、後遺障害による精神的な損害に対する補償です。

後遺障害の等級により金額が異なり、5級の場合、弁護士基準(いわゆる「赤本基準」)では、1400万円を請求することができます。

(2)後遺障害逸失利益

(2)後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、後遺障害により将来的な稼働能力が低下することに対する補償です。

後遺障害逸失利益は、基礎収入に各等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間(症状固定時から67歳までの期間)に応じたライプニッツ係数を掛けて計算します。

ライプニッツ係数とは、将来にわたって発生する賠償金を先に受け取る場合に控除する指数をいいます。

5級の労働能力喪失率は、79%です。

例えば、年収500万円の正社員で症状固定時に40歳であれば、単純計算、500万円×79%×18.327=1億1599万3671円になります。

年齢や収入によっては、1億円を超えてくることがあります。

(3)それぞれの請求先

(3)それぞれの請求先

これらについては、労災からは支給されないので、自分の所属する会社や労災に相手方がいれば相手方に請求する必要があります。

6 弁護士に相談・依頼するメリット

6 弁護士に相談・依頼するメリット

後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益は、労災からは支給されません。

これらを請求するには、自分が所属する会社などを相手に損害賠償請求を行う必要があります。

ただ、この損害賠償請求は、会社に過失(安全配慮義務違反)がなければ認められません。

会社に過失が認められるかどうかは、労災発生時の状況や会社の指導体制などの多くの要素を考慮して判断する必要がありますので、一般の方にとっては難しいことが現実です。

弁護士にご相談いただければ、過失の見込みについてもある程度の判断はできますし、ご依頼いただければそれなりの金額の支払いを受けることもできます。

また、一般的に、後遺障害は認定されにくいものですが、弁護士にご依頼いただければ、後遺障害認定に向けたアドバイス(通院の仕方や後遺障害診断書の作り方など)を差し上げることもできます。

そのため、労災でお悩みの方は、お気軽に弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志

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