離婚には、「協議離婚」、「調停離婚」、「審判離婚」、「裁判離婚」の4類型があります。
その内、「調停離婚」とは、当人同士のみでの離婚に向けた話し合いが解決できなかった場合に、裁判所の職員である調停員の仲介の下、夫婦が離婚条件について話し合う手続のことをいいます。
家庭裁判所が公表している令和3年度の司法統計によると、離婚調停を申し立てた夫婦の約半数が調停成立となっていることから、調停離婚手続きの利用は、離婚に向けた話し合いをする場として有用なものと考えられます。
本ページは、調停離婚の流れ・費用・調停を進めるうえで気を付けるべきこと等について弁護士が解説するページとなっております。
調停離婚とは? 知っておくべき基礎知識
まず、調停離婚の基礎知識についてご説明いたします。
1 調停離婚における調停委員の役割
離婚調停は、選任された2名の調停委員が中立的な立場で夫婦双方の主張を聞きつつ当事者双方にとって折り合いのつく離婚条件を整えることをします。
調停期日は、調停委員が夫婦を別々に呼び出し、30分程度の面談を交互に2回程度ずつ行う流れで進行するのが一般的です。
基本的には、2名の調停委員とやり取りするのみで、配偶者と直接顔を合わせることはありませんので、相手方と顔を合わせることに不安の方は安心して調停に臨むことができます。
2 離婚調停で話し合う内容
離婚調停では、具体的に以下のような話し合いが行われます。
- そもそも離婚をするかどうか
- 親権、養育費、面会交流といった子どもに関すること
- 財産分与や年金分割といったお金に関すること
- 一方による不貞行為やDV等を行った場合の慰謝料に関すること
など
離婚調停の流れ
以下では、離婚調停の大まかな流れを説明いたします。
離婚調停の申立て
申立をする場合、基本的には相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをする必要があります。
例えば、別居中で相手方が埼玉県川越市に居住している場合には、さいたま家庭裁判所川越支部に離婚調停を申し立てる必要があります。
もっとも、夫婦が合意している場合は、それ以外の家庭裁判所に申し立てても構いません。
必要書類や収入印紙などを揃えたら、持参又は郵送にて裁判所に申立てをすることはできます。
申立てが受理されると、1~2ヶ月後に第1回目の調停期日が指定され、申立人と相手方に調停期日通知書(呼出状)が届きます。この通知書が届くのは、申立てから2週間前後になります。
離婚調停の申立てに必要な書類には、
①申立書
②事情説明書
③連絡先等の届出書
④進行に関する照会回答書
⑤夫婦の戸籍謄本
があります。
①~④は裁判所HPに掲載しておりますのでわざわざ必要書類を取りに裁判所に行く必要はございません。⑤は市町村役場にて取得可能です。
その他、話し合いの内容に応じて以下のような資料を提出する必要があります。
- 財産分与に関する書類(例えば、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、通帳の写し、加入保険の解約返戻金証明書など)
- 養育費の金額を決めるための資料(源泉徴収票、確定申告書、給与明細など)
- 慰謝料請求の根拠資料
申立てにかかる費用
離婚調停の申立てをする際にかかる費用は、以下のとおりです。
収入印紙代 | 1200円 |
切手代 | 裁判所によって異なります |
戸籍謄本の取得費用 | 450円 |
これらの費用は申立側が負担することになります。
また、弁護士に離婚調停を依頼する場合は、別途相談料・着手金・報酬金など弁護士費用を支払う必要があります。
第1回目の調停期日
調停当日は、家事書記官室での受付が必要となりますので、余裕もって10分前には裁判所に到着するようにしましょう。
当日は調停期日通知書・印鑑(認印でもOK)、身分証書を持参する必要があります。
家事書記官室で到着した旨を伝えたら、待合室に案内されるので調停委員が来るまで待機します。
なお、待合室は申立人と相手方で別々の部屋が用意されており、呼出時間もずらしてあることから、当事者同士が顔を合わせることはありませんのでご安心ください。
調停委員の呼び出しを受け調停室に入った後、最初に調停委員から調停手続きについて大まかな説明を受けます。
その後、調停委員から、離婚調停を申し立てるまでの経緯や、希望する離婚条件などについて質問されます。
30分程度話をしたら、申立人は一度待合室へ戻ります。
その後、相手方が調停室へ呼び出され、同じようなやりとりが行われます。
以降はこのやり取りが繰り返され、申立人と相手方は交互に主張をすることになります。
大体2~3時間程度の調停期日を経て、折り合いがつかない場合には第2回目の期日が設定されます。
第2回目以降の調停期日
第2回目の調停期日は、通常、第1回目の1ヶ月~1ヶ月半後に設定されます。
調停委員からは、次回の調停期日までに必要な資料を用意するよう指示されることもあります。
第2回目の期日も、基本的な流れは初回と同様です。第2回目でも折り合いがつかない場合には、第3回目の期日が設定され、以降は第4回、第5回…と調停が終了するまで続きます。
離婚調停の終了
当事者双方が、離婚条件について合意に至った場合は調停が成立し、調停調書が作成されます。
調停が成立してから10日以内に、離婚届と調停調書謄本を市区町村役場に提出することをお勧めします。その理由は、離婚調停が成立したにもかかわらず離婚届を提出しないままだと、戸籍上は離婚したことになりません。
合意に至らない場合や、配偶者が調停に出席せず話合いができなかった場合などには、調停は不成立となるため、離婚裁判を提起することになります。
調停申立てから終了までに係る期間は、個々の事情によりますが約3か月~1年かかると考えていただければと思います。
離婚調停を申し立てたほうがいいケースとは?
次に、どのような場合に離婚調停を申し立てた方が良いのか、各ケースに分けてご説明いたします。(個々の事情によりますのでご参考程度にお読みください)
1 相手方が協議離婚に応じてくれない
離婚に反対する理由は、復縁を希望している、生活を変えたくない、子供のことが心配、世間体を気にするなど様々なものが考えられますが、相手方が離婚そのものに応じてくれないとすると、協議離婚の成立自体見込めないため、離婚調停を申し立てたほうがよろしいかと思います。
2 離婚条件が折り合わない
双方離婚意思はあるものの、親権、面会交流、財産分与など離婚条件について協議では折り合いが付かない場合には、離婚調停を申し立てることで調停委員を介して条件が整うことがあります。
まとめ
離婚調停の流れや費用などにご説明いたしましたが、調停期日は基本平日にあることから、仕事しながら調停期日に参加したり、調停期日に向けて資料の準備をする必要がありますので、多少なりとも負担になります。
そのような負担を軽減したい方には弁護士に依頼することを検討してはいかがでしょうか。
弁護士に依頼することでよりスピーディに調停離婚が成立する場合もございます。