子どもがいる場合に離婚した際、養育費の額について決めることがあります。
養育費の額は基本的に双方の収入に応じて決められますが、離婚成立後再婚し、新たに子どもができた場合、経済面を含めて生活環境が大きく変わります。
そのような場合、「一度元配偶者との間で決めた養育費の額について減額を求めることはできるのか?」といった疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思いまう。
本ページは、再婚した場合の養育費について弁護士が解説するページとなっております。
養育費とは? 知っておくべき基礎知識
養育費とは、まだ社会的に自立できないとされる子ども(いわゆる「未成熟子」)を監督保護・教育するために必要な費用を指します。
民法第877条1項には、
「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められております。
つまり、これは「扶養義務者と同程度で、かつ文化的な最低限度の生活水準を維持する程度には、絶対的に扶養しなければならない」ということを意味していることから、扶養義務者として養育費の負担義務を負うことになります。
離婚後に、親権を取得し実際に子を監護する親(監護者)が、他方の親(非監護者)に対して、子(未成熟子)の健全な育成のための費用「養育費」として支払いを求めることができます。
養育費の額は、通常、令和元年に裁判所が公表した改定標準算定表に基づき決める場合が多いです。下記URLをご参考ください。
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/index.html
民法改正により、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、従前どおり「20歳まで」養育費の支払義務を負うことになると考えられます。
再婚した場合、養育費はどうなる?
離婚後、再婚したという事実のみで養育費の支払い義務が消えません。
再婚後も、子供との関係で扶養義務がある限り、再婚後も養育費を支払う必要があります。
もっとも、場合によっては、養育費の減額・免除が認められることもあります。
以下では、養育費の減額・免除が認められるケースについてご説明いたします。
再婚して養育費の減額・免除が認められるケースとは?
養育費の減額・免除が認められるための要件として、「事情変更」が必要となります。
再婚した事実に加えて、例えば、子供が再婚相手との間で養子縁組をしたり、新しく子供が誕生するなど扶養家族が増えるといった事情の変化により、養育費の減額・免除が認められる可能性があります。
以下では、権利者側(養育費を受け取る側)と義務者(養育費を支払う側)の各パターンに分けて、養育費の減額・免除が認められるケースについてご説明いたします。
権利者側
権利者が再婚し、その監護する子どもが再婚相手と養子縁組をした場合、養親が第一次的な扶養義務者となりますで、通常、養育費の減額・免除が認められると考えられます。
もっとも、再婚相手がやむを得ない事情で働けないなど事情によっては減額が認められないこともあります。
養子縁組をした疑いがある場合には、養親と養子双方の戸籍に記載されている縁組事項を確認することで判別できますのでご確認いただければ思います。
他方、子どもが再婚相手と養子縁組しなかった場合には、再婚相手に扶養義務が発生していない以上、義務者は養育費の減額請求は認められません。
もっとも、子どもと再婚相手が同居して生活費等を負担してもらっている場合や子どもを再婚相手の扶養にいれている場合は、養育費の減額が認められる場合もあります。
義務者側
再婚後、新しく子供が生まれた・再婚相手の連れ子と養子縁組をした・やむを得ない事情により減収したなど、扶養家族が増えたり、経済状況が変化した場合には、減額・免除が認められる場合があります。
もっとも、裁判例では、「事情変更」を認めるかの要件として、①予測の範囲内か否か、②減額請求が信義に反しないか、といった要件を挙げております。
以下では、養育費の減額請求が認められなかった裁判例についてご説明いたします。
(大阪高裁平成21年3月5日判決)
相手方(父)が、母との調停による合意の3か月後に養育費の減額請求をした事例である。
相手方は、約1か月後に再婚し、かつ再婚相手の連れ子と養子縁組をし、養育費の減額を求めました。
原審では、減額を認めましたが、抗告審(高裁)は、「当事者は、調停において、それぞれの生活状況、ことに収入・支出を踏まえ、長期間にわたる履行がされるものとして養育費に関する合意をするのであるから、それぞれの収入・支出に予期しない著しい変動が生じるなどの特段の事情がない限り、調停で合意した養育費の額を変更することは予定されていない。
本件においては、父は母と調停離婚した日の約4週間後に再婚すると同時に、再婚した妻の連れ後2名と養子縁組し、かつそのころ住宅も購入したのであるが、このような生活の変化を予測した上で、未成年者らの養育費の額について調停で合意したとみるべきである。」とし、その合意した養育費の額についても検討して、これが当事者の「当時の生活を前提とすれば、多すぎる額ではない」としたうえで、・・・相手方による養育費減額請求は自分勝手なものであり、却下を免れない」とし、減額請求は却下されました。
このことから、養育費の減額・免除が認められるためには、「事情変更」が①予測の範囲「外」であること、②減額請求が信義に「反しない」ことが求められると考えられます。
養育費の減額方法について
養育費の減額を求めたい場合の方法として、①当事者間で話し合う、②家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てる、といった方法があります。
相手方が話し合いのテーブルに来てくれない場合は、家庭裁判所へ養育費の減額調停を申し立てた方が良いでしょう。
実際にどのくらい減額できるのかは、双方の収入や子供の養子縁組の人数など様々な事情を考慮して決定されます。
相手方が再婚したかどうかを調べる方法は?
離婚後、相手方が再婚した疑いがある場合には、相手方の戸籍をたどることで再婚や養子縁組の有無が分かります。
まずは、自分の戸籍を取り寄せて、相手方と子供たちの戸籍の入籍先を追跡して調査してください。
なお、弁護士に依頼をすることで、養育費減額請求を行う前提で、「職務上請求」という方法により、相手方の戸籍を取り寄せ、再婚・養子縁組の有無を調査し確認することが可能です。
まとめ
再婚したからといって必ず養育費の減額が認められるわけではないですが、先ほどご説明したケースに当てはまる場合には、養育費がどれほど減額されるか検討する価値はあるかと思われます。
一般的は、夫婦の年収や子供の数や年齢に応じて「養育費算定表」に基づき金額が算定されますが、再婚後の養育費を計算する場合、離婚時とは状況が変わっているので「養育費算定表」をそのまま使うことはできません。
再婚後の計算方法として「養育費算定表」の元になっている「標準算定方式」を使って、計算することになりますが、複雑な計算となりますので、一度弁護士に相談することをお勧めします。
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