こんにちは。弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士 渡邉千晃です。
自己破産をする人は、相続が発生した場合に、遺産を相続することができるのでしょうか。
結論からいえば、自己破産をした人であっても、遺産を相続できる場合があります。
それは、自己破産を裁判所に申立をし、破産手続きの開始決定がなされた後に、相続が発生した場合です。
この場合には、破産をしたからといって遺産を没収されることはないので、安心しましょう。
そこで、この記事では、破産をした場合に遺産を相続できない場合を説明したのち、破産者と遺産分割協議の関係、及び、相続放棄をした方がよいのかについて、わかりやすく解説していきます。
破産者が遺産を相続できる条件とは?
破産者が遺産を相続できるかどうは、相続の発生するタイミングによります。
具体的には、相続が「破産手続きの開始決定前」であれば、遺産は、破産の手続きの中で没収されてしまう可能性が高いといえます。
他方、相続の発生が「破産手続きの開始決定後」であれば、破産者自身で遺産分割協議を進め、遺産を受け取ることができます。
「破産手続きの開始決定」とは、自己破産の申し立てに対して、裁判所が自己破産の手続を開始してもよいと判断することをいいます。
この開始決定後に破産者が取得した財産は、基本的には「新得財産」として、破産者自身で自由に処分をすることができることになります。
問題となるケース
もっとも、「破産手続きの開始決定前」に、相続が発生した場合には、遺産は破産手続きの中で没収される可能性があります。
この場合には、破産手続の開始決定時に存在する財産として、「破産財団」に組み込まれ、債権者へ配当されることになります。
また、他の相続人がいる場合には、遺産分割協議が終わっているかどうかによって、以下のようなケースに分けられます。
遺産分割協議が終わっている場合
「破産手続きの開始決定前」に、相続人間で遺産分割の協議が終わっている場合には、破産者の手元に残っている遺産が破産財団に組み込まれます。
相続した財産が手元に残っていない場合には、基本的には破産財団には組み込まれませんが、相続した財産が大きければ、裁判所から当該遺産を何に使ったのかという報告を求められる可能性が高いといえます。
遺産分割協議が終わっていない場合
「破産手続きの開始決定前」に相続が発生したものの、開始決定時までに遺産分割協議が終わっていない場合には、破産者は、自身で遺産分割協議を進めることが出来ません。
この場合には、裁判所から「破産管財人」という弁護士が選任されることになります。
破産管財人は、破産者に一定額以上の財産がある場合などに、財産を換価する業務などを行います。
破産管財人は、裁判所の許可を得て、他の相続人と話合い、遺産の分け方などを決定します。
そして、破産管財人は、破産者が相続した財産を換価し、各債権者へ配当を行います。
なお、管財人が選任された場合には、裁判所に15万円から20万円程度の予納金を納付しなければならず、手続自体も長くかかってしまうことになります。
相続放棄をした方がよいのか?
上記のとおり、破産手続きの開始決定前に相続が発生した場合には、遺産は破産財団に組み込まれ、債権者へ配当されてしまうことになります。
そのような不利益を防ぐためには、「相続放棄」を検討するとよいでしょう。
家庭裁判所で相続を放棄するという手続きを行うと、相続放棄が認められます。
相続放棄をした場合には、相続の当初から相続人ではなかったものと扱われます。
相続放棄を行えば、破産者が財産を相続することがないため、その分、他の相続人の取り分が増えることになります。
相続放棄をした破産者自身が遺産を相続できるわけではありませんが、被相続人がせっかく残してくれた財産を散逸させてしまうことは、防ぐことができます。
また、破産者に相続財産以外の財産が特になければ、破産管財人が選任されない可能性が高いため、高額な予納金を支払う必要もなく、破産の手続自体スムーズに終えられるといえるでしょう。
まとめ
以上、自己破産の手続と遺産の相続の関係について、解説していきました。
破産者が遺産を相続できるかどうかは、相続が発生したタイミングが重要になります。
また、遺産分割協議や相続放棄の進め方など、相続問題も併せて発生しますので、迷った際には、自己破産の手続、及び、相続問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめいたします。