不倫相手が妊娠していた場合、法的責任に影響はある?弁護士が解説!

配偶者の不倫相手が配偶者の子を妊娠してしまったら、あるいは配偶者自身が不倫相手の子を妊娠してしまったら、配偶者や不倫相手の責任はどうなるのでしょうか?肉体関係がある以上、不倫に伴って妊娠するということは考えられるところです。今回は不倫によって配偶者や不倫相手が妊娠してしまった場合の影響や、その時に被害者側が判断すべき選択について解説します。

配偶者が不倫相手の子を妊娠したら、配偶者が不倫相手を妊娠させてしまったら、被害者にはどのような影響が出る?

不倫の責任

不倫の責任

不貞行為(不倫、浮気)は、民法上の不法行為に該当するもので、この不法行為に基づいて精神的苦痛を受けたとすれば、配偶者はその精神的苦痛に対して慰謝料を請求することができると考えられます。

慰謝料の請求相手

不貞行為が不法行為として精神的苦痛をもたらしたのであれば、その不法行為をした主体こそが賠償義務を負う、つまり慰謝料を支払うべき当事者ということになります。

不貞行為の主体は、配偶者自身と不貞相手ということになります。

不貞をされた方は、自分の配偶者だけに請求してもよいし、不貞相手だけに請求をしてもよいし、この両者に連帯して支払えと請求してもよいのです。

そして、不貞相手は自身だけが不法行為をしたのではなく、当該配偶者自身も連帯して責任を負うとして、不貞相手が支払った慰謝料について、当該配偶者に対し「責任に応じてお金を返してくれ」と求めることもできます(これを「求償」といい、求償する権利を「求償権」といいます。)。

慰謝料の認定について

慰謝料の認定について

不貞慰謝料の相場って?

不貞慰謝料の請求方法としては、裁判に限らず、交渉や調停によって合意して支払いを約束してもらうこともあります。

交渉や調停の場合、相手方が真意に基づいて支払義務を認めれば特にいくらを慰謝料として請求しなければならない、というものでもありません。

しかし、裁判の場合は、裁判官が当該不貞の有無を判断し、その内容を考慮して、慰謝料をいくらと決めることになります。裁判に関しては、慰謝料の認容額の傾向というものがあり、おおよそ100万円から300万円の範囲で認めているのではないかと考えられ、平均値としては150万円程度であるといわれています。

慰謝料の増減に影響する要素

慰謝料について、「このような要素で判断せよ」と法律などで定められているわけではありませんが、傾向としては以下のような要素があるのではないかとされています。

  • 不貞相手の収入など(高収入であれば増額の傾向)
  • 不貞に伴い妊娠をした(妊娠があれば増額の傾向)
  • 被害者が不貞により心身に影響が生じた(影響があれば増額の傾向)
  • 不貞により離婚に至ったり別居に至るなど、婚姻関係に影響があったか(悪影響が大きいほど増額の傾向)
  • 求償権を放棄したか(放棄していれば減額される傾向)
  • その他不貞行為の悪質性など

が例として挙げられると思います。

慰謝料の増額原因としての妊娠

上記のとおり、不貞に伴い妊娠をしたというケースでは、慰謝料は増額される傾向にあります。

実際にはその他の要素も大きく関わるため、妊娠を伴ったというだけで慰謝料が300万円相当にまでなるというわけではないかもしれませんが、平均値が150万円とされる不貞慰謝料で、婚姻期間10年未満で不貞関係1年4か月・婚姻関係は離婚となったというケースでは180万円の慰謝料が認められたという裁判例もあります。

また、判決ではなく交渉では、早期解決を図るということも可能になり、不貞相手も裁判になって事件が公になることを避けられるというメリットも考慮し、300万円を合意して任意に払い解決ができる、というケースも少なくないようです。

立証の問題

不貞相手あるいは配偶者の妊娠は、一般的には医師の診断や、当事者の自白などで明らかになりますが、既に堕胎している場合などは「母体保護法手術(人工妊娠中絶)に関する同意書」いわゆる「中絶同意書」などがあります。

配偶者が不貞相手の子を妊娠したという場合、夫にこの中絶同意書を書いてもらうわけにはいかないので、不貞相手自身に同意書を取り付けるということが多いかと思います。その同意書を見ることで、不貞を知る、というケースもあるようです。

不貞関係にないにも拘らず、この同意書を記載するということは通常考えられないので、不貞行為そのもの、そして不貞の結果妊娠をさせてしまったということの強力な証拠の一つとなるといえるでしょう。

不貞相手が妊娠したという場合の注意点

不貞相手が妊娠したという場合の注意点

以上のとおり、配偶者が不貞相手の子を妊娠した・配偶者が不貞相手を妊娠させた、という場合、一般的には慰謝料は高額になる傾向にあるわけですが、妊娠によりマイナスの影響がある部分もあるので、その点は注意をしなければなりません。

以下詳しく見ていきます。

自分の配偶者が妊娠した場合

上記のとおりご自身の配偶者が不貞相手の子を妊娠した場合、妊娠した子を出産するとは限りませんが、離婚せずに出産するとすれば、その子は夫の子と推測されてしまいます(嫡出推定・民法772条)。

そこで、このような推定について争うため「嫡出否認の訴え」という手続をする必要が生じることがあります。

また、仮にこの嫡出推定を覆し、その子が不貞相手の子だとされても、離婚後に元妻(不貞配偶者)との間にできた子を元夫が引き取り、養育費を請求するにあたり、その不貞相手の子がいることを前提に養育費を算定される可能性も否定できません。

不貞配偶者にはその不貞相手の子を扶養すべき義務があることから、その分元夫との間の子を扶養すべき義務に影響が生じる、ということです。

不貞相手が妊娠をした場合

上記とは逆に、ご自身の夫が不貞相手の女性を妊娠させた場合、その女性が子を産み、夫がその子の認知をすれば、法的にはその不貞相手の女性の子も夫の子ということになります。

法的には「父」であるため、その女性や子自身から夫に対し扶養義務を果たすよう養育費の支払いを求められる可能性もあります。

まとめ

まとめ

以上のとおり、配偶者が不貞相手を妊娠させた場合や不貞相手自身が妊娠したという場合、慰謝料請求という意味では慰謝料の増額要素になるといえます。

その反面、妊娠した子が生まれると、新たに配偶者にその子に対する扶養義務が生じるということも否定できません。実際には不貞相手や配偶者が不貞により宿した子を出産するということはあまり多くないかもしれませんが、それによって生じる影響もあることは知っておいて、求償権を放棄させるだけではなく、出産をどうするのか、扶養義務をどうするのかなど可能な手立てをとっておく必要があります。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 相川 一ゑ

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