解雇は労働の機会と賃金の支払を受ける権利を失わせるものです。そのため、解雇が認められるためには十分な理由が必要であり、理由のない解雇は無効となります。その場合、労働者には未払賃金の支払と復職を求める権利がありますので、ご説明いたします。
不当な解雇とはどのようなものか
解雇には、おおむね下記の種類のものがありますが、それぞれについて争う方法があります。
(1)成績不良を理由とする解雇
会社側が成績不良を理由に解雇を行うことがありますが、以下のような裁判例もありますので、争う余地があります。
ある裁判例においては、単に成績が悪いというだけではなく、それが企業経営に支障を生ずるなどして企業から排除すべき程度に達していることを要すると判断しています(エース損害保険事件 東京地裁判決平成13年8月10日 労働判例820号74頁)。
そして、営業部員としてC評価を重ね、伝票処理・コンピュータ入力でも多数のミスを重ね、誤った決算書を作成した者の解雇につき、いまだ従業員としての適格性が無く、解雇に値するほど技能発達の見込みが無いとは言えないとされた例もあります(森下仁丹事件 大阪地方裁判所判決平成14年3月22日 労働判例832号76頁)。
(2)業務命令違反を理由とする解雇
業務命令違反についても、以下のような裁判例がありますので、争う余地があります。
業務命令違反の内容が、会社の指定したパソコンソフトを使用するように注意したがそれに従わなかった等というものであり、会社の業務に与える支障が大きくなく、会社の方が労働者と対話をすることが無い等の事情や、解雇する前に減給や出勤停止といった別の制裁を加えることが無かった等の事情があれば、解雇は認められないと裁判所が判断したケースがあります(カジマ・リノベイト事件 東京地方裁判所判決平成13年12月25日 労判824号36頁)。
(3)整理解雇
会社の業績の不振を理由に会社が解雇を主張することがありますが、整理解雇を行うには下記の要件が認められなければなりません。
①人員削減の必要性
債務超過や赤字累積に示される高度の経営上の困難から、人員削減措置が要請されるという程度の、人員削減の必要性が要求されます。
②人員削減の手段として整理解雇(指名解雇)を選択することの必要性
人員削減を行うには、使用者は、配転、出向、一時帰休、希望退職の募集など他の手段によって解雇回避の努力をする信義則上の義務を負うとされています。そして、配転、希望退職の募集などの他の手段を試みずにいきなり整理解雇の手段に出た場合は、解雇権の濫用であると裁判所は認めています。
③解雇する労働者を選んだことの妥当性
何名かの労働者の整理解雇がやむなしと認められる場合にも、使用者は解雇する労働者の選定については、客観的で合理的な基準を設定し、これを公正に適用して行うことが必要とされます。このような基準を設定せずに行った解雇や、客観的かつ合理的なものではないと裁判所がみなした基準による解雇は無効と判断されています。
④手続の妥当性
裁判例は、労働者に対し、整理解雇の必要性とその時期・規模・方法につき納得を得るための説明を行い、誠意をもって協議すべき信義則上の義務を負うと判断しています。
解雇を告げられたときにはどうしたらよいか
解雇を告げられたときには、解雇の理由を尋ねるべきです。上記のように、裁判例は解雇の有効性について、十分な理由があったかを判断していますので、会社に対して、解雇の理由を尋ねるべきでしょう。
また、解雇の理由を書面で提出してもらう権利が労働者にはありますので、解雇理由を説明する証明書の提出を会社に求めるべきです。これによって、会社が、ありもしない解雇理由を、解雇の後になって主張することを防ぐことが可能となります。
解雇を争う方法
解雇を争う方法は、会社との交渉、労働審判の申立て、訴訟があります。
交渉事件は、裁判を行わないで進める手続きですので、簡易迅速に行うことができるものの、当会社と労働者の双方の主張に隔たりがあれば解決が難しい側面があります。
労働審判は、訴訟に比べて簡易迅速に進めることができ、金銭的な解決になじみやすいという側面があります。もっとも、3回の裁判で結論を出すことになりますので、訴訟に比べると丁寧な審理をすることが難しく、結論に不服のある者は異議を申し立てて、訴訟に移行することができます。
訴訟は、通常、半年以上の審理期間があり、簡易迅速な手続きであるとは言えませんが、相手方に対して証拠の提出を要求したり、証人尋問を実施したりと、丁寧に審理を進めることができますので、慎重な判断を裁判所に求めたい場合は利用すべき手続きです。
次に、解雇を争う場合に、会社側に請求すべき内容は、不当解雇によって出勤が出来なくなっている期間中に支払われるべき賃金と復職です。この点、不当な解雇を行った会社には復職をしたくないと考える方もおられると思いますが、復職の意思が無いことを示したうえで、会社に対して損害賠償のみを請求するという方法は、会社側が解雇を行った際に重大な落ち度が無ければ請求が認められないという側面がありますので、復職を求めないという方法を取ることには慎重になるべきです。なお、不当解雇による復職が認められた場合も、従業員には退職の自由がありますので、最終的には退職をすることが可能です。
なお、復職を求める場合、復職が認められるまでの生活費を得るために、他社で働くことがあり得ますが、この点、他社で働いて得た賃金のうち、元の職場での平均賃金の6割を超えない部分については、自分の生活費として費消することができ、他方、6割を超える部分については、元の職場から支払われる未払賃金から差し引かれる可能性があります。
まとめ
以上の通り、十分な理由のない解雇については、賃金の請求と復職を求めることができますので、解雇についてお悩みの方はぜひ弁護士にご相談ください。
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