交通事故に遭った場合、事故相手が入っている自賠責保険を利用する「被害者請求」という手続きが存在します。この手続きを正しく理解することで、必要な補償を受け取るための選択肢が増えます。
本記事では、被害者請求の基本的な仕組みから手続きの流れ、被害者請求を最大限に活用するためのポイントを、埼玉の弁護士がわかりやすく解説します。
被害者請求の仕組みについて
被害者請求とはなにか
被害者請求とは、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)を利用し、交通事故の被害者が直接保険金を請求する制度です。通常は加害者が請求を行いますが、被害者自身が手続きを行うことで、必要な補償を迅速に受け取ることができます。
言い換えると、加害者側から賠償が受けられない場合、加害者が加入している損害保険会社(共済組合)に損害賠償額を直接請求することもできる制度です。
「加害者請求」との違い:加害者請求では保険金が加害者に支払われますが、被害者請求では直接被害者に支払われます。
一括払い制度とは
多くの場合には、加害者が自賠責保険・共済のほかに自動車保険・共済(任意保険・共済)にも加入しています。
そして、交通事故の際に、被害者の方が加害者に対して直接請求したり、自賠責保険・共済の被害者請求をしたりすることなく自賠責保険金(共済金)を受け取ることができるよう、任意保険会社(共済組合)は被保険者に対して支払責任を負う限度において、加害者に代わって自賠責保険金(共済金)を含めてお支払いすることがあります。
これを任意保険会社(共済組合)が一括して賠償金を支払うことから、一括払制度と言われています。任意一括とも言います。
被害者請求の手続き方法
被害者請求の手続きは以下のとおりです。
1.請求書提出
請求者は、損害保険会社(共済組合)へ自賠責保険・共済の請求書類を提出します。
2.損害調査依頼
損害保険会社(共済組合)では、請求者から提出された自賠責保険・共済の請求書類を確認して、損害保険料率算出機構(以下「損保料率機構」といいます。)の調査事務所に送付します。
※損害保険料率算出機構とは
損害保険料率算出機構は「損害保険料率算出団体に関する法律(昭和23年7月施行)」に基づき、設立された団体で、自賠責保険・共済の基準料率の算出を行うとともに、事業の一環として、自賠責損害調査センターにおいて、全国に地区本部、自賠責損害調査事務所を設置し、自賠責保険・共済の損害調査を行っています。
3.損害調査、損害報告
損保料率機構調査事務所においては、事故の発生状況、支払の適確性(自賠責保険・共済の対象となる事故かどうか、また、傷害と事故の因果関係など)及び発生した損害額などを公正かつ中立の立場で調査をします。
また、損保料率機構調査事務所は、損害保険会社(共済組合)に調査結果を報告します。
4.自賠責保険金(共済金)支払
損害保険会社(共済組合)は、支払額を決定し請求者に自賠責保険金(共済金)を支払います。
以上のような流れで、自賠責保険金(共済金)を受け取ることができます。
自賠責保険金(共済金)の請求方法、請求に必要な書類
・自賠責保険金(共済金)損害賠償額支払請求書
・診断書
・交通事故証明書
・事故発生状況報告書
・診療報酬明細書(レセプト)
・休業損害証明書
・診療報酬明細書
これらは、必要な書類のみ提出します。例えば、休業がなければ、休業損害証明書は不要です。
被害者請求の請求期限について
以下にまとめました。
ケガの場合、事故が発生してから3年以内に申請する必要があります。
対象 | 請求区分 | いつから | いつ(時効 完成日)までに |
加害者 請求 | 傷害 後遺障害 死亡 | 損害賠償金を 支払ってから | 損害賠償金を 支払ってから 3年以内 |
被害者 請求 | 傷害 | 事故発生 | 事故が 発生してから 3年以内 |
被害者 請求 | 後遺障害 | 症状固定 | 症状が 固定してから 3年以内 |
被害者 請求 | 死亡 | 死亡 | 死亡 してから 3年以内 |
被害者請求のメリット・デメリット
1.メリット
基本的に、加害者の協力を必要とせず、自身で請求が完了します。したがって、加害者が、「任意保険を使わない」と言っていたり、任意保険に入っていない場合でも、被害者の意向で請求ができます。
手続は比較的シンプルですので、弁護士がいなくても、本人だけで請求することは不可能ではありません。
ただ、弁護士が代理で請求すれば、書類の取付もできるので、ご本人の負担は減ることは間違い有りません。
2.デメリット
書類の不備:申請書や添付資料にミスがあると審査が遅れる、または却下される場合があります。
必要書類の収集:医療機関や警察署から適切な書類を入手するには、手間と時間がかかります。
必要書類のリストを事前に確認し、完璧な状態で提出する。
提出前に弁護士や行政書士に書類をチェックしてもらう。
必要に応じて専門家に手続き全般を代行してもらう。
活用事例
例えば、加害者の任意保険に一括対応をしてもらっていても、任意保険会社が、治療費を「打ち切る」ことがあります。まだ自賠責保険の枠(傷害の場合120万円)があるにもかかわらずです。
そういうときには、打ち切られた後に、治療費を立替えて、後に自賠責保険に被害者請求をするということもあり得ます。
交通事故を弁護士に依頼するメリット
交通事故は、相手の保険会社と争いになることが多く、また、気づかないまま、相場より低い水準で合意(示談)してしまうケースが多いです。
もし、後遺障害が残ると保険金額(逸失利益や慰謝料)が大きくなるので、被害者が損をする金額が大きくなる可能性があり、保険会社と争いになる確率も多くなります。
実際、弁護士に依頼するのとしないのでは、数十万~事案によって数千万円の違いがでる可能性もあります(実際に当事務所が委任を受けた事件でもそのような事案があります)。
弁護士に依頼をすることによって、保険会社との交渉や手続、裁判を代理で行うことができます。
また、ご自身の保険で、弁護士特約に加入されている場合は、弁護士費用が原則として300万円まで保険でまかなえます。
※ご自身が、弁護士特約に加入しているかどうかは、保険証券をみるか、加入している保険会社にお問い合わせください。
弁護士特約に加入している場合は、法律相談費用もでますので、小さな事でもまずは、法律相談していただくことをおすすめします。
当事務所では、ライン(LINE)での相談も行っています。
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弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、多数の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
交通事故においても、専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
もし交通事故でお悩みの方や、交通事故被害者のご家族の方がこの記事をご覧の場合、当事務所では、適切なアドバイスもできるかと存じますので、まずは、一度お気軽にご相談ください。