~脳・心臓疾患と労災との関係~
脳疾患、心臓疾患は持病であり、労災とは関係がないものと思い込んでおりませんか?
実は、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、大動脈解離などの疾患の原因としては、長時間労働や過剰なストレスなどの労働災害である場合があります。
実際に、労災保険が適用されるケースもあります。
このことを知らず、治療費はもちろん、休業損害、慰謝料、逸失利益など膨大な損害の補償を受け損ねている可能性もあります。
長時間労働は、システムエンジニア(SE)、中間管理職などのほか、最近では、陸上貨物運送業において頻発しております。物流には、長時間労働がつきものといっても過言ではありません。
このような業種の方は、最後までご覧いただけたらと思います。
~長時間労働などの労働災害(労災)が原因となっているかどうかの判断基準~
脳疾患、心臓疾患は、長時間労働などの労働災害が原因となっていることがあります。
しかし、脳卒中などの重篤な症状の臨床的には、そもそも原因を追究しているどころではなく、医師からは正面から脳卒中の原因にまで言及されないことが多くあります。
そのため、実は労働災害が原因で脳卒中を発症したにもかかわらず、そのことを見逃してしまい、その結果、労働災害保険からの給付を受けられず、もちろん働けなくなったときに会社に対して将来の給与の補償を求めていないという方も多くいらっしゃるのが残念でなりません。
では、どのような点が重視され、労働災害に当たり、労災保険の適用が認められるでしょうか。長時間労働などの労働災害(労災)が原因となっているかどうかの判断基準についてみてまいりましょう。
労災認定においてもっとも重要なのは、ずばり労働時間です。
長時間労働は睡眠不足を引き起こし、脳や心臓に疲労を蓄積させ、脳・心臓疾患を発症させる原因となります。長時間の時間外労働が認められるか(その証拠を示せるか)、つまり労働時間の認定がポイントとなります。
厚生労働省は、脳・心臓疾患の認定基準を定めております。
冒頭では、基本的な考え方として、以下のように述べております。
「脳・心臓疾患は、その発症の基礎となる動脈硬化、動脈瘤などの血管病変等が、主に加齢、生活習慣、生活環境等の日常生活による諸要因や遺伝等の個人に内在する要因により形成され、それが徐々に進行・増悪して、あるとき突然に発症するものです。
しかし、仕事が特に過重であったために血管病変等が自然経過を超えて著しく増悪し、その結果、脳・心臓疾患が発症することがあります。
このような場合には、仕事がその発症に当たって、相対的に有力な原因となったものとして、労災補償の対象となります。」
~要件1 対象となる疾患が以下のいずれかに該当すること~
<脳疾患>
脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症
<心臓疾患>
心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死)、大動脈解離
※診断名に必ずしも当てはまらなくても、どうようの症状を呈する場合には、労働災害に該当する可能性があります。
~要件2 業務による明らかな加重負荷がかかっていること~
「業務による明らかな加重負荷」がかかっていた場合には、脳疾患、心臓疾患の原因が労働災害として認められます。
「業務による明らかな加重負荷」とは、以下のいずれかに当たる場合に認められます。
① 長期間の加重な業務に従事していた
or
② 短期間の特に加重な業務に従事していた
or
③ 異常なできごとに遭遇していた
~「①長期間の加重な業務に従事していた」~ 長期=1ヶ月単位
端的な例は、「長時間残業」です!
具体的には、長時間残業がある場合に脳卒中の原因が労災であるかどうかは、以下の要素を踏まえて判断されます。
・発症前1か月間~6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働(1週間あたり40時間を超えている部分)が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いと評価される
・おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること
・発症前1か月間におおむね100時間、又は発症前2か月間~6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること
労働時間がタイムカードや業務日誌などにより明確に記録されていればよいのですが、実際上、中間管理職やSEなど、勤務時間を正確に記録していない(タイムカードをつけていない)という場合も少なくありません。それゆえに、そのような業種は結果として長時間労働に陥りがちであり、長時間労働を見逃すリスクがありますので、注意が必要です。
このような場合には、パソコンに記録されている開閉ログから労働時間を推認し、長時間労働が認められた実例があります。
また、本人が日頃から記録している日記やカレンダー、手帳や通勤に用いているSuica、PASMOなどの交通履歴、スマホの記録やGPS履歴、メールの送信履歴、家族とのLINEやSMSその他家族の方の証言、関係者(同僚等)の証言、ビルの入退室履歴、ドライバーであればタコグラフやドライブレコーダーなど、様々が就労の軌跡をたどって、労働時間を明らかにしていく必要があります。
なお、労働時間の要素がとても重要ですが、それ以外にも、負荷がかかっていることがあれば、総合的に考慮してもらえる場合があります。負荷の軽重については、以下のような考慮要素から判断していくことになります。
拘束時間の長い勤務
休日のない連続勤務
勤務間インターバルが短い勤務
不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務
出張の多い業務
その他事業場外における移動を伴う業務
心理的負荷を伴う業務
身体的負荷を伴う業務
作業環境(温度環境、騒音)
~「②短期間の特に加重な業務に従事していた」~ 短期=1週間単位
発症前のおおむね1週間において、過重な負荷があったか否かにより判断されます。
「労働時間」の長さは、業務量の大きさを示す指標であり、また、過重性の評価の最も重要な要因とされています。
たとえば、発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合や、発症前おおむね1週間継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合などについて、業務と発症の関連性が強いと評価できるとされています。
(ただし、手待時間が長いなど、特に労働密度が低い場合は当てはまりません。)
~「③異常なできごとに遭遇していた」~ 発症直前から前日
発症直前から前日までの間における、発生状態を時間的及び場所的に明確に特定できる、異常な出来事に遭遇したことによる過重負荷の有無により判断されます。
異常な出来事とは、精神的負荷(極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす事態)、身体的負荷(急激で著しい身体的負荷を強いられる事態)、作業環境の変化(急激で著しい作業環境の変化)といったものがあります。
例えば、重大事故に直接関与したケースや激しい運動を伴う業務に従事したこと、酷暑極寒の業務や寒暖差の激しい業務に従事したことなどです。
~脳疾患、心臓疾患の原因が労働災害の場合には、どのような補償を受けることができるか~
労災保険からの治療費、休業補償、後遺障害年金(または一時金)、遺族年金、葬祭費などの各種補償を受けられます。
給付の内容に応じて、労働基準監督署へ給付申請を行うことになります。
申請後、労働基準監督署の判断を経て、支給の決定がなされれば、給付を受けることができます。
しかし、これらは補償の一部でしかありません。
それ以外の補償としては、将来の給与(法的には、逸失利益といいます)、入院や通院に対する慰謝料、後遺障害を負ったことに対する慰謝料、中には将来介護費(身内や介護を受ける場合)などの多大な補償をお勤め先の会社から受けられる可能性があります。
損害賠償においては、安全配慮義務違反が認められるかどうかがカギとなります。
長時間労働については、仮に会社が知らぬ存ぜぬであれば労働時間の管理を怠っていたことに直結しますし、黙認していたのであれば長時間労働をさせることにより労働者の健康安全に対する配慮を怠っていたことに直結しますので、やはり、安全配慮義務違反が認められる可能性は高いといえます。
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~最後に見ていただきたい労災サポートのこと~
ぜひ、上で解説したような内容を現在の自分と照らし合わせてみてください。
しかし、どれだけ調べてみても、実際に申請するとなるとやはり不安が残ってしまいますよね。
どれだけ状況が労災認定の要件に該当したとしても、申請の仕方次第で後遺症の労災認定が下りず、給付が受けられないこともあります。
もし自分が認定要件に該当しているのに、本来受け取れるはずだった給付が受け取れなくなるというのは非常に辛いことだと思います。
私たちとしても、1人でも多くの給付を受け取る権利がある方に給付を受け取っていただき、みなさまの未来への不安解消と前を向くきっかけづくりをお手伝いさせていただきたいと思っております。
もし、今この記事を読んでいるあなたが少しでもの要件に該当すると思ったら、労災分野に特化した弁護士に相談してみてください。
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