労災が原因で肘を曲げると痛い。どのような症状が後遺障害にあたる?弁護士がわかりやすく解説

労災によって、肘を曲げると痛みがあり、肘が以前のように動かなくなってしまうことがあります。

このような場合、症状の内容や程度によって、認定される後遺障害が変わります。

このコラムでは、労災による肘のけがについて詳しく解説します。

1 肘の負傷について

1 肘の負傷について

労災による負傷により、肘を曲げると痛みがあり、肘の可動域に制限が生じた場合、つまり肘が以前よりも動かなくなってしまった場合、後遺障害が認定される可能性があります。

ただ、肘が動かなくなったといっても、動かない程度は様々ですし、それによって認定される可能性のある後遺障害は異なります。

以下では、肘の仕組み、可動域制限の測定方法などを見ながら、肘のけがに関連する後遺障害を紹介します。

2 肘の負傷が発生しやすい作業

2 肘の負傷が発生しやすい作業

肘の負傷が発生しやすい作業としては、主に以下のようなものが挙げられます。

①重い物を運搬したり、積み込みしたり、積み下ろししたりする仕事
②天井の塗装や機器の設置など、上肢を上げたままにする時間が多い作業
③介護や看護など、人を支えたり、歩く手伝いなどをしたりする作業

このような作業を継続的に行った場合、肘への負荷が徐々に蓄積され、曲げた時に肘に痛みが生じたり、その結果肘の可動域が制限されてしまうことがあります。

特にこのような作業をおこなっている中で肘の痛みや可動域制限が生じた場合、労災申請を行うことを考えるべきです。

3 肘関節の仕組み

3 肘関節の仕組み

(1)肘関節の構造

肘関節は、上腕骨(肩から肘までの骨)と、橈骨(親指側の骨)と尺骨(小指側の骨)と呼ばれる前腕の2本の骨から構成されています。

肘関節は、腕尺関節、腕橈関節、近位橈尺関節の3つの関節からなる複合体です。

(2)肘関節の運動

肘関節の主要運動(日常の動作にとって最も重要な動き)は「屈曲(腕を曲げること)」「伸展(腕を伸ばした状態から反らせること)」です。

日常生活におけるあらゆる動作(歩行や物を持つ動作、スポーツにおける動作など)において重要な役割を果たす関節といえます。

4 可動域制限の測定方法

4 可動域制限の測定方法

肘関節の可動域は、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会「関節可動域表示ならびに測定方法」における「関節可動域の測定要領」に基づいて、医師が角度計を使用して5度刻みで測定します。

したがって、肘関節の可動域は、自動値(本人が自発的に曲げた角度)ではなく、原則として健側(障害のない側)の可動域と比較して、他動値(医師が手を添えて曲げた角度)で測定されます。

肘関節の可動域は、屈曲と伸展を一つの運動と考えて、両方の可動域角度を合計し、左右の患側(障害のある側)と健側を比較します。

左右とも患側の場合は、参考可動域角度(正常値)との比較となります。肘関節の主要運動と参考可動域角度(正常値)は、次のとおりです。

主要運動屈曲 伸展
参考可動域角度(正常値)145°  

5 肘の負傷で認定される可能性のある後遺障害

5 肘の負傷で認定される可能性のある後遺障害

肘の負傷がある場合に認定される可能性のある後遺障害は、以下のとおりです。

等級症状
第6級の61上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
第8級の6一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
第10級の10一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
第12級の6一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
第14級の9局部に神経症状を残すもの

(1)関節の用を廃する

「関節の用を廃する」とは、以下のような状態をいいます。

①関節が強直した

関節の完全強直またはこれに近い状態(関節可動域が健側の10%程度以下に制限される場合)です。

ただし、肩関節であれば、可動域の測定結果にかかわらず、肩甲上腕関節がゆ合し骨性強直していることがエックス線写真で確認できる場合も対象となります。

②関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にある

「これに近い状態」とは、他動では動くものの、自動運動では関節の可動域が健側の10%程度以下となった場合をいいます。

③人工関節・人工骨頭を関節に挿入置換し、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されている

(2)関節の機能に著しい障害を残すもの

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかの状態を指します。

関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されている

人工関節・人工骨頭を関節に挿入置換し、その可動域が健側の可動域角度の1/2以上ある。

(3)関節の機能に障害を残すもの

「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されている状態をいいます。

(4)局部に神経症状を残すもの

画像所見等がなく、自覚症状のみであるむち打ちなどの比較的軽微な神経症状で認定されることが多いです。

事故態様、受傷態様、症状の発症時期、治療経過、医師による診断によって、症状固定時点及びその後長期にわたる神経症状の残存が医学的に証明できることが認定のメルクマールとされています。

認定のためには、ジャクソンテストやスパーリングテストなどの神経学のテストを医師に行ってもらうのも良いでしょう。

6 おわりに

6 おわりに

以上見てきたように、肘の負傷がある場合、症状に応じた後遺障害が認定される可能性があります。

ただ、適切な後遺障害の認定を受けるためには、医師を受診し、適切な治療・検査を受ける必要があります。

専門的な知識も必要となりますので、もし、労災により肘を曲げると痛いというような症状がある場合には、お早めに弁護士にご相談ください。

また、肘以外の上肢のケガについては、下記のコラムで解説しておりますので、併せてご覧ください。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 権田 健一郎

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