交通事故で腕を骨折した場合の保険金と後遺障害について解説します

交通事故で、腕の骨折のケガを負う方は多いです。例えば、バイクで衝突して吹き飛ばされたケース、歩行者が自転車に衝突されたケース等です。腕の骨を骨折すると、利き手であれば不便ですし、後遺症が残ることがあります。今回は、腕の骨折の保険金や後遺障害などについて埼玉の弁護士が解説します。

はじめに

はじめに

交通事故による腕の骨折は、車両事故、自転車事故、歩行者事故など様々な状況で発生します。事故直後の症状としては、骨折の場合、激しい痛み、腫れ、変形などが見られます。特に事故の衝撃が強い場合、骨折の程度も深刻になり、手術が必要になることも少なくありません。

腕の骨折には、手首、肘、上腕部の骨折が多く見られます。これらの骨折は、交通事故の衝撃で骨が砕ける「粉砕骨折」や、骨が完全に裂ける「横骨折」など、様々な形態を取ります。特に、上腕部や肘部の骨折は、手術が必要となることが多く、術後のリハビリが重要となります。

どのような骨折があるのでしょうか。例えば、以下のようなものです。

1. 上腕骨の骨折

上腕骨は腕の上部にある大きな骨で、肩と肘をつなぐ役割を担っています。上腕骨の骨折は、強い衝撃を受けた際に発生することが多く、特に交通事故やスポーツによる事故で見られます。

上腕骨骨幹部骨折:上腕骨の中央部で発生する骨折です。転倒や衝突が原因となることが多いです。

上腕骨近位部骨折:肩に近い部分で発生する骨折です。肩関節に近いため、可動域制限や肩の運動機能に影響を与えることがあります。

2. 橈骨(とうこつ)骨折

橈骨は、前腕を構成する2本の骨のうち、親指側に位置する骨です。橈骨の骨折は、特に転倒や手をついた際に多く見られます。

橈骨遠位端骨折:手首の近くで骨折が発生するもので、特に高齢者の転倒による骨折に多いです。手首に痛みや変形が現れることが多いです。

Colles骨折:橈骨の遠位端(手首付近)で、骨が後方にずれる骨折です。転倒して手をついた際に最もよく見られます。

3. 尺骨(しゃっこつ)骨折

尺骨は前腕のもう一方の骨で、肘から手首までつながっています。橈骨と協力して腕を支え、手首や肘の運動に関与します。

尺骨幹部骨折:尺骨の中間部で発生する骨折で、しばしば橈骨と一緒に骨折が起こります。

尺骨遠位端骨折:手首に近い部分で骨折が発生することがありますが、通常は橈骨と一緒に骨折します。

4. 肘の骨折

肘の関節は複雑な構造をしており、肘の骨折は運動や衝撃によって発生します。

上腕骨顆上骨折:上腕骨の肘の近くで発生する骨折で、肘の動きに支障をきたすことがあります。

尺骨頭骨折:尺骨の上端、肘に近い部分で発生する骨折です。肘の動きが制限される可能性があります。

5. 手首や手の骨折

手首や手の骨折は、交通事故やスポーツのほか、転倒時に手をついて受けた衝撃が原因で起こることが多いです。

舟状骨骨折:手首の舟状骨が骨折するもので、手首の痛みが長引くことがあります。特に治療が遅れると、関節に障害を残すことがあります。

指の骨折:指の骨(基節骨、中節骨、末節骨)のいずれかが骨折するもので、転倒や衝突などが原因となります。指の運動機能に影響を与える場合があります。

6. 粉砕骨折

骨が細かく砕けてしまうタイプの骨折で、強い衝撃が加わることで発生します。粉砕骨折の場合、骨が複数の部分に割れるため、治療が複雑になり、場合によっては手術が必要です。

7. 閉鎖骨折と開放骨折

閉鎖骨折:骨が皮膚の外に出ていない骨折です。皮膚が破れず、骨の断面が見えません。

開放骨折:骨が皮膚を突き破って外に出る骨折です。感染のリスクが高いため、緊急の治療が必要です。

骨折は、その治療には時間がかかるため、後遺症が残りやすい傾向があります。

適切なリハビリテーションと医療的サポートが重要であり、早期からリハビリを開始することで回復を促進することができます。

リハビリをしても、後遺障害が残るケースがあり、その場合、自賠責保険に、後遺障害の申請をする必要があります。

認定された後遺障害等級によって、慰謝料や賠償額が変わってくるのです。

交通事故による腕骨折で認められる後遺障害等級について

交通事故による腕骨折で認められる後遺障害等級について

交通事故により腕の骨折が生じると、以下のような後遺障害が生じる可能性があります。それぞれ内容によって後遺障害等級が異なります。

交通事故による腕の骨折では、骨折部位や治療の過程によって後遺障害が残ることがあります。特に、骨折が治った後でも痛みや可動域制限、関節の変形などが残る場合があり、これらは後遺障害として認定されることがあります。以下では、腕の骨折に伴う主な後遺障害と、それに関連する後遺障害等級について解説します。

1. 機能障害(腕の動きが制限される・動かない)

1. 機能障害(腕の動きが制限される・動かない)

腕を骨折した場合、最も一般的な後遺症は腕の動きが制限されることです。可動域制限と言います。

骨折後に関節の可動域が減少したり、最悪の場合は動かなくなったりすることがあります。これを機能障害と呼び、後遺障害等級は以下のように認定されることがあります。

  • 6級6号: 1上肢の3大関節(肩関節、肘関節、手関節)のうち2つの関節の用を廃したもの(関節の可動域がほとんどなくなる)。
  • 8級6号: 1上肢の3大関節のうち1つの関節の用を廃したもの(可動域がほとんどない)。
  • 10級9号: 1上肢の3大関節のうち1つの関節に著しい障害を残すもの(可動域が半分以下に制限される)。
  • 12級6号: 1上肢の3大関節のうち1つの関節に障害を残すもの(可動域が3/4以下に制限される)。

これらの障害は、関節の可動域が非常に制限された場合や、人工関節を挿入したことによって可動域が制限された場合に該当します。

2. 変形障害(骨が正しく癒合しない・異常な動き)

2. 変形障害(骨が正しく癒合しない・異常な動き)

骨折箇所が正しく癒合せず、骨が変形したり、関節が不安定になったりすることもあります。このような変形障害は、以下のような後遺障害等級に認定されることがあります。

  • 7級9号: 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの(偽関節が残り、関節に異常な動きが見られる)。
  • 8級8号: 1上肢に偽関節を残すもの(関節が正常に機能せず、可動域が制限される)。
  • 12級8号: 長管骨に変形を残すもの(骨折部位が外見上変形し、運動に支障をきたす場合)。

偽関節は、骨がうまく癒合せずに異常に動く状態を指します。これにより、腕を使う動作が困難になることがあります。また、骨の変形が外見的に確認できる場合もあり、その場合も変形障害として認定されることがあります。

3. 神経障害(痛み・しびれが続く)

3. 神経障害(痛み・しびれが続く)

骨折が治癒しても、神経に損傷が生じたり、痛みやしびれが残ることがあります。このような神経障害は、以下の後遺障害等級が認められることがあります。

  • 12級13号: 局部に頑固な神経症状を残す(神経の損傷が明確に画像で確認できる場合)。
  • 14級9号: 局部に神経症状を残す(痛みが残っているが、画像での証明が難しい場合)。

痛みやしびれが残る場合、それが医学的に証明できるかどうかによって、認定される後遺障害等級が異なります。画像で痛みの原因を確認できる場合には12級13号が認定され、証明が難しい場合には14級9号が認定されます。

交通事故による腕骨折の後遺症で請求出来る金銭について

交通事故による腕骨折の後遺症で請求出来る金銭について

交通事故による腕の骨折で、受け取れる賠償金には、以下のような項目の金銭があります。

  • 治療費:治療にかかった費用
  • 休業補償:仕事を休んだ場合に支払われる費用(主婦も含む)
  • 交通費:通院にかかった費用
  • 入院雑費:入院したときにかかる諸費用
  • 入通院慰謝料:通院や入院による精神的慰謝料
  • 後遺障害慰謝料:後遺症が残ったことに対する慰謝料
  • 逸失利益:事故に遭わなければ今後得られるはずだった収入の補償

これらを漏れなく計算して、その合計が、賠償金となります。

治療関係費

治療関係費

治療費や入院費は、「必要かつ相当」な範囲で実費が認められるとされています。したがって、特殊な治療をうけても、「相当では無い」と判断されることもあります。

症状固定の後の治療費は、原則として認められません。もっとも、症状の内容・程度に照らして必要かつ相当なものは認めた例があります。

入院中の特別室使用料(個室ベッド)は、医師の指示があった場合や、症状が重篤であった場合、空室がなかった場合等の特別な事情がある場合にかぎり、認められる余地があります。

整骨院・接骨院の施術費用は、医師の指示の有無が重要で、それを参考にして、相当額のみ認められます。針灸、マッサージ、温泉治療も同様です。

入院雑費

入院雑費

1日あたり1500円の額を基準とします。

交通費

交通費

入退院や通院の交通費は実費となります。ただし、タクシーの場合は、ケガの程度によります。自家用車利用の場合は、1㎞あたり15円でガソリン代を認めます。

※近年、ガソリン代が高騰化していますが、実務では、1㎞15円で変る気配はありません。

装具・器具等購入費

装具・器具等購入費

装具・器具等の購入費用については、症状の内容・程度に応じて、必要かつ相当な範囲で認められます。

車椅子・義手・義足・電動ベッド・歩行具、車いす、サポーター等がよくあてはまります。

一定期間で交換が必要なものは、将来の費用も加算されます。

※将来の装具・器具購入費用は、取得額相当額を基準に、使用開始の時及び交換時期に対応して、中間利息を控除する

慰謝料

・慰謝料

こちらで詳しく解説しています。

簡単にご説明しますと、慰謝料は、通称「赤い本」(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準・財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行)と言われる専門書に記載されている表が、基本的に基準として採用されています。

以下では、裁判基準の表を公開します。

表は、ⅠとⅡがありますが、骨折の場合は、原則として別表Ⅰを使います。

●表の見方
・入院のみの方は、「入院」欄の月に対応する金額(単位:万円)となります。
・通院のみの方は、「通院」欄の月に対応する金額となります。
・両方に該当する方は、「入院」欄にある入院期間と「通院」欄にある通院期間が交差する欄の金額となります。
(別表Ⅱの例)
①通院6か月のみ→89万円
②入院3ヶ月のみ→92万円
③通院6か月+入院3ヶ月→148万円

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料

認定された後遺障害等級によって異なります。

後遺障害等級 裁判基準 労働能力喪失率
第1級 2,800万円 100/100
第2級 2,370万円 100/100
第3級 1,990万円 100/100
第4級 1,670万円 92/100
第5級 1,400万円 79/100
第6級 1,180万円 67/100
第7級 1,000万円 56/100
第8級 830万円 45/100
第9級 690万円 35/100
第10級 550万円 27/100
第11級 420万円 20/100
第12級 290万円 14/100
第13級 180万円 9/100
第14級 110万円 5/100

例えば、表の通り、12級に該当した場合は、「裁判基準」の「290万円」が正しい相場です。

8級ですと、830万円です。

腕の骨折で可能性のある等級をまとめました。

等級慰謝料額
6級1,180万円
7級1,000万円
8級830万円
10級550万円
12級290万円
14級110万円

逸失利益

逸失利益とは、具体的には、交通事故がなかったとしたら、本来得られるはずだった利益のことをいいます。

逸失利益としては、「死亡による逸失利益」と「後遺障害による逸失利益」があります。

「死亡による逸失利益」は、被害者の方が生存していれば得ることのできた収入をいい、この損害を賠償することを請求することで本来得られたであろう利益を補填します。

対して、「後遺障害による逸失利益」は、事故によって体に痛みが生じたり、関節が動かしにくくなる(可動域制限)などの後遺障害が残ってしまったことで、労働能力が低下し、将来の収入の減少が予想される場合の減収に対する補填をいいます。

後遺障害による逸失利益の計算は、下記の計算式で求められます。

一年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

こちらで詳しく解説しています。

交通事故による大腿骨骨折について弁護士に依頼するメリット

交通事故による大腿骨骨折について弁護士に依頼するメリット

後遺障害が残ると保険金額が大きくなるので保険会社と争いになることがほとんどです。

特に、慰謝料や逸失利益は金額が大きくなります。

弁護士に依頼するのとしないのでは、数十万~事案によって数千万円の違いがでる可能性もあります(実際に当事務所でありました)。

弁護士に依頼をすることによって、保険会社との交渉や手続、裁判を代理で行うことができます。

また、弁護士特約に加入されている場合は、弁護士費用が原則として300万円まで保険ででます。

こうした事がメリットになります。

弁護士特約に加入している場合は、法律相談費用もでますので、まずは相談ください。

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実際に、12級でも、年収によっては1000万円近い賠償金になったケースもあります。

8級ですと、年齢や条件によっては、数千万円となります。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 申 景秀

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