夫が離婚したいと思う時、1位は?

夫婦とも、様々な理由で配偶者との離婚を望みます。夫側の立場で、妻と離婚したい理由1位は何なのでしょうか。そして、法律上の離婚事由として認められるのか、手続上どういった問題が出てくるのか紹介します。

統計資料

統計資料

直近で裁判所から公表されている、離婚をしたいと裁判所の手続を申し立てた動機は、以下のようになっています(最高裁判所事務総局「令和4年司法統計年報-家事編」36ページ・37ページから抜粋)。

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このように、夫が申立人の場合の離婚の動機は、「性格が合わない」が1位であり、1万5190件中9138件(ただし複数回答可)と、6割以上もの割合をしめる圧倒的一位です。

「性格が合わない」は法律上の離婚事由として規定されているのか?

民法上の離婚事由

「性格が合わない」は法律上の離婚事由として規定されているのか?

民法第770条1項において、離婚事由が規定されています。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき。
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  • 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

このように、異性関係(不貞行為)とは異なり、「性格が合わないこと」は直接的に法律では規定されていません。そのため、民法770条1項5号で定める「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」にあてはまるといえなければなりません。

「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とは?

「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とは?

「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、夫婦関係が破綻し、修復が極めて困難な状態を指します。この条項は、不貞行為や悪意の遺棄、長期間の生死不明、強度の精神病といった具体的な離婚理由(民法770条1項1号~4号)に該当しない場合でも、裁判離婚を認める柔軟な基準として設けられています。

具体例

具体例

以下のような事情が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。

暴力・虐待(DV)やモラハラ

身体的暴力だけでなく、精神的虐待や侮辱が継続的に行われている場合。

長期間の別居

3年から5年以上の別居が続き、夫婦関係が完全に破綻していると認められる場合。

金銭問題

ギャンブル依存や浪費癖、多額の借金などで家庭生活が維持できない状態。

性的問題

セックスレスや性的不能など、夫婦関係を円滑に営むことが困難な状況。

価値観の不一致

性格や価値観の違いが深刻で、長期間別居など修復不能な状況に至った場合。

宗教活動や犯罪行為

過度な宗教活動や重大な犯罪行為による服役など。

判断基準

判断基準

裁判所では、「夫婦としての共同生活が実質的に失われ、回復の見込みがないか」が重視されます。具体的には、夫婦間の言動、婚姻継続の意思、子どもの有無と年齢、健康状態や経済状況といった様々な要素を総合的に考慮します。

注意点

注意点

一時的な不仲やケンカ、短期間の別居では「重大な事由」として認められにくく、継続的かつ深刻な状況であることを証明する必要があります。そのため、「性格が合わない」という抽象的な理由だけでは離婚を認めてもらうことができません。

「性格が合わない」ことを理由に離婚するにはどうすればよいか?

別居すること

別居すること

上記の具体例のうち、もっとも客観的に分かりやすいのは「長期間の別居」です。

そのため、妻が離婚したくないと言っている場合、妻と別居し、3年から5年の別居期間が経過することを待つ必要があります。

もっとも、調停や訴訟という手続は時間がかかるため、これらの手続で1,2年はあっという間に経ってしまいます。そこで、逆算して、裁判所上の離婚を求める手続を行っていくことが作戦として考えられます。

注意点

注意点

別居期間中、多くの場合、夫は収入の少ない妻に対して婚姻費用(妻の生活費+養育費)を支払う必要があります。これが3年から5年も続くとなるとかなりのダメージを負うことになります。そこで、一定の譲歩条件を提示し、どうにか離婚に応じてもらうという方策を探ることが正しいといえます。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 平栗 丈嗣

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